0425「ペギミンH」(森山塔先生)

 復刊ドットコムさんにて刊行されていた、森山塔選集に収録されている作品。山本直樹先生と同一人物であることは、有名な話。ただ、かなり昔の作品であるし、なかなか今まで手が出なかった。やっと先日に読む機会を得た。これなかなか現物では手に入れにくくて苦労していたんだ。(Kindleなどの電子書籍ではないし、なぜかGooglePlayBooksにはあるという。なんなんだろう。こういう希少価値のある本なんかはGooglePlayBooksさんにお世話になろうかしら。)


 内容としては、エッチな漫画だったなぁという印象。特に技術的な要素に感心したりとか、絵が魅力的だとか、そういうところはあまり感じなかったかもしれない。でも、山本直樹先生の繊細な線はこの時から顕在だなぁということは感じた。田舎とか、分校のひとたちとか、そのあたりの作品は数年前に読んでいて、なんだか今のエロ路線とは異なる道を走る作家さんだなというイメージが強く残っていて、私としてはそちらのほうが、『山本直樹』感を感じられる。そういうイメージが定着してしまっている。


 だから、昔の作品に触れるということは、そのようなギャップをどうしても感じるわけでして。もう少しだけ異なる視点から作品を眺める必要があるのかもしれない。内容だけではなくて、作者の当時の境遇だったりとか。


 そういえば、巻末のほうに、作者へむけたインタビューがまとめられていた。大江健三郎や筒井康隆の小説を好んで読んでいた時期もあったようで、なんかいいなと感じた。阿部公房なんかも読んでいるとか言っていたかな。


 とにかくサブカルというか、芸術方面への造詣がかなり深い方であることは理解できたと思う。いまはSNSとかでかなり政治的な方面にむかってる節があって、毎日ウォッチするような気持ちにはなれないのだけれど、こういう昔の作品に付せられている、昔の山本直樹先生の実態?をしることができるのは、昔の作品を読むことの一つの価値であるようにも思う。


 ペギミンHは最後のオチがよかった。まんまと騙されていた、わたし。


 それと、そういったオチにマッチするように、展開が急に早くなったりとか、雑になったりとか、そういったことは漫画のなかでやるとタブーになるけれども(評価されない)、この使い方なら、なるほどうまく機能するのかと。ネガティブなことがストーリーに活きるってなんだかいいなとか、そんなことを感じたりした。


 山本直樹先生は、東京都のとある条例と戦ってきたことでも有名だと思う。なんだか私的には、そのような当時の雰囲気をしるためにも、先生の過去作品を通していろいろと読んでいきたいなと、そんなことをぼんやりと感じた。


 いい読書体験だった。

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