第167話 勝負服
『…と言うわけで、ヤツは今、おそらくカミになるための修行をしていると思われます』
「……はぁ」
『咲島さん?』
「気にしないで。それより、ちょっと考えたい事があるから電話を切るわね?…盗聴器は事が済んだら必ず付けるように」
『言われなくてもそうしてますよ』
神林さんから電話が掛かってきたかと思えば、とんでもない話を共有された。
毎度毎度、あの2人の行動力には驚かされる。
「…2人に盗聴器のこと話してもらえました?」
「しておいたわよ。だから仕事に戻りなさい」
小春が私に盗聴器について話したか、わざわざ聞きに来たので、仕事に戻るよう言っておく。
しかし、小春は引き下がらない。
「…でも、まだ盗聴器外してますよ?」
「こんな時間だしね。どうせこれからやることやるところだったんじゃない?忘れる前に報告を、って感じで電話してきたんでしょう。だから、今はなに言っても無駄よ」
どうせこれから2人で騒ぎ始めるんだ。
私が口を挟むだけ無駄。
放置して別の仕事をしたほうがいい。
小春を適当に追い払うと、私も本来の仕事に戻った。
◇◇◇
大阪 格安ホテルの一室
「神林さん…早く着替えてくださいよ」
「ちょっと待ってね?」
かずちゃんにせかされて、とある服を着る。
私の服はかずちゃんのより露出が少ないから、まだ健全だけど…果たしてこんな服を着てかずちゃんの前に出て大丈夫なんだろうか?
それに…
「なんか…このパンツ意味深な穴が空いてるんだけど…?」
今履いているパンツは、何故か意味深な穴が空いていて、変な想像をしてしまう。
…いや、間違いなくそう言う用途の穴なんだろうけどさ?
それでも、別の意味があることにかけて着替えを終えると、泊まっている部屋のトイレから出てくる。
「どう…かな…?」
「っ!?」
トイレから出てきた私の姿を見て、かずちゃんが息を呑む。
私は…とても露出の激しいネグリジェを着ていた。
このネグリシェは、『ジェネシス』からの贈り物。
私達の夫婦仲の円満を祈って、わざわざ用意してくれた代物だ。
『ジェネシス』が用意してくれたものだけあって、着心地は最高。
私の体にピッタリフィットし、まるで体の一部かのように違和感がない。
ちなみに、このネグリシェはなんだかんだアーティファクトで、しっかりとスキルがある。
――――――――――――――――――――
名前 妖艶な大人の衣
スキル
《魅了》
《催淫》
《性欲》
《感覚強化》
紫の為に作った特別なネグリシェだよ?
壊れても勝手に直るように作ってあるけど、大事にしてね?
ちなみに一葉のと合わせると、更にパワーアップするから、強い自制心で自分を律するように!
――――――――――――――――――――
説明文を見る限り、『ジェネシス』のオーダーメイドである事がうかがえる。
…こんなの頼んだ覚えないけど。
こんなネタ的なネグリシェだけど、耐久力も無ければ防御力も無いくせに、保有魔力量だけは最上級アーティファクト並み。
つまり、等級で分類するならこれは最上級アーティファクトということになる。
…正気か?
そんなオーダーメイドのネグリシェだけど、かずちゃんも貰っている。
私の姿に見とれているかずちゃんをデコピンで正気に戻すと、そばに置かれていたネグリシェを手渡す。
「今度はかずちゃんの番だよ。早く着替えてきて」
「は、はい…!」
裸なんていつも見てるから、着替えている様子なんて別に見ても見られてもなんとも思わないけど…こう言うのは、雰囲気が大事だ。
「覗かないでくださいね?」
「わかってるよ。楽しみにしてる」
かずちゃんはネグリシェを持ってトイレに入ってしまった。
…かずちゃんのネグリシェは、私よりも露出が激しい。
そして、下着と一体化しているかのようなもの。
それに何より…へんな紐が入ってて、それがかなりえっちだ。
着る前からわかる。
私は、かずちゃんを前に我慢できる自信がない。
いきなり飛びついて…
妄想だけで顔を赤らめ、気持ちを落ち着かせようと冷えた水を飲む。
そして、ベッドに腰掛けてもじもじと落ち着きなく待っていると……
「き、着替え終わりました…」
かずちゃんがトイレから出てきた。
それも、私よりも露出の激しいネグリジェを着て。
トイレから出てきたかずちゃんの姿は…とても子供には見えない色気を感じる。
まさに眼福。
その姿だけで私はもう満足だけど…お楽しみはこれからだ。
「似合ってませんか…?」
「いや…凄く似合ってる」
私の反応が薄かったからか、とても悲しそうな声を出した。
しかし、決して色気が無かったとか、気に入らなかったとか、似合ってないとか…そう言うわけじゃない。
「感極まって、声が出なかったんだよ。それくらい、今のかずちゃんは魅力的」
「もぅ…神林さんのバカ…!」
顔を真っ赤にして、私のことを軽く叩いてくる。
その仕草も可愛らしくて、長い茶色の髪に触れる。
「凄く可愛い。今すぐ食べたいな?」
「完全に魅了にやられてますね…」
魅了にやられてるか…『ジェネシス』の思うつぼだね。
ちなみに、かずちゃんの着ているネグリシェはこんな感じ。
――――――――――――――――――――
名前 青い果実の衣
スキル
《魅了》
《催淫》
《性欲》
《感覚強化》
むっつりスケベで背伸び好きな一葉ちゃんの為に、ちょっと大人な服を用意したよ?これを着るのは紫ちゃんの前だけにするように!
じゃないと、悪い大人に狙われちゃうからね?
――――――――――――――――――――
この説明を見たかずちゃんは、かなり怒っていた。
かずちゃんはむっつりスケベとか背伸び好きとかを指摘されると怒る。
私もあまり言わないようにしてるけど、知らない人はそれをストレートに言ってしまう事がある。
背伸びに関しては特に。
怒るかずちゃんを慰め、その怒りをぶつけられるのは私なんだから、気を遣って欲しいものだ。
「…で、どうしましょう?」
「どうするも何も…せっかくこんな服着たのに、何もしないはないでしょう?」
そう言うと、私はかずちゃんの唇を奪う。
いつもよりキスが気持ちよく感じる。
唇の粘膜の感触や温度、湿気に加え唇に存在する肉の質感。
恐ろしいほどにわかってしまう。
…これが感覚強化、か。
「んぅ…」
「ふふっ、かわいい声」
「聞こえたんですか?耳も良くなってるみたいですね…」
かずちゃんの小さな声を可愛いと言うと、そんな事を言われた。
なるほど…強化されているのは、触覚だけではないと。
この調子なら、強化されているのは特定の感覚というよりは、五感すべてが研ぎ澄まされていると考えてもいいかも。
「いただきます」
「んひゃっ!?」
いきなりかずちゃんの首筋を舐めると、かわいい声で驚く。
そんな事より、かずちゃんの首筋を舐めた私は確信する。
お風呂には入ったけれど、体温が上がってわずかながらに汗を掻く。
もう9月に入ったとは言え、ここ最近の暑さは異常。
汗の塩分と思われる僅かな塩味が感じられた。
それだけじゃない。
このホテルのお風呂は、何処か薬品臭い。
その匂いや、おそらく薬品の味と思われるモノを、かずちゃんから感じる。
昨日はしなかったのに。
「すごいね…かずちゃんの体の細かい味までまわかるよ?」
「ヤッ!」
「でも実際分かるんだよね…今かずちゃんの肌についてる色々な物の味が…」
嫌がるかずちゃんの体を何度も舐め、部位ごとの微妙な味の違いを堪能する。
すると、ついに堪忍袋の緒が切れたのか、かずちゃんに突き飛ばされる。
想像以上力が強く、体制を崩してしまう。
流石に尻餅をついたり、受け身も取れず倒れるなんてことは無かったが…ちょっと怖かった。
「神林さんのバカ!もう知らない!」
そう言って、ベッドに倒れ込み、毛布を被って隠れてしまうかずちゃん。
せっかくのネグリシェお披露目なのに…ちょっといじめ過ぎたね。
…でも、本気で嫌がっているわけじゃないっぽい。
「…ホント、かずちゃんは可愛い子だよ」
そう言ってベッドの上に四つん這いになって乗り、かずちゃんの上に立つ。
するとかずちゃんが毛布を少しおろしてちらりと顔を見せ、様子をうかがってきた。
それを確認した私は優しく毛布を取り除き、ネグリシェに覆われたお腹に手を当てて、指先をすべらせた。
すると、かずちゃんは体をピクッ!と強張らせ、顔を枕で隠す。
指を優しく行ったり来たりさせて一通り焦らすと、私はそのままスーッと指を下へ運ぶ。
「いい…?」
「…はい」
下へ下へと進んできた指は、意味深に穴の空いたパンツにまで届くと、その穴のに中に入る。
そして、その更に中にある穴に二本の指先が入っていった。
「んあぁ…」
ゆっくりと入って来た指に反応し、柔らかな声を漏らす。
私は指先で軽く慣れさせると、しっかりと湿り気を帯びたその場所の奥へ指を入れていく。
「ああぁぁぁっ!!」
大きな声で叫ぶかずちゃんを、私は汚れた笑みで見つめる。
「あ、あぁ…んん…はぁ――っ!」
汗ばむかずちゃん。
その汗を舐めると、塩気だけでなくいつもは感じられなかった味――人間でこんな事を言いたくはないけれど、出汁みたいなものだろうか?
そういうモノを、感じられた気がする。
これも感覚強化の影響か…
それにしても…
「いつもより濡れてる…感覚強化ってこういうのも強化してくれるのかな?」
「んんんん〜!」
ぐちゃぐちゃと音を立て、体をくねらせるかずちゃんをいじめ抜く。
ずっと枕で顔を隠して愛らしい顔が見えないけれど…コレはこれでいい。
昨日は激しくやったから、今日は優しくだ。
ゆっくりと時間をかけて愛してあげること5分…
「っ!!んああああぁぁぁっ!!」
達したらしい事が声と痙攣する体、湧き出す液体によってわかる。
私は指を舐めると、枕の下で真っ赤になっているかずちゃんの顔を拝む。
「どう?良かった?」
「…よかった」
虚ろな目のなにかに、欲望の炎が燃えている。
これは…今夜は長くなりそうね。
虚ろな目が私を捉え、ピンク色に染まる。
そうして…今度は私が食べられてしまいそうだ。
――――――――――――――――――
2人のネグリジェは近況ノートにあります!
ぜひご覧ください。
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