第16話 黒木さんはモブじゃない

黒木さん。僕が知る記憶の中。

長崎。時の中の単なるすれ違い人。

シャのイタズラのモブだと思っていた。

チラリ黒木さんを見た。

目があった。

先生の授業が始まる。方程式。先生の説明は聞こえが、頭に入って来ない。

中学の数学は以外とムズイ。

『だよね。』

頭の中に女子の声。迷わず、隣の黒木さんを見た。

黒木さんは薄目で笑った。

脳内に干渉してきたのは黒木さんだ。

『なぜ、君がいるんだ。転校生?

修学旅行、長崎で僕らは会っているよな。』

『そうよ。別次元でね。それに私はモブじゃないよ。

シャの友達よ。私は、ちゃんと存在しているわ。

それにスバルが時を動かす黒い影Xの助手に

シャが選んだことも知ってる。』

『長崎での印象とかなり違うよな、

黒木さん。』

『そう?』

『黒木さんは何者?トーマスさんと同じ妖精?』

『違うわ。私は・・・今は単なる人間よ。』

『そっか、言いたくなかったらいいよ。』

『ありがとう。特に目的は何もないの。

ただ、スバルたちのように人間の普通の中学生をしたかったの。

シャがかなえてくれた。』

『へーえ、シャがね。僕にできることがあったら言ってくれ。』

『ありがとう、スバル。』

チャイムが鳴り、授業は終了。

女子達が黒木さんのまわりに集まる。沢田さんが「ゴッン」黒木さんの目の前で机にぶつかる。

足を擦りむいた。

山下さんが「沢田。血が出てる。」

黒木さんがバンドエイドを沢田さんに渡した。

沢田さんが「あれ?このシーン、デジャヴ?」

山下さんが「沢田、大丈夫?黒木さんは、今日はじめましての転校生よ。」

「そうだよね。でもなんだが変なんだよね。確かに同じ場面が。」

沢田さんは感がいいようだ。別次元で黒木さんと会ったことを察したようだ。

前に聞いたことがある。運動神経の良い人間は感が良く、別次元の時間の壁も容易に超えてしまうことがあるとか。まさに沢田さんがそのタイプだ。

山下さんが「休み時間よ。黒木さん、校内案内してあげる。沢田も行くよ。

なぜか3人、気があうようだ。」

「だろうな。」目の前にシャが現れた。

「シャ。どうなってるんだ。黒木さんの転校生もそうだけど。

別次元のトーマスや宝石商のマヤパヤンたちとのランチから急に時間も場所も飛んだ。

気づくとアキバだ。僕の20日あまりの時間が無くなっていたぞ。」

「スバル、細かいことは気にするな。時を動かす黒い影Xはそんなものだ。」

「相変わらず、いい加減だなシャ。」

「それより、仕事だ。行くぞ、スバル。」





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