第17話 猫のリアルが動く

「シャ、始業式そうそうに仕事か?

今度はどこに行くんだ。」

「黙って着いてこい。」

「はい。はい。強引だな。

そう言えば、黒木さんが転校生で来たぞ。

シャが手伝ってくれたって。

彼女は何者なんだ?」

「黒木か?彼女は猫だ。」

「猫?シャと同じ猫か。黒い影Xなのか?」

「いや違う。スバル。時を動かす黒い影Xは俺様1人だ。

それに助手はお前スバルだけだ。お前は優秀なんだろう。」

「優秀?そうだな。で、黒木さんが猫だって。」

「そうだ。単なる猫だ。シャム猫だ。」

「シャム猫?」

「サカモトがいたあの時代は、特に長崎は和と西洋が入り乱れていた。

黒木も西洋人の飼い猫だった。

飼い主が国に帰還する日、黒木はいつも通り、

自由に町を歩き回っていた。

飼い主は引越しの船積と大所帯の大荷物で大忙し。

『たぶん、シャムは船のどこかに。使用人が、誰かが連れているだろう』と勝手に思っていた。

しかし、事実は誰もシャムを連れていなかった。帰還のバタバタと船の出航時間で頭がいっぱいだった。」

「シャム、黒木さんは、おいていかれたんだな。」

「そうだ。人間の脳は一人だと自分の荷物すべてを一人で把握する。

しかし不思議なことに、人数か多ければ多いほど、大切なものを見落とす可能が高い。誰もが自分以外の誰かが、やってくれる。そう思い込んでしまう。

その堕落した欠陥の人間の脳の思考が、シャム猫、黒木を置き去りにした。」

「そうだな。その欠陥ある人間の思考は僕にも覚えがあるよ。」

「そうかスバル。しかし俺様の助手になったからには、その一般人的な人間の思考は捨ててくれ。」

「シャ。言われなくてもわかってる。それで黒木の話の続きを話してくれ。」

「黒木は大きな空っぽになった洋館でワンワン泣いていた。状況を把握できなかった黒木も悪い。飼い主が引越し準備していたら、猫なりに状況把握をしなけれければいけなかった。猫はしゃべることさえしないが、人間の言葉をわかるからさ。」

「やっぱりか。猫は犬以上に人間の言葉を理解していると思っていたが、ほんとだったんだ。で、なんで黒木を助けて人間にしたんだ。」

「黒木が自分の警戒、準備不足を棚に上げて、飼い主、人間を憎み始めていたからだ。同じ猫の姿の俺様として目の前でやすやすと化け猫に変身するのを見過ごせないからさ。

だから黒木をあえて人間にした。俺様の気まぐれさ。」

「気まぐれか。シャはやさしいな。」

「茶化すな、スバル着いたぞ。鹿児島だ。」

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