とりあえず・異世界へ飛ぶ・オランダ坂

京極 道真  

第1話  とりあえず・異世界へ飛ぶ

坂道に空は斜め、レンガの塀も斜めに見える。ゆるらかな坂道オランダ坂。

この坂道は時折、異世界へと人を連れ去る。時空のドアがあるとの都市伝説。

目の前に白く輝く教会。修学旅行生でざわめく。

「自由行動11時半までだ解散。」先生の声で生徒達が蟻のように散らばった。

カステラの甘い匂いが漂う。僕らは甘さに引かれ土産店に吸い込まれる。

「ポン。」音がして振り返り石畳を見た。猫がいる。

「そこの君に決めた。」猫は僕に話しかける。「えっ?僕?」

「そうそう君だよ。」こんな時の直感は当たる。

見てはいけない聞いてはいけないものに答えてしまった。

横にいる友達には猫が見えないらしい。「はーあ。」僕は深いため息。

猫は僕に近づき「そんなに、がっかりしないでくれ。君、あきらめのため息をついただろう。失礼な人間だな。」

「失礼なのは猫、お前の方だ。修学旅行生がこんなにたくさんいるのに

なぜ?僕に声をかけたんだ。なんとなく面倒ごとに巻き込まれる予感しか、しないんだけど。」

「あれ?君って案外、感がいいね。その通り。」「やっぱり。」

「僕はシャ。君は?」「僕はスバル。」

「いい名前だ。スバル、時間がない。すぐに手伝ってくれ。」

僕はシャと丸山のお山の方に飛んだ。「あれ?」歩いている人が着物だ。

観光地だし何かの撮影か?

シャが僕を呼ぶ。「彼を助けるんだ。スバルが身代わりだ。返事だけして?」

「えっ?」

急に僕も着物?重い?腰に刀?

誰かが僕に話しかける「サカモトさん。」

「はい。」返事だけする僕。知らないその人は「サカモトがいたぞ。」叫ぶ。

殺気だった人達が僕を追いかける。逃げる途中、裏道を走り去る僕と同じ着物の男子が港へ向かうのが見えた。

シャが「スバル、こっちだ。おかげでサカモトは助かった。」

言葉が耳に残る。

「このカステラに決めた。」友達の声。

僕は土産店にいた。目の前にオランダ坂。さっき僕は何処に行っていたんだ?

猫が僕の目の前を横切る。シャ。

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