0426「田園」

 夕方のおともだち、のなかに収録されている作品。


 今回の女の子(鯵沢)もメタファーというか幻想のなかにいる女の子という雰囲気が感じられた。それはとくに最後の終わり方によく表れていて、巨人みたいな構図で(鯵沢)が描かれている。


 ローライズという言葉を先生は使っていたけれども、それが極まって、鯵沢は陰毛が見えているという有様。どうやら、そこからの発想でこの作品は出来上がったようで……


 田園というタイトルにもあるように、牧歌的な雰囲気のなかにある、人それぞれの陰鬱な部分というものが、表現されていたようにも思う。


 それと序盤の、鯵沢と彼の会話がかなり単調で、人間的でないものであることも気になった。そこからは、機械的というか、作業的にエッチをするような感覚があったし、それゆえの快楽の独特の伝達もなされていたと思う。


 お父さんがキンポウゲという雑草?を食べて死にかけたシーンもあって、なんだか滑稽だった。こういう幻想のような、ふんわりとした世界観のなかであると、このようなシーンであっても、なぜか風が通り過ぎていくだけのような、わびしさというか、さびしさというか、ある種の芸術的ななにかを感じてしまう。


 やっぱり、厭世的なキャラがもつ魅力とでもいうんだろうか。厭世観と、官能はとても相性がいいというのは、周知のことだと思うけれど、これってなんだか本能的な部分で共感を呼び起こす類のものでもあるよな、と感じたり。感じなかったり。


 キンポウゲ属というタイトルのWikipediaを覗いてみたが、どうやら毒があるのは本当らしく、ラヌンキュリンという物質が分解されてできるプロトアネモニンが有毒らしい。人間にとっては心臓毒でもあるらしく、最悪の場合、心停止するらしい。心臓毒ってなんやねん、って話だけど。毒があるそこらへんの雑草という認識で今回はとどめておく。


 それと一度はたぶん、彼が現実に戻った瞬間があったんだろうなと、思うような描写もあった。あなたとじゃなくても、気持ちよかった。というようなことを言われた瞬間からしばらく。ここがその部分かなとか、そんなことを感じた。


 それで、また最後に彼女(鯵沢)が表れるんだけど。それはお父さんのはっぱを吸ったからでもあると考えられないかな。どうなんだろう。ただの創造的役割が果たされているだけかもしれないけど。


 彼にとって、鯵沢はどういう存在なんだろう。精神世界に住む人だとすれば、それは田園という場所に住む彼の、陰鬱とした精神のなかに住む、ただの機械的な快楽的存在なんだろうか。知らんがな。


 ということで、なんだか要領を得なくなってきたので、ここまで。今日は夕方の移動までこうして読書をしては感想を書いてを繰り返すことにする。

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