第194話 究極!無敵の布陣
意を決して前へ出ると、《魔闘法》で戦闘力を強化する。
強化された肉体をフルに使って一瞬で2体のカミとの距離を詰めると、まずはホロボスカミを狙う。
マガツカミの下位互換なら、防御力は低いはず。
アレも魔法で守りを固めていたけれど、かなり打たれ弱かった。
『菊』1人に完封されていた事を考えると、マガツカミは魔法と《神威》以外はそれほど脅威じゃない。
なら、こいつも一緒だ。
(私は魔法破壊なんて出来ないけど…ただ戦うだけならなんとか…!)
ホロボスカミの懐に潜り込み、2振りの剣による2連撃を放つが、ホロボスカミは軽やかな動きで私の攻撃を躱してみせた。
それどころか、《飛翔》のスキルを使って空へと飛び上がり、私では攻撃できない場所まで逃げられてしまった。
あそこまで逃げられたら私は何も出来ないし、攻撃されることだけ警戒してコワスカミに集中――っ!?
「くっ!!」
私がコワスカミに意識を向けたときには、既にコワスカミは私の目の前まで来ていて、拳を振りかぶっている。
この位置、この距離、この体勢。
躱せない!
当たれば即死…せめて、魔力で防御を固めて破壊の力を…!
「させない!!」
せめてもの防御と言うことで魔力を固める。
しかし、その瞬間町田がコワスカミの背後に現れた。
コワスカミもホロボスカミもおおよそ人型で、大きさもそれ程大きくはない。
町田とは相性が良い。
素早い攻撃でコワスカミの体を何度も切り裂き、攻撃されそうになる前に逃げて私の隣に転がり込んできた。
「近付くなって言ったでしょ!?」
「先輩が殺されそうになってるのに、何もせず遠巻きに見てるなんて出来るわけないじゃないですか!!先輩には旦那さんとすみれちゃんが!」
言いつけを破った町田を叱るが、逆に私が叱られてしまった。
言うとことはもっともだけど…もっと自分の身を大切にしてほしい。
「私の事は気にしないで。町田に助けてもらわないといけないほど、私は弱くない」
「先輩…」
複雑な表情をする町田。
せっかく助けたのに、こんな態度を取られて気を害したかな?
ちょっと軽率な発言だった。
反省しないと…
でも、謝ってる暇はない。
「多分、あいつの探知能力はそこまで高くない。視界から外れて隠密を使えば奇襲できる」
「…気を引くから後ろから攻撃しろって事ですか?」
「2回も同じ攻撃が通じるとは思えないけどね…」
絶対に正面からの戦闘はさせない。
元々、自分が正しいと思った事で行動するすタイプの人間。
私の指示も聞かない可能性があるし、どうせ待機を命じても隙を見て勝手なことをする。
それなら、はじめから奇襲という指示だけ出して、後は町田に任せる。
「とりあえず私は囮になるから。町田も気を付けてね?」
「……はい」
凄く不服そうに返事をした町田から目を離すと、両手の剣を握る力を強めて前に出る。
コワスカミ。私が気を引いて、忘れた頃に今ホロボスカミに魔法を撃ちまくってる『天秤』か『紅天狗』がズドン!だ。
不死身のタネさえ分かればもう敵じゃない。
その自信を担保に、私はコワスカミに肉薄した。
◇◇◇
先輩の様子がいつになく変だ。
いつもならあんな風に私を叱ったりしない。
もっと、私に分かりやすく、優しく怒ってくれるのに…
全く優しくないとっても厳しい怒り方。
それに、なんか理不尽。
私の身を案じてくれてるのは分かるけど、そんなに怒らなくたって…
それに、身を案じるべきは私じゃなくて先輩の方だ。
先輩は独り身じゃないんだから、もっと自分を大事にしないと。
もし先輩が死んだらすみれちゃんが悲しむ。
「奇襲か…こんな状況で奇襲なんて成功するのかな?」
《天秤》の効果で隠密の制度が悪くなってる。
さっきはコワスカミが全くこっちを警戒してなかったから出来たけど、先輩の言う通り二度通じるとは思えない。
同じように、気付かれないように攻撃するだけじゃ意味がないって感じ。
…なら、別方向から攻撃すればいいや。
私からの攻撃を警戒してくれるだけで先輩の生存率も大きく上がる。
もっと積極的に行こう。
「隙あり!」
「町田ッ!?」
攻撃を避けつつ隙を見て自分の攻撃を挟む先輩とコワスカミの間に現れ、喉元を掻き切って離脱する。
突然の大胆な攻撃にコワスカミは困惑して一瞬動きが止まった。
…まあ、それは先輩も一緒だから特にリターンは得られなかったけどね?
私の攻撃が致命傷になるって事を見せつけられただけ良しとしようか。
出来る限り気配を消して視界から外れ、コワスカミの認識の外へ逃げる。
次はどうしようか。
もう一回正面に現れるのはアリだね。
二度も同じ攻撃してくるはずがないって考えてるかもだし、もしかしたら?
それにさっきは正直に言うとちょっと怖くて及び腰だったけどもうチキらない。
確実に首をいただくよ。
先輩とコワスカミの攻防を見守る。
先輩の二連撃を多少食らいつつも、大ケガにはならないように直撃は外す。
そして、魔力を大量にまとった腕を振りかぶるんだ。
あれが振り下ろされれば基本即死。
多分、神林さんでも耐えられない。
「まあ、先輩なら躱せるし、ここが一番の攻撃チャンスだよね」
拳が振り下ろされた直後――私は再びコワスカミの目の前に現れて短剣を振るう。
もうこいつの動きは大体わかる。
絶対に避けられない、反撃もできない位置からすべてを終わらせる。
「とりあえず1キル」
怯むことなく前に出でて、こんどこそ首を掻き切ると一応距離を取る。
「どうです?やっぱり私は人型に対してはすこぶる強いんです!」
「アレをされたら基本誰も勝てないわよ。どんなに強くたって意識外から現れた刺客に首をはねられたらね?」
「そう考えると自信が湧いてきました。このままコワスカミをはめ殺しにして勝ちます――ッぶな!?」
「くっ!?」
予想を遥かに上回る速度で復活したコワスカミ。
のんきに話してる時間は無いってわけね。
頬をかすめたコワスカミの魔力。
防御していなかったからとはいえ、触れた部分の細胞が破壊されてボロボロと炭のようになった肉が落ちてくる。
「私の美顔を…許さない!!」
「確かに子供みたいでかわいい顔よね町田って」
「今そんなボケをしてる場合じゃないですよ先輩。先輩だってわかりますよね?このクソゲーが」
「分かってるよ。さて、このゲームどうやって攻略しようかしら?」
私がクソゲーと呼ぶ理由。
それは、至極単純な理由。
コワスカミの魔力にある。
「復活と同時に魔力全回復。このままだと魔力のジリ貧でおしまいですよ」
「それどころか、あっちは無限復活だから攻撃を食らってどんなものか判断し、対策できる。食らっていい攻撃と、食らっちゃまずい攻撃を学習されて、奇襲やフェイントが効かなくなる」
「そうなったらステータス差で押されておしまいですね。無限復活もち相手に短期決戦なんて…矛盾してますね」
「言うほど矛盾かな?セオリー通りだと思うけど」
魔力全快での完全復活に加え、いくらでも蘇れるから防御せずこっちの攻撃を見ることだってできる学習能力。
怖いなあ…勝てるかな?これ。
「大幹部か咲島さんかあの2人か、誰かが来るまで耐えるか短期決戦の二択よ。どうする?
」
「耐えですね。『天秤』『紅天狗』と連携を取れるとも思えないので」
「まあ、そうよね。じゃあ、お互い死なないように頑張りましょう」
そう言って、またコワスカミに突っ込む先輩。
『お互い死なないように頑張ろう』なんて、よく言えたものだね。
(なんでそこまで私に固執するのか知らないけど、『最悪身代わりになる』なんて勝手な真似はさせないよ。私はそんなへましない!)
気配を隠してコワスカミへ接近する。
何度だってその首を貰うよ。
私の奇襲に対応できるようになるのが先か、応援が来るのが先か。
勝負はそれ次第。
私はもちろん応援が来るに賭ける。
だって、勝ちに行くんだから。
「これが私の登竜門。絶対超えてやるんだから!」
その意気込みで私はコワスカミの脚を切り飛ばし、体勢を崩したところへ先輩が追撃を掛け2キル目。
何十でも何百でもキルしてやる。
こっちが勝つまでね!
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