第136話 70階層のボス戦

扉を開けて中に入った私達を出迎えてくれたのは、身長が3メートルはあるであろう大きなスケルトン。

鈍い輝きを放つ黄金色の鎧を身にまとい、1メートルを優に超える剣と私達が使えば全身を隠せるような大きな盾を持っている。


そのスケルトンが放つオーラは凄まじく、私達よりも強い。


「鑑定結果です。どうぞ」


――――――――――――――――――――――――


種族 ノーブルスケルトン(大公級)

レベル120

スキル

《剣聖》

《魔闘法Lv8》

《暗黒魔法Lv8》

《威圧Lv10》

《瘴気纏Lv10》

《物理耐性Lv3》

《魔法耐性Lv3》


――――――――――――――――――――――――


…化け物では?


「先輩…勝てる気しないんですけど…?」

「奇遇ね。私もこんな化け物が居るなんて聞いてないんだけど」


レベルが120で、スキルもまったく無駄がない。

おまけに耐性もちで、物理も魔法も効かないときた。

こんな敵に、本当に勝てるのかな…?


「…あの、ちょっといいですか?」

「どうしたの?」


どう戦うか考えていると、かずちゃんが私の服の袖を引っ張った。


「あの鎧。ダンジョンで発見されている鉱石の中で最も硬い、オリハルコンで出来ています」

「なるほど。物理は効かないのね?」

「その上で、《魔法威力減衰》というスキルが付与されているんですが…」

「…オーケイ、魔法も効かないのね」


…こいつ、本当に勝つことを想定されてるのか?


そんな考えが頭をよぎるほどの圧倒的なステータスに、全く隙のない耐性。

今までボス戦なんて、ただのボーナスステージだと思っていた。

だけどここに来て本当のボスステージが、私達の前に立ち塞がった。


「杏、町田さん。行くよ」

「作戦は?」

「かずちゃんと杏があいつの首を狙って、私と町田さんがあいつの気を引く。それでいい?」

「了解。死なないでよ?町田」

「縁起でもない事言わないで下さいよ。私は死にません」


全員武器を構え、ノーブルスケルトンを睨む。

ずっと前に、かずちゃんが1人で男爵級と戦ってたけど…今回は、仲間が増えての戦闘。

…なんか、魔王VS勇者パーティーみたいでかっこいい。


そんなことを考えられる余裕があるなら、意外と大丈夫かも?

強大なオーラを放つノーブルスケルトンを前に、私はどこか余裕だった。








「町田!伏せろ!!」

「っ!?」


杏が吠えて、町田さんを伏せさせる。

姿勢を低くした瞬間ノーブルスケルトンの剣が超音速で通過し、衝撃波を発生させる。

直撃こそしなかったものの、衝撃波だけでもかなり厄介。


「セイッ!!」


かずちゃんが剣のフリ終わりの隙を狙って斬りかかるが、盾で防がれてしまう。

それどころか、今度はかずちゃんが振り終わりの隙を狙われ、危険な状態に。


「させるか!」


すかさず私が間に入り、ノーブルスケルトンの腕を押さえて止める。

すると、ノーブルスケルトンは瞬時に狙いを私に変え、膝蹴りで私の顎を打ち抜く。

金属が勢い良くぶつかる『ゴンッ』という鈍い音とともに天井が見えた。


「神林さん!」


かずちゃんの悲鳴が聞こえるが私はまったくの無傷。

むしろ、私に注意が向いている隙に攻撃してほしい。

その考えを読み取ったのか、同じことを考えたのか、杏が双剣の連撃を叩き込む。


強力な二連撃がノーブルスケルトンの頭を直撃し、甲高い金属音が響く。

しかし、あまりダメージは与えられていない様子。

物理耐性の影響だろうね。


「私だって!!」


町田さんも攻撃を仕掛け二本の短剣がいい音を二回鳴らすが、あまりダメージはない様子。

これが効かないのならどうやってあれにダメージを与えろと…?

純粋に強いのに、耐性の影響か滅茶苦茶硬い。


「今のところ、かずちゃんくらいしかダメージを与えられそうな人がいないのよね…」

「考察する余裕があるなら、攻撃してくれませんかね!?」


自由落下で地面に降りた私は誰がノーブルスケルトンに与えられるかを考える。


まず考えられるのはかずちゃんだ。

かずちゃんの火力ならきっといける。

多分だけど、この4人の中で一番攻撃力があるのがかずちゃんだからね?


次に杏。

さっき攻撃して効果はなさそうだったけど…私達で全力で隙を作って、そこに最大火力の攻撃をしてもらえば、多分いけるんじゃないかな?

とはいえ、倒しきれるかは別だけど。


私は…首をへし折ることができれば、十分に可能性はある。

剣で切り裂くとか、魔法で爆殺するとか。

攻撃方法は色々あるけど、このレベルの相手になってくると、首をへし折って即死させるのが一番効果的。

だって、首以外は切っても死なないやつ居るんだもん。

だったらへし折ってもいいよね?って話。


町田さんは……正直期待できない。

このノーブルスケルトン、町田さんと絶望的に相性が悪い。

破壊力の乏しい町田さんでは、弱点である首にすらダメージを与えるのが難しいんだ。

コレが肉のついたモンスターなら話は違ったんだけど……スケルトン相手にはかなり弱いんだよね、ショートソード。


「…やっぱり、予定通りかずちゃんに期待かな!」


地面を蹴って一気に距離を詰めると、ライダーキックでノーブルスケルトンの姿勢を崩す。

ダメージは無いけど、威力は本物だから踏ん張るのは至難の業。

姿勢を崩したところにかずちゃんが攻撃を仕掛け、落雷のような斬撃を振り下ろした。


金属同士がぶつかる甲高い音が鳴り響き、そこでかずちゃんの斬撃が防がれたことを知る。

でも、それでも問題ない。


背後に回っていた杏が首目掛けて2連撃を放ち、攻撃を直撃させたのだ。

わずかに『パキッ』という音が聞こえ、私は勝ち筋を確信する。


これならいける、と…

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