4月

0401「107号室通信」

 カシワイ先生の作品。

  

 前々から読もうと思っていた作家さん。リイド社さんは個性的な作家さん、もしくは作品を意識的に集めているイメージ。キャラづくりはpanpanya先生を思い出す。しかしカシワイ先生は風景もある程度キャラに馴染む程度にデフォルメされているなという印象。話自体も短いものが多く、色合いも儚さを連想させるものが多い。こういう作り、とても好きだ。


 マンスリーカレンダーというものがあるらしい。呼び方が細分化されているなんてしらなかった。日めくりカレンダーは知っててもこれは知らなかった。調べてみたところ、そういうことか。日本語英語の弊害だ、これは。


monthly calendar


 ということらしい。そういうことね。カタカナは海外文化を日本語文化に取り入れるときに便利だという文章を見たことがあるが、こういう誤解を生みやすいという微妙なラインでとても不便だなと感じざるを得ない。


『層』というお話まで読み進めてみた。そこまでに感じたことは、伝えたいこと、感じたこと、思い起こったもの、それを伝えるには数ページのマンガあるいは文章が適しているということ。なんだか、その日々の断片の思考を一冊にまとめた感じのマンガ作品だなと思った。


 それとカシワイさんは、かなり美術的センスを磨かれてきた方なんだろうなという印象。一枚一枚が、イラストとしての完成度がとてつもなく高くて、そのなかに後付けでキャラクターを配置しているというイメージ。その手法をとると、『背景>キャラ』というなんだか現実的な相対関係が浮かび上がってきて好きだ。別にこれは人間を軽んじているとかではなく、人間の自然に対する立ち位置を考えたときに、自然の雄大さとか、美しさとか、そんなところにやはり焦点がいきがちなものだから、こういう系のマンガを読んでいると、なんだか心が洗われる気持ち。そしてなんといってもこれは、イラスト的漫画。もう最高としかいいようがない。


 最後まで通しで読んだ。とても芸術的作品だった。消費するためのマンガではなくて、たしかに読者のなかに形をよこしてとどまり続けるもの。少なくとも私にとってはそのような作品になった。要するに私の好きなメタファーだらけの作品だったということ。そしてそのメタファーは多くの場合、カシワイ先生の思いの丈が詰まっているのだろうなと、そうであってほしいなと思うもの。私は作品を通してみえる作者さんの素敵な思いが好きだ。それがどれだけドロドロとしたものであったも好きだ。


 作品を通して作者のことをつぶさに考えてしまうのは、あまり書いている側としては嬉しいじゃないかもしれない(実際に私も否定的なコメントが作者自身に向けられているとムカッとくる。人間だから)でも、作る側としては、どうしても作者の方の考え方が気になってしまうというもの。おそらく今後はさらにそのような読みが増えていくのだと思う。そしてメタファーだらけの作品というものは、その恰好の餌食になる。なんだか変な言い方だけれども。


 他の作品も積極的に読みたい。こんど書店で探してみよう。


 追記みたいな文章。


 収集というテーマでいくつかの作品群がまとめてあった。私は最近、この収集ということについて、あまり積極的な意味を見いだせないようになった。もっというと物理的な収集という意味合いだ。


 本であってもそう。物理的にものが増えていくということに関して最近になってはとても精神的苦痛が伴うようになった。そのようななかで今回の作品のなかにあるさまざまな収集という概念を見てみる。


 収集という概念の孤独的な側面が際立って描かれていたと思う。私もそれはとても共感する。なんだか、最後はなにもかも「そこにあったとしても」消えてしまうんだから、空しいよねって。最後は自分が消えてしまうんだからって。そういう厭世的な考えと収集というものは、なんだかそのような関係にある。私的には。


 収集のマイナス的な側面というものが、どうしても目についてしまう。私はそれ自体は好きだ。集めて眺めるという行為。それを感じるという体験。それに関しては大好きだ。だから、どうにかしてそのいいところだけをもった概念というものが、ないものだろうかという欲望がある。収集という行為のいいところだけ集まった新しい概念だれか、行為まで含めて作ってくれないだろうか。


 そんな私的なことを、作品を読んでいて考えてしまった。また読み返していろいろと考えを巡らせたい。こういう体験を与えてくれる、きっかけを生み出してくれる、そういう作品が好きだ。

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