未知なる旅へ

白兎

第1話

 ミッシェルは窓の外へ目を向けた。そこには輝く星々が見える。彼女の故郷もその星の一つ。だが、今はその星には誰も住んではいなかった。星の軌道の変化により寒冷化し、氷河期に入った。もう人が住める環境でなく、人類は宇宙船に乗り旅立った。幾つもの宇宙船が新たなる居住の地を求め彷徨う。どれほど科学が進歩しても、この広い宇宙のすべてを知る事は不可能だった。どこに人が住める惑星があるのか、旅をしながら探すしかないのだ。ミッシェルの乗った宇宙船にはおよそ一億の人々が乗っている。宇宙船の中は快適に暮らすことが出来るようになっていて、娯楽施設もある。何の不自由もないが、やはり、地に足を付けて暮らしたいとミッシェルは願うのだった。


 あてのない旅はもうどれくらい経っただろうか? 時間を気にする必要もない暮らしに、誰もが慣れてしまい、そのうち、新たな居住地を望む気持ちも薄れているようだった。未知の惑星を見つけても、そこには危険が潜んでいるかもしれない。この快適な空間で暮らしたいと願う者もいる。人々の意見の違いで時々、論争が起こった。


 それでも宇宙船の中ではみんなが平和に暮らしていた。ところが突然、危機は訪れた。警告音が鳴り響き、危険を知らせるアナウンスが流れた。人々は驚き、戸惑い混乱して逃げ惑う。


 宇宙船には船長はおらず、すべては人工知能に任せていた。

「ねえ、アリス。何が起こっているの?」

 ミッシェルは人工知能アリスに問いかけた。すると、

『強い重力を持つ惑星に引き寄せられています。その周りの小惑星群の中に入りました。シールドで守られていますが、衝撃にご注意ください』

 とアリスが答えた。

「アリス、この宇宙船は衝撃に耐えられるの?」

『問題ありません』

「惑星は私たちが住める環境?」

『はい』

 と返事が返って来た。そして、小惑星群を抜けると、青い惑星が目の前に現れた。

危機は脱したみたいね」

 ミッシェルはそう呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

未知なる旅へ 白兎 @hakuto-i

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画

同じコレクションの次の小説