第2話 修学旅行生は異世界グラバー邸へ

「スバル、カステラ持ってレジに並ぶぞ。」

山内が僕を促す。

「リクは?」

「アイツはもう買い終えてる。あそこだ。」

店の前に寝そべっている猫と遊んでいる。

「シャ!」

「おい、スバル、レジが先だ。早く並べ。」

山内が僕の背中を押す。

急ぎレジを終えてリクのもとへ。

僕はかがみこみ、リクではなく猫に話す。

「シャ。お前、さっきはどこに連れて行ったんだ。」

リクが驚く。「スバル、どうした。猫に何話してんだ?」

リクの声は聞こえるが僕の手はシャのカラダを強く捕まえたままだ。

「ニヤァー」嫌がってる猫の声が響く。手足をバタバタ。

リクは何ごとかと見て固まっている。

僕は「シャ。早く答えろ。僕をどこへ連れていったんだ!」

山内が「おい、スバル。大丈夫か?猫に話してどうなる?やめろ。」

山内が僕の手を止める。

シャが僕の手から逃げる。2メートルほど行って振り返り、憎らしいことにあっかんべーをした。

リクが「?」

「シャ、今度会ったら逃がさないぞ。」

山内が「大丈夫か、スバル。猫に何をムキになってるんだ。」

ボーっと見てただけのリクが「猫があっかんべーした。」

僕はリクに「だろう。あの猫、シャはおかしな猫なんだ。」

山内が「リク、お前までおかしなこというのか。2人とも大丈夫か?」

僕は「山内、お前も見ただろう。あっかんべー。」

「あー、見たけどあれは猫だ。よくする目をこする動きじゃないか。」

僕は「違うぞ。」

リクもうなずく。

先生の声「集合だ。みんなもう一段上のグラバー庭園に行くぞ。」

僕らは緩やかな長く、白い屋根のエレベーターに乗る。左手に長崎港と山手の緑。太陽の光で照らされた家々が輝いて見えた。

坂道の町だ。グラバー園頂上。クラスごとに

降りて行く。

先生が叫ぶ「ここは30分の自由行動だ。」

バルコニーの広い洋館に生徒たちは吸い込まれて行く。

目の前の四角い池。

池のコイを狙っている。

「シャ!」僕が叫ぶ。

眩しい光が。

「スバル、また仕事だ。ついてこい。」

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