第122話 カミというモンスター

10万PV記念として、本日は特別に二話投稿です。






「『カミ』。正確には、神霊という種族のモンスターで、とてつもなくレベルが高く、《神威》というスキルを持っているのが特徴ね」


神霊。


そういえば、かずちゃんが鑑定したアラブルカミの種族も、神霊だった。


あいつら幽霊なのか…


「今のところ、『カミ』以外で神霊という種族のモンスターは確認していない。だからこそ、これが種族の特性なのか『カミ』だからなのかわからないが……奴らは倒しても復活する。しかも、前回の倒され方を学習して、より強くなってな?」

「それで、復活後も《傀儡化》を受けるのか気になるって、『天秤』が言ってたのか…」

「そうだ。やつを取り逃がした以上、確認することは出来ないが、まあ傀儡化が継続して効果を持つとは思えない。おそらく、もう一度捕まえないといけないだろう」


早川がどうやってカイキノカミを捕まえたのか、それはとても気になるところ。


タイマンでは、咲島さんでも厳しい相手をどうやって傀儡化するのか?


…まあ、十中八九数の暴力だろうけど。


「咲島さんの知る、4体の『カミ』についてはどんなのがいるんですか?」

「そうね…まずはカイキノカミ。出会ったのはあの一回だけだから、詳しい情報は得られなかったけれど、『カミ』の中ではそれほど強い存在ではないこと、おそらく怪奇現象や超常現象を操る能力がある『カミ』ね」


カイキノカミ。


私達も目にした、早川が傀儡化していたやつだ。


怪奇現象や超常現象を操る能力…かずちゃんが速攻で倒してたから見られなかったけど、あの地面に足が沈み込んでいるアレのことかな?


「ヤツの起こした怪奇現象によって、私のゼロノツルギの冷気攻撃が上書きされ、高熱を発するようになった。おそらく、冷気と熱を逆にしたんだろう。そして、地面がまるでクッションのようになっていた。アレは怪奇現象を起こした時に居た者だけに効果があったようだけど、かなり厄介だったわね」

「…最上級アーティファクトにまで効果が?」

「ええ…にわかには信じられない話よね…」


『カミ』の持つ力というのは、相当強いらしい。


最上級アーティファクトの効果に干渉できる力なんて、聞いたことがない。


本当に規格外の能力だ。


「しかしまぁ…カイキノカミはその能力が厄介なだけで、強さ自体はレベル120相当程度。私と『青薔薇』の2人だけで対処できるレベルと考えれば、『カミ』の中では雑魚よ」 

「アレで雑魚なのか…」

「アラブルカミに比べれば、ね…?」

「それは……うん、はい」


アラブルカミ。


私達も見たことがある、知る限り最強のモンスター。


唯一のSSランクモンスターであり、討伐不可の化け物。


咲島さんは、どの程度アラブルカミについて知ってるんだろう?


「次はアラブルカミね。ヤツは私の知る限り“最強”の『カミ』だ」

「最強…!」


だよね…


あんなのがまだまだ居るなんて言われたら、もう冒険者として上を目指すことを諦めちゃうよ。


「レベルが高い事もそうだが、何より《破壊》のスキルが厄介。アイツには魔法が効かない上に、物理攻撃も素手の攻撃か最上級アーティファクト以外の攻撃は武器が破壊されて意味が無い。そして、ヤツの《神威・荒》は魔力の流れを乱し、纏う魔力が弱くなる。また《破壊》との合せ技で、弱い敵は抵抗不可の攻撃を受け即死する」


……紛う事なき最強ね。


火力に優れる上に、防御面でも優秀で、デバフを振りまく事もできる。


そして、格下相手にしか効かないとはいえ、即死攻撃持ち。


多分、コイツより強いモンスターは居ないだろう。


「更に厄介なことに、ヤツは基本霊体だ。魔法か高濃度の魔力を纏った攻撃以外は効かない」

「……あの巨体で?」

「そう。あの巨体でだ」


アラブルカミは、世界最高の高さを誇る建物にに匹敵する身長と、スタジアム並の体格を持つ、とんでもない巨躯のモンスター。


そんなモンスターが霊体で物理攻撃が効かないと言うのだ。


……どうやって倒せと?


「まあ、攻撃の直前は物理攻撃が可能な肉体を得る。狙うならそこだな。それ以外だと、高濃度の魔力を纏った攻撃をするしか無い」

「…倒せるんですか?」

「倒せないからSSランクなんだよ。カイキノカミや、他のカミならまだ倒せるイメージが湧くが…アレだけは論外だ」


SSランクのモンスター。


アラブルカミは、その称号に相応しい化け物だった…


「次は…個人的にとても興味がある存在。名をタケルカミと言うわ」

「タケルカミ…どんなカミなんですか?」


名前からして強そうだ。


アラブルカミの次ぐらいに強いんじゃない?


「レベルは450。スキルは《神威・武》《神威・稲妻》《神体》の3つ。アラブルカミと同じく霊体で、物理攻撃は効かないわ」

「《神威・武》って事は…武術に関する神威ですか?」

「そうね。タケルカミはあらゆる武術に精通していて、その全てが達人の域。《武神の森》と言う番外階層で、瞑想をしたり武術を更に高めたりしている」


番外階層か…


そんなところでずっと修行してるなら、しばらくはダンジョンの外に出てくることは無さそうだね。


…でも、会ってみたい。


「…その番外階層に行くことってできますか?」


かずちゃんが食いついた。


武術に秀でたカミってくらいだから、かずちゃんも気になるんだろうね。


「行こうと思えばいつでも。だけど、あなた達を連れて行くわけにはいかないわ。…まだ、ね?」

「どうしたら連れて行ってくれますか?」

「とりあえずレベル100の大台を超えたら、連れて行ってあげてもいいわよ。レベル上げに励みなさい」


レベル100ね…


確かに、それだけのレベルがあればタケルカミと会っても問題ないのかも。


「タケルカミの最も得意とするものは剣術。一葉ちゃんとは相性が良いでしょうね」

「神林さん!すぐにレベル上げに行きましょう!!」

「えちょっ!?今から!?」


かずちゃんが私の手を引っ張り、ダンジョンへ今から行こうとする。


まだ話が終わってないんだから、私は机を掴んで足に力を入れて踏ん張る。


しかし、かずちゃんもかなり本気のようで、ズルズルと引きずられ始めた。


「まあ…頑張ってきなさい」

「えっ!?咲島さん!?」


微笑ましそうに私達を見送る咲島さん。


まだ最後の一体について聞いてない!!


それを言おうと口を開いた瞬間、ついに踏ん張りきれなくなって、かずちゃんに引っ張られる。


「ちょっ!待ってかずちゃぁぁぁぁぁぁああ………!!」


こうして、私はかずちゃんに引きずられてダンジョンに潜ることになった。





            ◇◇◇





相変わらず仲の良い2人を見送ると、誰もいなくなった相談室で一人呟く。


「最後の一体。マガツカミ。先代の『青薔薇』を殺し、『花冠』に多大な損害を齎した憎き相手」


ヤツの神威は《厄災》。


全ての厄災を操り、仙台ダンジョンを一時は侵入不可の領域へと作り変えた化け物。


アレが現世に現れでもすれば……世界の危機だ。


…そろそろ封印が緩んでいないか確認しないといけない頃ね。


後始末が一段落したら、見に行きましょう。


…早川照がアレに接触しないようにするために、隠蔽工作もしておくべきか。


重い腰を上げて後始末の再開するべく、相談室を後にした。





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