0406「月の砂漠」(青山真治監督)
インターネットバブルが弾けて、株式上場を重要視して株主優遇の経営を行っていた主人公が会社も失い家族も離れ、そんな絶望の底へと落とされていく物語?だったように思う。
あまりこの時代に生きていない、というかそのときまだ生まれてないね。イントロの部分ではサリンの描写だったり、戦争の描写だったり、時代のなかにいる主人公たちという立ち位置を強調していたようにも思った。
なにせ、そのときに正しいと思っていたことは、結局は時代のもたらした一過性のものであったわけであるし。それに翻弄されている主人公たちが、あまりにもリアルに描かれていたように思う。
ただ私はあまりこの映画好きになれかったかな。もちろん、悪くもなかった。映像の巧さというものはすごかったし、まだ見たことのないカット(構図)もあった。映画初心者の私だから、こういうところに関心できて、またそれと同時に好きになれないという所感を抱いたのだと思う。これはどうなんだろう、高く評価された映画なのだろうか。
調べてみたところ、世間一般(日本において)あまり評価をよろしくないみたいだった。(Filmarksより。)やはり、その、なんだろう。ヤクザ関係の男の子が私はあまり好きになれなかった。というか、そもそも好きになれないよね、あの位置づけの登場人物は。
でも、最後に彼の純粋な愚かといえる思いが言葉になっていた。それをみて、なんだか人間も捨てたもんじゃないなと思えるんだけれど。でもなんだか設定が臭いなとおも感じてしまった。父親に対して殺してやりたいという気持ちを抱いていて、それは裏を返せば家族をひどく愛しているということでもあって、だから家族であることがまだ可能な人たちを見つけたのならば、それはもうとてつもなくイライラするものであって……
気持ちはわかるけど、、、。でもなんだそこらへんのリアルさというか、この映画の主題というか根底にあるのはリアルさでもあると思うので、そのあたり彼はちょっとリアルじゃなかった。少しだけ浮いていた。でもそれが狙いなのかも、とも感じられる。
映画における登場人物が少し浮いているというのは、もしかすると一つの技巧なのかもしれない、どうなんだろう。浮いているからこそ、それは誇張であり、世の中を照らすメタファー足りえる。リアルのなかにある「unreal」。これをキャラづくりのときに考えるということもしてみたいな。思えば、これはよく使われる手法でもあるのかな?
最後の終わり方も印象的だった。いきなりクローズアップされたかと思うと、その画像で締め。ワイシャツに真っ赤な血が付いている、そんないろいろあって生き延びた、家族のもとにたどり着いた、主人公。とても笑っていた。
でも、どうなんだろう。最後のクライマックスはどうだったんだろう。なんだか、最後の最後でなにをもとめる『べき』なのかがわかった、というある種の後悔に起因する強制的な答えがあったと思う。最後の最後で考えが変わる、っていうのはそういう側面があると思う。後悔の念の強制的希求。
これを感じた最後の結末だった。月の砂漠。
月に行きたいと思っていった結果がこれ。そしてその結果のなかで迎えた結果がこれ。
砂漠だったところには何があったか。それを描いた映画だった。あくまで経営難という状況はこの映画のひとつの小さな役割でしかなく、ヒューマンドラマがメインだった。
うん、なんだか感想を書いているとだんだんとこの映画好きになってきたかもしれない。なんだか不思議な感覚だな~。
よし、青山真治監督の他の作品も見てみよう。
----------------------以下、作品の羅列(Wikipediaより引用。★のマークは今回みた作品。記録をつけるためにも見たらここに戻ってきて印をつけていきたい所存。でも絶対忘れている気がする。。。)-----------------------------
Helpless(1996年) - 監督・脚本・音楽
チンピラ(1996年) - 監督
WiLd LIFe(1997年) - 監督・脚本
冷たい血(1997年) - 監督・脚本・製作・編集・音楽
大いなる幻影(1999年) - 出演
シェイディー・グローヴ(1999年) - 監督・脚本・音楽
EM エンバーミング(1999年) - 監督・脚本
EUREKA(2000年) - 監督・脚本・編集・音楽
クロエ(2001年) - 出演
★月の砂漠(2001年) - 監督・脚本・編集
レイクサイド マーダーケース(2004年) - 監督・脚本
エリ・エリ・レマ・サバクタニ(2005年) - 監督・脚本
こおろぎ(2006年) - 監督
AA|音楽批評家:間章(2006年) - 監督
サッド ヴァケイション(2007年) - 監督・脚本・原作
スリー☆ポイント(2011年) - 出演
東京公園(2011年) - 監督・脚本・音楽
Cut(2011年) - 脚本
戦争と一人の女(2013年) - 音楽
共喰い(2013年) - 監督・音楽
空に住む(2020年) - 監督・脚本
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