第150話 燃える東京4
小原春斗の体から溢れ出す気配が最高に達した瞬間、彼の体が爆発したように光り輝く。
そして、その光が形を持ち、それは肉へと変化する。
やがて肉が鱗で覆われ、おおよそ人型をとる。
「まじっすか…」
「トカゲの体に猫のような尻尾。だけど頭はまるでヤギですね」
…う~ん、見るからに化け物。
マガツカミなんて和風な名前のカミなのに、めちゃめちゃ見た目は西洋風の悪魔。
神ですらないじゃん。
そんなことを考えていると、恐ろしいほどの魔力が溢れ出す。
「ヤバイ!!逃げるよ!!」
「逃げるが勝ちぃ!!!」
魔力を見てヤバイ気がした私は、そう叫んで思いっきり全力で走る。
ゲートウェイから離れ、ある程度距離が取れた瞬間――
『ドゴォォォォォォオオオオオオオオン!!!』
とてつもない轟音と共に、ゲートウェイが爆発した。
…それも、鉄筋コンクリート製の大きな建物が全壊するほどの大爆発。
「神林さん!!鑑定結果です!!」
かずちゃんがそう叫び、ステータスを共有する。
―――――――――――――――――――――――
名前 マガツカミ (憑依中)
種族 神霊
レベル300
スキル
《神威・厄災》
《神体》
《獄炎魔法Lv10》
《獄氷魔法Lv10》
《極星魔法Lv10 》
《嵐魔魔法Lv10》
―――――――――――――――――――――――
「化け物め…」
「聞いたことない魔法が沢山…四元素魔法の最上級魔法でしょうか?」
「なんだっていいよ。これが暴れたらヤバイ…!」
そう叫んだ直後、スマホが大袈裟な音を鳴らして警告する。
緊急地震速報のアラート…?
…まさか!?
「っ!?地震!?」
「しかも結構デカい!?」
「震度7くらいありそうですね!?」
まともに立てないほどに大きな揺れ。
語り継がれる大震災に匹敵する大きさの地震だ。
街のサイレンも鳴り始め、いよいよヤバイと思ったその瞬間、唐突に揺れが止まる。
そして、マガツカミの真上に巨大な火の玉が出現した。
「何あれ…」
「込められてる魔力が桁違いだ…あんなのが放たれたら一撃で私達全員が吹き飛ぶぞ」
現場指揮を任されている『花園』関東支部の長――『水仙』と呼ばれる女性が冷静に分析する。
確かに、そこそこ距離があるというのに感じられる気配は異次元のそれ。
あんな大量の魔力を使った魔法…見たことない。
強力な魔法を前に、どうしていいか分からず立ち尽くしていると、巨大な火の玉が爆破する。
「かずちゃん!!」
「あぶない!!!」
私と『水仙』さんが同時に動き守りの姿勢をとる。
私はかずちゃんに飛びついて、襲い来る炎から身を挺して守るために。
『水仙』さんは早川に匹敵する魔法ステータスをもって、強力なバリアを張った。
守り切れるかは不安だけど、何もしないよりは遥かにいいだろう。
その直後、炎の高波が私達を襲い、熱波だけで髪がチリチリになるほどの炎が全方位に広がった。
「渋谷が…」
炎の高波が過ぎ去り、あたりを見渡した私達か見た光景は、燃え盛る渋谷の街。
街路樹はすべて燃え、可燃性のものはひとつ残らず燃えている。
ガラスは高温に熱された影響か変形し、ビルのコンクリートは焼けて黒くなっている。
車は内部のバッテリーが熱暴走でも起こしたのか、爆発して大炎上している。
おそらく電気自動車で、燃えるものがそれくらいだったからよかったけど、旧式のガソリン車だったらどうなっていたか……ん?
「っ!?わ、私の車!?」
「そんなこと気にしてる場合ですか!?」
『水仙』さんのバリアに守られて無事だったけど、流石にゲートウェイの駐車場までは…
「私の…私が一年間お金を貯めて買った車が…」
「どうせ100万もいかない中古車でしょ!?ヤニカス安月給社畜の神林さんが貯金なんてできるわけないんだから!!」
「酷い!中古車でも長く使ったらそれは愛車なの!!」
「またゴミ屋敷のもったいない精神丸出しの発想!神林さん、あなた本当に京都の名家の出身ですか!?」
愛車を失くして悲しむ私に冷たい言葉を投げかけるかずちゃん。
あんまりこういう事言いたくないけど、かずちゃんも貧乏家庭出身なら、物を捨てられない気持ちわかるよね!?
なんでそんなに冷たい事ばっかり…
薄情なかずちゃんに心の中で文句を言いながら、マガツカミを睨む。
「私の車の恨み…絶対に許さない!!」
「ちょっ!?神林さん!?」
怒りに任せて突撃すると、私はマガツカミの顔面を蹴り飛ばす。
そして、早川にやったように連撃を叩き込もうとすると、背筋が凍るような悪寒を感じた。
「やばい…?」
マガツカミの体を蹴ってその勢いで距離をとると、警戒心を高める。
「…あれ以上攻撃してたらやばかった感じか」
さっきまで感じられた悪寒は感じない。
あれ以上攻撃してたら魔法を使われてやばかったって感じかな?
下手に近づくとヤバイって事ね。
となるとどうやってこのカミと戦うか…
どうやってマガツカミと戦うか悩んでいると、私のスマホが震えだした。
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