0327「MUJINA INTO THE DEEP2」ーマ


 浅野いにお先生の作品。新作という位置づけでいいのかな。とにかくまた浅野いにお先生の新作がこんなにすぐに読めるのは嬉しいことだ。一巻を読んだのはかなり前なので内容はあまり覚えていず、そのまま2巻へと移ってしまったのだが、そういう読みでも十分に楽しめた。また一巻を近いうちに読み直そう。


 今回もめちゃくちゃに社会的メッセージが強いものになっている。こういう漫画は総じて好きだ。無条件に。


 現代社会においてMUJINAなる存在はなんだろうかと考えてみたりする。人権という尺度において二項対立のような形式で人という動物が語られる社会というメタファーは何を表しているのだろうか。そういうことを考えてみる。現代社会においては基本的人権の尊重(**人が生まれながらにして持つ権利を尊重すること**)というものが有名であり、誰もがそれを持っているとして社会は回っていることになっているらしい。ただ、私たちは特に今の生活において憲法などというものを意識して生活しているわけでもないし、多くの人は日々の暮らしに忙しくしているだけなんだろう。


 そんな中で人権というものは、常識の果てに追いやられた常連様なのだろう。だから、そんななかで人権どうのこうのということがうたわれている社会というものは、少し異常性を感じてしまう。しかし、その日ごろ意識しない(あくまで私の感覚)人権というもの、常識というものが、知らず知らずに人々の行動に影響を及ぼしていないかということを考えてみたりする。そのときに、なにかネガティブな事象が生じていないか。そういうことを考えてみたりする。


 MUJINA INTO THE DEEP。2巻のなかで、特に人権をもっていない人々がどのように扱われるのかという、一般的な反応が見えたのは、あの少女がMUJINAに落ちる描写だろう。MUJINAに対してただ即時的な反応を示すだけの「普通のひと(大衆)」、MUJINAに対してずる賢く利用することを考える「暗部のひと(権力者)」。少なくとも、このようにMUJINAに対するイメージを植え付けることで、成り立つ社会というものが、重層的に構築されつつある二巻だったなと思う(一巻の内容を多く忘れてしまっているのでなんともいえないが)。


 なにか身分というものについて考えさせられる漫画なのかもしれないとも、感じた。たとえば、人間というものは、下がいないと生きていけない動物である、みたいなことを何かの本で読んだような気がする。だからいつまで立っても構造的差別というものはなくならないという説。なんだか陰謀論的な響きもする考えではあるが、一理あるのかもしれないなとも思う。そしておおよそ、そのようなものは大衆は表面的なところだけで満足し、権力者など世の中を俯瞰している人々は、その根本的なところに巣くい、搾り取れるだけのことをする。そのような描写が、やはり「MUJINA INTO THE DEEP2」にはあった。


 最後の着地点はどんなだろうと考えてみたりする。私は制度崩壊に行き着くのではと思ったりしている。いや、でも現代社会の有様を考えるとなくなること自体がおかしいのか。もしMUJINAがなくなったとしても、その根底にある思想は、どこまでも人間的なものであると思うので、暗部ではまだMUJINAは生き続けている、、、みたいな結末になりそうな予感もする。どんな終わりになるんだろう。楽しみだなぁ。


 あとテンコだったかな。テンコの魔性がすごい。とても魅力的に描かれている。こんなキャラが個人的には好きだ。でも、、、なんだか途中であっけなく死にそうな予感がしてならない。どうなんだろう。無惨に途中で死んで、おい私と戦うんじゃなかったの的な、、、。そんなオチも全然考えられる。というか、そういうのでも好きなんだけれど。うん、どうなるんだろう。


「シラフで空飛んでんだよ」みたいなセリフも好きだな。なんだか、常にこうでありたいと思う。小さく縮こまっているだけの人生なんて、誰も本質的には望まないんじゃないか。私は少なくともそうだ。そういう誰もの理想的な姿としてテンコには生きていてほしい。それを作品のなかで見続けていたい。そういう気持ちがある。


 そうだな。やはり好きな作品というものは、キャラクターに理想を重ねるというところが少なからずあると思う。理想は理想のままであってほしい。だから、こういう読みをする人たちにとって、理想が理想でなくなったときの失望は、やはりあるのだろう。それは否めない。だから創作って難しいだ。いつの間にかキャラが読者の理想を投影した存在になって……。


 読者の理想と作者の理想。その釣りあいというものが、やはり創作において意識すべき点なのだろうな。今後はそれを意識しながら、創作をしてみよう。物語のレベルではなくて、キャラのレベルで。これ大事。そもそも物語自体の方向性は、これは言うまでもなく。キャラのレベルで、それを意識していくこと。少し頑張ってみよう。


 よし、今日はここまで。

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