トリあえず、式神修行は辞めておく

蘇 陶華

第1話 トリあえず、逃げていきます!

拝啓。父上、母上。僕に、両親が居たら、きっとすぐ帰ってくるように言ってくれるでしょう。捨て子の僕には、どこに両親がいるのか、わかりませんが、今の僕の悩みを伝えておきたいと思います。まず、うちの姫。酷いです。何が、朝廷の一番の姫ですか?可愛がられている?嘘です。ただの化け物です。僕を時々、恐ろしい妖の塔に閉じ込めて喜んでいます。首が伸びます。そして、耳まで、口が裂ける姿は、身の毛もよだつ。恐ろしい。そして、何よりも、僕が、困っているのが、大陸から来た魔導師に恋焦がれている事です。都の絵師に何枚、姿絵を描かせた事でしょう。屋敷中を、姿絵で、満たし、妖達に同じ姿をさせ、酒盛りに興じております。僕は、その酒盛りの相手をさせられています。また、それは、我慢できます。僕が僕が・・・一番、嫌なのは、紗々姫が(僕の妖の姫の名前は、紗々姫と言います)僕に、式神になれと言って聞かない事です。僕は、人間です。紗々姫も、元は、人間だったけど、悪事に巻き込まれ、蛟の姫になったと言います。紗々姫の大好きな魔導師は、瑠璃光と言って、龍神と人間の子です。大陸の皇帝の血を引くらしいですが、皇帝の座を捨てて、気ままに旅をしていると聞きます。その瑠璃光の式神が、鳳凰の化身。紫鳳です。この国を旅していた時に、拾った赤子に、鳳凰を降ろして、召喚したらしいです。紗々姫は、僕にも、同じ事をしようとしました。三華の塔と言って、妖の蔵に僕を押し込め、鳳凰を降ろそうとしたのです。

「動くなよ」

紗々姫が、恐ろしい顔をして、僕を、柱に縛り付けました。

「絶対、上手く行くからな」

紗々姫が取り出したのは、瑠璃光からくすねた魔導書でした。

「きっと、瑠璃光にそっくりな紫鳳みたいな式神にしてやるからな」

「絶対、無理ですよ。やめてください」

僕は、悲鳴をあげました。瑠璃光は、召喚の時に、社にあった鳳凰の像を使っていたと聞きました。だけど、紗々姫が取り出したのは

「にわトリ?」

「しかなかったのだ」

引っ張り出したのが、鶏の像だったのです。

「辞めてくれ!」

紗々姫は、嬉しそうに笑うと、僕に、瑠璃光からもらったと言う呪術に使うお香をたっぷりと掛け、式神の召喚術をかけたのです。

「きっと、素敵な式神になる」

どんなに、紗々姫は、期待したのでしょうか。僕は、一瞬、気を失うと、紗々姫の甲高い悲鳴で、目が覚めたのです。

「化け物!」

紗々姫は、そう言うと僕を置いて、三華の塔から飛び出して行ったのです。

「?」

何があったのか、わからない僕が、庭の池に映った姿を見て、気を失いそうになってしまいました。

「僕?」

僕は、鳳凰の式神ではなく、大きな鶏冠と小さな羽を持つ、ほっぺの紅い鶏になっていたのです。父上、母上、僕は、この先どうしたらいいのでしょう?

「トリあえず、辞めていいですか」



興味があったら、「皇帝より鬼神になりたい香の魔導師」読んでください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

トリあえず、式神修行は辞めておく 蘇 陶華 @sotouka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ