第147話 燃える東京

レベル100の大台に到達した後も少しレベリングを続けたが、目立った成果は得られず。

結局諦めてダンジョンを出ると、ゲートウェイの魔石売り場で職員さんを困らせていた。


「…売れるかな?」

「出せるだけ出してもこのサイズですからね。売るにしても、どこに持っていけばいいんでしょうか?」

「さあ?外で出すように言われるんじゃない?」


アルクオカの魔石がデカすぎて、売り場に入りきらなっかった。

流石に対応に困った職員さんが上司を呼びに行ったが、その上司でも対応できず、偉い人を呼びに行っている最中。


その人にどうするか決めてもらうらしい。

かれこれ、10分は待ってるけど…まだかな?


「うお…おっきいなあ…」

「あっ!あなたが責任者?」

「ええ。お待たせして申し訳ない。こちらの魔石ですが、ぜひ買い取らせていただきたい」


待っていると、出てきたのはおよそ50歳くらいのおじさん。

細身で健康状態が気になる体系だが…それは私が気にする話じゃない。

問題は、買い取ってもらえるかどうか、だったけど、2つ返事でオーケーしてくれた。


「魔力量の測定だけして、ゲートウェイの裏手の駐車場においてもらおうかな?それだけしてもらえれば、後はこちらで何とかしよう」


おじさんの一言で職員がこのクソでか魔石の魔力量の測定を始める。

その途中で、おじさんが話しかけてきた。


「にしてもこんなサイズの魔石、写真ですら見たことがない。一体どんなモンスターを倒せばこんな魔石が取れたんだい?」


確かに、このサイズなら相当量の魔力を含んでいるだろうし、どこで採れたかは気になるだろう。

本当なら、教えずに独占するのが吉なんだけど…ここに居る全員がゴールドで大金を得てるから、あんまり関係ない。


「第72階層のアルクオカを倒したときにとれた魔石です。数の確保は難しいと思いますよ」

「72階層!?前線階層じゃないか!通りで見つからないわけだ…」


前線階層?

なんだそれ…また私の知らない用語が出てきたぞ…


知らない用語に困っていると、かずちゃんが助け舟を出してくれた。


「人類が到達した最深層に近い階層の事ですよ。ちなみに最深層は最前線階層とも呼ばれ、今は第81階層です」

「そうなんだ?あと10層潜れば記録を更新できるんだね?」


その10層が大変だろうけどね?


だって、レベル100の大台に到達した私達よりもレベルが30も高く、最上級アーティファクトを持つ咲島さんが居て、その階層なんだ。

つまり、第82階層はそのレベルで攻略が難しい魔境。

本当のダンジョンというわけなんだから。


「Sランクモンスターを倒してようやく手に入る魔石か…なかなか市場には出回らないだろうね」


おじさんがうんうんと一人で納得していると、計測が終わり買取価格が表示された。


「えっと…魔力量から計算しまして…899万円になります」

「…思ってたより安いね?」

「まあギルドの買取ですから。嫌なら『花園』に持っていきますか?また嫌な顔されるでしょうけど」

「別にそこまではしなくていいかな。4分割して、カードにお願いします」


私達は冒険者カードを職員さんに渡して入金してもらう。

他の魔石とも合わせて、今日の稼ぎは一人当たりおよそ5000万円。


ラプトルの魔石が200個近くあって、それが一個100万いかないくらい。

それを4分割して、アルクオカとエンシェントリザードの魔石も合わせると…まあ、それくらい行くよね?


「これ、クランで売ってたら一人1億言ってたかな?」

「流石にそれはないですよ。そんなに渡したら、クランの経営が回らなくなりますよ」

「それもそうか」


5000万円を入金して貰ていると、何故かおじさんが私達のカードを回収し、何かし始めた。

不審に思って様子を見ていると、戻ってきたカードを見て全員が目を見開いた。


「Aランク冒険者のカード!?なんで!?」

「私達、試験を受けてませんよ!?」


帰ってきた私達のカードは、何故かAランク冒険者のカードになっていた。

おじさんはニコニコと人当たりのいい笑みを見せながら歩いてくる。


「これはギルドの…いや、ダンジョン庁からの君たちへの謝罪の表れだ。…主な目的は、僕よりも上の人間が、君たち『花冠』に狙われたくなくてやった事だけど…僕としては君たちの実力を正当に評価したい。受け取って貰えるかな?」

「ええ…いいですけど」

「これを受け取ったからと言って、彼への慰謝料請求やギルドへのは変わりませんよ?」

「彼?それは誰の事かな?」

「「「「うわぁ…」」」」


なるほど…もうギルドの中では、居ない人間として扱われているのか…恐ろしや…


「慰謝料請求くらいなら構わないさ。それに、ここだけの話、その慰謝料は税金から支払われるだろうから、結局君たちが払ってることになるよ?」

「税金で持っていかれる金を少しでも取り返しただけなので問題ないですよ」


私達って、現段階で4億は税金を納めてるからね?

それを少しでも取り返すために、慰謝料の請求を取り下げるつもりはないよ。


…まあ、そのことについてはこのおじさんはまったく気にしてないみたいだけど。


どうせ大した額にはならないだろうし、このおじさんは慰謝料を払うわけでもなければ、今の役職を追われるわけでもない。


……う〜ん、日本の闇。


「とりあえず、あの話は置いておくとして…Sランクモンスターの魔石か。そもそも持ってくることを想定していなかったからな。持ち帰って、報酬を特別なものにしよう」

「次からはお得って事ですか?」

「そのほうが、君達もやる気になるだろう?」

「まあ…報酬は多い方が嬉しいですからね」


…別にわざわざあいつを頑張って倒さなくとも、ラプトルを毎日狩ればとんでもない額稼げるけどね?

そのうち魔石の価格が暴落しそう。


そんなことを考えていると、突然爆発音が聞こえ、警戒度をグンと上げる。

そして魔法攻撃の可能性も考えて探知の範囲を広げると…


「ダンジョンがおかしい?」


ダンジョンの様子がおかしく、人間のものではない気配が奥から大量に感じられた。

その直後、施設内に警報が鳴り響いた。

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