第32話
勉強会は一言で言うとかなり充実した時間になった。
友達同士で勉強会をすると、だらけて雑談したりスマホをいじったりして集中力を切らすことが多い。
ただ一年生は初めての高校のテストということもあり、また三年生は今年受験生ということで五人は真面目に勉強会を行った。
「ずっと勉強し続けても効率が悪いから、一旦休憩しましょうか」
「そうだな。休憩は大事だな」
葵と瞳の掛け声により、優たちは一度小休憩を取ることにした。
「あぁ~……頭が……頭がパンクする……」
勉強嫌いな愛音は疲れ果て机の突っ伏する。
「お疲れ木村さん」
疲れ果てている愛音に優は労いの言葉をかける。
「みんな疲れているようだし、ここに来る前にお菓子とか買ってきたから少し食べましょう。中村さん、コップとか借りて良いかしら」
「別に大丈夫ですよ。……でも五人分はなかったような……」
「コップが足りないなら私の部屋から持ってくる?」
「ありがとう倉木さん。お願いできるかな」
「任せて」
優の部屋にあるコップだけでは足りなかったので、実乃里にコップの貸出をお願いすると快く承諾してくれた。
実乃里は本当に優しい男の娘である。
「あたしも行こう」
「別に瞳ちゃんは来なくて大丈夫だよ。コップぐらい一人で持って来れるし」
「……そうか」
瞳は少しでも実乃里と一緒にいたかったらしく、一緒について行くことを提案したが実乃里にバッサリと断られてしまった。
コップ数個持ってくるのに二人もいらないが、その時の瞳は誰が見ても寂しそうな顔をしていた。
「……もう瞳ちゃんったら……分かったから一緒に行こう」
「そうだな。実乃里も一人だと大変だろ」
「はいはい、大変です」
実乃里もだてに瞳の彼氏をやっていない。
瞳がもっと実乃里と一緒にいたいと察した実乃里は、改めて瞳を誘う。
その時の瞳は誰が見ても嬉しそうだった。
「あんまり重いと実乃里ちゃんに嫌われるよ」
「うるせー、実乃里はあたしを嫌わないから大丈夫だ」
「……もう……瞳ちゃんったら……」
葵が瞳をからかうとすぐさま瞳は言い返す。
瞳の惚気に実乃里は恥ずかしそうに頬を赤く染める。
仲の良いカップルである。
「……羨ましいな……恋人といちゃいちゃできて」
机に突っ伏したまま、愛音が呟く。
しかし、その声はあまりに小さくて優は聞き取ることができなかった。
その後、実乃里の部屋からコップを借りることができたおかげで、みんなに飲み物を配ることができた。
「それじゃー、みんな~かんぱ~い」
「「「かんぱ~い」」」
葵の号令でみんなと乾杯した後、オレンジジュースを飲む。
乾いた喉にオレンジジュースが染みわたる。
一人でオレンジジュースを飲むより、みんなと乾杯してオレンジジュースを飲む方がおいしく感じるのはみんなとこの楽しい時間を共有しているからだろう。
「みんなたくさん買ってきたから食べて食べて」
葵はコンビニで買ってきたチョコ菓子やスナック菓子をどんどん机の上に広げていく。
スナック菓子はみんなが食べやすいようにパーティー開けをする。
チョコ菓子は一つ一つが包装されているおかげで大人数でも食べやすい。
大人数でも食べやすいものをチョイスして買ってくる葵は気が利く女の子である。
「中村さんは甘いのとビターなものどっちが好き?」
「私は甘い方が好きですね。もちろんビターも好きですけど」
「そうなのね。私も甘いものは好きだわ。それに勉強していると特に甘いものが欲しくなるわ。きっと脳が糖を欲しているのね」
「分かります。私も勉強した後とか疲れている時は甘いものが欲しくなりますもん」
優は葵と他愛もない雑談で盛り上がる。
葵は先輩だが、ほとんど気をつかわなくて話すことができるから本当に話していて楽しい。
「木村さんも食べて食べて。たくさん買ってきたから」
「ありがとうございます。では遠慮なく」
「ジュースもおかわりあるから遠慮なく飲んで良いからね」
葵は愛音を孤立させないように自分から愛音に会話を振っていく。
葵はよく周りが見えている。
「楠先輩って本当に頭が良いですよね~。教え方も上手いし」
「ありがとう。木村さんも呑み込みが早いかたこの調子で頑張っていきましょう」
「はいっ。赤点取らないように頑張ります」
愛音はいつの間にか葵と打ち解けていた。
愛音の社交的な性格は素直に凄いと優は感心する。
優だったら一日で先輩とここまで打ち解けることはできないだろう。
「私が見る限り一年生三人とも赤点レベルじゃないから大丈夫。自信を持って」
葵が言うなら間違いないだろう。
なぜか優は葵の言葉を素直に受け取ることができた。
「実乃里、食べさせてくれ」
「えぇー……恥ずかしいから自分で食べて」
「実乃里に食べさせてほしいんだ」
「……はぁ~分かったから。はい、あーん」
「あーん……実乃里に食べさせてもらうと、さらにおいしく感じるよ」
「……はいはい」
実乃里と瞳は優たちがいるのにも関わらずラブラブしていた。
きっとテスト勉強でストレスが溜まっているのだろう。
ラブラブなことは良いことだが、傍から見るとただのバカップルにしか見えない。
「中村さん中村さん、このチョコもおいしいから食べてみて。私、おいしすぎて十個はたべてしまったわ」
葵は嬉しそうな表情で優にチョコを勧めてくる。
「分かりました。ではお言葉に甘えて食べてみますね」
葵がこんなにもオススメするのだ。
おいしいに決まっている。
優は包装をはがしチョコを食べる。
独特な苦みがあるがこれはこれでおいしい。
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