ハローワークで見つけた冒険者業が天職だった件〜ハズレ職業である武闘家から始まった冒険者人生、最上位職のマジックブレイカーに転職したので駆け上がっていきます〜

甲賀流

第1話 ここハローワークだよね!?

『本日未明、八王子市の〇〇ビル2階の非常階段で身元不明の遺体が発見されました。 今朝6時頃、清掃スタッフが発見し「人が死んでいる」と119番通報、都内の病院へ緊急搬送されましたが、今朝7時31分に死亡が確認されました。ただその遺体は不可解な点が多く、頭部が割られ、脳だけが抜かれた状態で発見されたとのことです 』


 平日の朝からそんなニュースが流れてきた。


「うぇっ! 気持ち悪いな 」


 ボソッとこぼした独り言、それによって俺に視線が集まる。

 それも冷たい視線ばかりだ。

 いけない、つい家にいる感覚で呟いてしまった。


 そんな28歳独身の俺こと戸波 海成となみ かいせいは今、ある施設にいる。

 それも国が運営している立派なところだ。

 俺はその待合席で自分の番を待っている。

 そしてそこにあるテレビには朝のニュースが流れており、時刻は9時55分を示していた。


 全くいい大人が平日の朝から働きもせず、何をしているんだ。

 そんなことを思われる方もいるかもしれない。

 もちろん世間の皆様が平日仕事というわけではなく、休みの人だっているぞってことくらい分かっているのだが、俺の場合は本当に仕事をしていない。

 いや……なんと言えばいいのか、自分から辞めてやったのだ。

 清々しいほど気持ちよく退職届を出してやった。


 そんな人間が日中に足を運ぶ国営の施設なんてそんなの一つしかない、多分。


 その施設とは『ハローワーク』というやつだ。

 要はお仕事探しにきている。


 待合席の1番前に立てかけられている電子掲示板には番号がいくつも表示されており、1番上から順に呼ばれていくのだ。


 ピンポン───


『2065番の方、6番のテーブルまでお越しください 』


 手元にある番号札と呼ばれた番号が一致していることを確認し、席から立ち上がった。

 そして指定されたテーブルまで向かう。


「おい! まだ話は終わってねぇだろ? 噂の求人票出せって! 」


「申し訳ございませんがお客様の仰るようなお仕事はございませんでした 」


「嘘つけ! やべぇ求人票あるってこっちは聞いて来てんだ! さっさと出せ! 」


 やだ……俺の呼ばれた席、揉めてるんですけど〜。


 40代くらいのスキンヘッドおじさんが可愛い女性スタッフに向かって怒鳴り散らしていた。


 彼女は笑顔が素敵なスーツ姿のおねーさんだ、そのゆるふわパーマの茶髪ロングヘアーが彼女の素敵さをより強調している。

 歳は20代前半といったところだろうか。


 そしてスーツから見ても分かるほど強調された胸についている名札には『西奈にしな』と書いてある。


 その西奈さんに絡んでいるおじさんはというと、少し着崩したスーツで腕まくりをしているが、チラッと右上腕に刺青っぽいのが見える。

 この人よくハローワーク入れたな。


 おい、マジで警察呼べって。

 そう思い、辺りを見渡すと入り口に常駐している警備員は外の監視を徹底している風に見せて中のことは知らんふり。

 そして中のスタッフは各自、自分の仕事に集中している……ふりをして知らんふり。


 待合席の人たちだってそうだ。スマホをいじっていて、前すら見ない。


 はぁ……本当に世の中汚い。

 大人になってから思うが、みんな自分が可愛いのだ。

 他人のことを心配している人なんて1人もいない。

 そんな人がいたとしたら、そいつは『他人を心配している自分すげーいい奴』って自己肯定感上げてるやつか異性にモテようとしている奴だけだ。

 つまるところ、自分のためである。


 上司だってろくでもない。

 同性の部下はただの馬車馬、異性の部下は自分の欲を満たす道具。

 そんな風にしか見ていないのだ。

 少なくとも前の会社はそうだった。

 だから辞めてやったんだ。


 こんなこと言っておいて、自分もそうじゃないのかと問われると素直に違うとまでは言えない。


 そりゃ俺だって女の子にいい格好したいしさ。


 しかしどこか反面教師的な気持ちがあって、次は……次こそは上っ面ではなく本気で心配し合える、そして信頼をおける、そんな仲間を作り、何かをやり遂げてみたい。


 そんな夢見心地な自分がどこかにいるのだ。


「おい、なんだてめぇ!? 」


 気づけば俺はスキンヘッドの右肩を掴んでいた。


 やばい、信頼がどーとかなんていう熱い気持ちが俺に普段しないような行動をさせたみたいだ。

 仕方ないから思いついた言葉を返すか。


「あの……次俺の番なんで退いてくれます? 」


「お前、俺がいつ終わったなんて言った!? やんのか? 」


 おじさんはそう言って俺の胸ぐらをガッと掴んできた。


 どうやら俺の一言はあの人の勘に障ったようだ。

 どうしよう、正直この後のことは何も考えていない。


 いっそのこと、この人が気の済むまで殴られ続けてみようか。

 そうしたらスッキリして帰ってくれるかもしれない。


「てめえ、とりあえず表出ろ。 おじさんといいとこ行こうや 」


 やだぁ……。これ黒いハイエースとかで東京湾に連れていかれて、沈められるやつじゃね?

 俺まだ死にたくないんですけど。

 ちょっと自分の正義感を試しただけなのに、まさかこんなことになるなんて。

 トホホだよ。


「あ、あのっ! 」


 西奈さんの声だ。情けない俺の姿を見て、やむなし助けに入った、というところだろうか。


「あぁ? 今更なんだ? やべぇ求人がないならお前に用はねーんだよ。 黙ってろ! 」


「あの……この求人票、視えますか?  」


 彼女の手元には、A4の用紙が1枚。

 さっきは持っていなかったから、俺が絡まれている間に急いで取ってきてくれたのだろう。

 俺のためだと思うと嬉しくて泣けてきちゃうっ!

 その反面、情けなくて泣けてきちゃうけども。


 するとおじさんは俺からパッと手を離し、彼女へ駆け寄る。


「なんだ、ねーちゃん! これがヤバい求人票か? あるなら早く言えっての! 」


 さっきまで怒っていたのが嘘かのような笑顔で、おねーさんからA4用紙をぶんどった。


 あれ、気のせいだったかもしれないけど、彼女……俺の方見て言ってなかったか?


「えーどれどれ? 」


 おじさんは紙一面を見渡すが、この表情は再び雲行きが怪しくなってくる。


「おいっ! バカにしてんのか!? 白紙の紙なんか渡しやがって! 」


 おじさんは勢いよく紙を放り投げて、西奈さんの胸ぐらを掴みにかかった。

 本当に気性の荒い人だが、いくらなんでも女性の胸ぐらを掴むのは如何なものか。


 それに対して西奈さんは怯える様子もなく、

「はぁ……。 あなたじゃないんだけどなぁ…… 」

 ため息交じりにそう言った。


 彼女はおじさんから目を背けているが、怖がっているというよりあれは呆れた、といった表現の方が近いような気がする。


 それと彼女、さっきまでと様子や口調が違う。

 俺の聞き間違いじゃなければ「あなたじゃない」っておじさんに言ってたよな?


 そんな彼女がとても気がかりだがさっきのA4用紙、はじめにチラッと見えたときなんか文字書いてた気がするんだけども。


 俺はおじさんが落とした紙を手に取り、裏面を見てみる。


「えーっと、レベルアップコーポレーション……? やっぱり白紙じゃないじゃんか 」


 そこにはレベルアップコーポレーションという会社の求人内容が書かれていた。

 あのおじさん、これを白紙とは一体どういった了見なのだろうか。


 すると俺の一言に、おじさんと西奈さんは同時にこっちを見てきた。

 2人とも目を見開いている。

 おじさんの目は怖いだけだけど、西奈さんにそんな目で見られると単純に照れる。


「おい! その紙ちょっとよこせっ! 」


 おじさんは俺からその求人票を奪い取った。

 そしてすぐさま紙を見ているが、どうしても視えないのか紙を上に掲げたり、下にしたりと見る角度を変えている。


 おじさんのあの反応、もしかして本当に視えない?

 だとしたらなんで俺には視えた?


 そんなことを考えていると、すぐ横に何やら気配を感じる。


 チラッと横目で見ると、


「戸波さん? まさか……文字まで視えたんですか!? 」


「うおっ! びっくりした――っ! 」


 つい大声を出してしまったが、その声の正体は西奈さんだ。

 彼女は、突如隣に現れて、俺の顔をキラキラした表情で見つめている。

 さらに身長が10センチほど低いからか、無意識に彼女の目線が上目遣いとなっており、なんというか……とびっきりに可愛い騒ぎとなっているのだ。


 さらに西奈さんは両手で俺の手を握ってきた。

 女性に手を握られるなんて何年ぶりだろう。

 それに彼女、距離が近いんですが……。

 なんかいい匂いもするし。


 そしてふと周りから注目を浴びていることに気づいた。

 そりゃハローワークの女性スタッフが上目遣いで利用者様の手を握っている光景は異様か。


「あの……西奈さん? 皆さん見てるので手を離してもらえると…… 」


 あくまで冷静を装いながら、彼女にそう伝えると、


「あ、すみませんっ! つい懐かしい匂いがして…… 」


 そう言って俺からパッと離れた。


懐かしい匂い?

なに? 俺、彼女の実家の匂いでもするの?

畳の部屋の匂い的なやつか。


しかし西奈さんの手の感覚が消えてしまった……。


 そんな物思いにふけっていると、


「くっそ――っ! やっぱ視えねぇ! お前ら2人揃って俺を騙してんだろ! 」


 おじさんが俺と西奈さんに向かって怒声を放ってきた。

 俺としては視えたものを視えたと言っただけだ。

 全くもって怒られる謂れがない。

 なんと答えようかと考えているとすぐ隣から、


「それより戸波さん、今から冒険者の適性試験受ける気ありませんか?  」


 西奈さんはおじさんを軽く無視して、俺によく分からないことを言ってきた。


「えっと……なんて? 」


「とりあえず、試験会場行きましょうかっ! 」


 彼女は満面の笑みでそう言っているが、こちとらパニックである。


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新作です!!2作品目です!

これから主人公の冒険者人生が始まっていきます!

ぜひフォローして更新をお待ちください‼️


少し早いとは思いますが、ぜひ面白いな、これからも頑張ってくれ期待してるぞと思って下さったら、レビューの『☆で称える』の+ボタンを押して、評価を入れていただけると嬉しいです。

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すでに☆やフォロー、応援して下さっている方、本当にありがとうございます!

あなたの☆とフォローで心も筆も踊り狂います❗️


また新作読み切りも4/30より掲載しています!

『未踏のダンジョンで育ったボクが父から引き継いだ竜の力を使って最強のハンターを目指す話~ハンター養成学校の令嬢を助けた姿が配信された結果、巷でシルバー様と崇められることになった~』

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ぜひ作者ページから移動し、お楽しみ下さい😳

好評であれば、6月以降を目処に長編の本格連載としてやっていく予定です!


遠慮なく問答無用でご意見もらえると嬉しいです!

面白い、面白くない、こうしたら面白くなるよなどなんでもコメント下さい!


一応リンクも貼っておきます⬇️

https://kakuyomu.jp/works/16818093076448859879




 

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