第226話 大阪の戦い2

堺ダンジョン第82階層


カミ見つけるべくダンジョンの攻略を始めてからおよそ1時間。

流石は最精鋭だけを集めたドリームチーム。

各々の力を合わせればただのモンスター如きは相手にならず、あっという間に5階層も攻略を進めて来た。

そして…ついに見つけた。


「居たね」

「ええ。しかも少し気配が変わったわね…気取られたか」

「問題ない。作戦通り行くよ」


『青薔薇』と『牡丹』が臨戦態勢を取りながら話す。

私はその2人の話に割り込むと、喧嘩させるような隙を一切与えず構えさせた。

そして、私が先頭を切って走り出すと、2人も走り出す。


『青薔薇』は《加速》を使って先に2つの大きな気配へ肉薄する。

少し遅れて私と『牡丹』が到着すると、『青薔薇』はすでに戦闘を始めていて、自慢の超スピードで相手を翻弄する。

そこには割って入るように私と『牡丹』がホロボスカミに食らいつく。


「飛ばせないよ!!」

「このコンビを相手に逃げられると思わない事ね!!」


私が魔王の小太刀を投げ飛行の魔法の発動を阻害すると、『牡丹』が《停止》でホロボスカミの動きを止める。

そして、『牡丹』は私の前に出てホロボスカミの首を刎ねた。

ここで復活するか否かで対応が変わるけど……いや、そもそも経験値が流れ込んでくる気配がない。

これは駄目だ。

こうなったら持久戦だね。


「予定通りやるよ!!もちろん!自分の命を最優先でね!!!」


私がそう叫ぶと、3人とも首を縦に振った。

チラッと後ろを見ると、コワスカミが数え切れないほど沢山の剣で串刺しにされている。

姉さんの剣が効くのか…これはかなり楽ができる。


「さて…何処まで耐えられると思う?」

「あら?『菊』は耐えられないの?私は余裕なのだけど」

「……その喧嘩買ってあげる。私より先にバテたら、車でも買ってもらおうかな?」

「じゃあ、私が勝ったら1ヶ月の世界旅行でも頼もうかな?」

「はあ!?それは無し!!」

「私が負けても同じことするよ。……おっと、お喋りはここまでね」


ホロボスカミが復活した、『牡丹』はすぐに動いて剣を振り上げ、復活したばかりのホロボスカミを倒す。


「ただ我慢比べをするだけじゃ面白くないよね。どっちが多く倒せるかも競いましょう」

「ふ〜ん…?」

「何?乗り気じゃないの?」

「いやね…かなり面倒な戦いになりそうだなぁって」


話しているうちに復活するホロボスカミ。

『牡丹』はすぐに斬りかかろうとするが……そこで私が邪魔をする。

『牡丹』の認識を歪ませてホロボスカミの位置を誤認させた。

剣が空を切り、ホロボスカミと『牡丹』が呆けているうちに私がホロボスカミを倒してしまう。


「これで2対1。頑張らないとね」

「……やったわね?」

「なにが?」

「そう……そっちがその気ならこっちだって考えがある」


そう言って、ホロボスカミが復活した瞬間私の動きを封じてきた。

そしてドヤ顔でホロボスカミを倒す『牡丹』。

…まあ、こうなるよね。


「これだから『牡丹』とは戦いたくないんだよ」

「私も『菊』とだけは戦いたくはないね」


お互い苦手だ。

だからこそ負けられない。

……『青薔薇』はいつもこんな気持ちなんだろうね。

ホロボスカミの復活の瞬間互いに能力を使って行動を阻害しようとする私達。

《停止》の対象にならないように私の位置を誤認させて前に出て、しっかり認識を歪めてからホロボスカミを倒す。


歯を食いしばってこちらを睨む『牡丹』との勝負が始まった。






          ◇◇◇





「あの子達はホント…」

「あれに関しては『牡丹』が悪い。私は悪くない」

「はいはい…どうでもいいわよそんなの」


『紫陽花』姉さんは呆れた様子でコワスカミと向かい合う。

『牡丹』の挑発にはみんな困ってる。

何故かは分からないけど…アイツに煽られると確実にカチンとくるんだよね。

流石はドSバカと言われるだけはある。


「自分の世界に入ってないで、こっちを手伝ってくれない?」

「どうせ持久戦をするんだから、交代しながらしたほうがお互い楽だと思う」

「はあ…まあ、抑えるだけなら私一人で十分だからゆっくりしてなさい。……いや、すぐに構えて!」

「はい!」


『紫陽花』姉さんがそう叫んだ直後、コワスカミの気配が強くなる。

…いや、コワスカミだけじゃない!


「こいつ…こんなに強かったっけ?」

「本気モード。こいつらにも《神威纏》的な力があるのか?」


『牡丹』と『菊』が戦っているホロボスカミの気配も一層強くなった。

『菊』の言う通り、《神威纏》のような力を使っているみたいな戦闘力の上昇の仕方……流石に前回みたいな楽は出来ないか。


「どうする!?撤退する!?」


『紫陽花』姉さんが『菊』に指示を仰ぐ。

確かに…この状況は撤退しても何も問題ない。

その判断は『菊』に任せよう。


コワスカミを警戒しつつ、『菊』の方を見る。

『菊』はかなり迷っているようだ。

撤退するか、戦うか。


おそらく、咲島さんの指示通りなら撤退する方が良い。

でも…これだけ力を放つこいつらを放置して撤退した場合…私達が東京に合流するよりずっと早くヒキイルカミによって召喚される。

そうなったら…東京で戦っている3人が危ない。


命令を優先するか、命令に背いてでも主を守るか。


「……戦う」


『菊』は覚悟を決めた表情を見せる。


「私達がどんなに頑張っても、東京に着く頃には主君達は撤退を余儀なくされてる。この奇襲を失敗させないためにも…ここでは一歩も引かない!!!」

「「「了解!」」」


『菊』が下した決断に、異議はない。

その覚悟を無駄にしない。


「じゃあ…やりますか。足引っ張らないでよ、『紫陽花』」

「ふふっ…どうやら剣の能力が効かなくなったみたいだけど…まあ、手伝いくらいならしてあげるわ」

「なら、せいぜい死なないように頑張って」


剣の能力を期待したけど…流石にそんな上手い話ないか。

まあ、別に剣の力が使えなくたって問題ない。

こんなヤツ、剣の力が無くたって倒せる。

私は『花冠』最強の『青薔薇』様だよ?

この程度で…私が倒せると思わない事だね!


禍々しいオーラを放つコワスカミ。

私は武器を構えると、鋭くヤツを睨む。

本当の戦いが…始まった。

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