油断

「では卒業生代表、防人焔」

「はい!」

「第169

焔は壇上に上がり卒業証書を受け取る

「、、、」

(基本的に全員が高等部に進級する巫女養成学園で卒業式ってする必要あるのかしら?)

長ったらしい校長というの名の母親である白の話を片耳に聞きながら焔はそう考える

(いや、風香みたいなパターンもあるけど、、、その場合は公開処刑になるでしょ。将来個々の学園長になったらこの行事は必ず消す)

卒業おめでとう」

風香の密かな目的と共に卒業証書が渡された

そして風香は自身の席に戻って行った




(あの血のバレンタインの日。私と風香は一緒に福岡の街に居た。そして穢れが来るって逃げようとしたけどがお母さんが心配で私は穢れが向かっている方へ行ってしまった。今考えれば何してんだって話だけど当時はそんなことわからずに止めてくれた風香を振り払って行ってしまった。そして福岡と隣の街の間の辺りで1匹の穢れに襲われた。私はその時浄化刀を持っていたけど小学生がそれでどうこうできんわけなかったし、そもそも私は怖くてその場で腰を抜かせて上も下も出るもの全て漏らした、、、でも、私のことが心配で着いてきてくれた風香はその恐怖に打ち勝った私の浄化刀を使って数分間穢れと戦って私を守ってくれた)

「はは。唯一本当に卒業する汚点だ」

「やっと、消えてくれる」

「、、、風香が呼ばれていたのか」

周りの嘲りによっていつの間にか呼ばれて壇上に登っていた風香に気がつく

「何も分かってないクズどもが。お前らなんかさっさと穢れに殺されろ」

誰にも聞こえない声で焔は呟く

(こいつらから守るために、、、これ以上貴方を苦しめないために。あの時風香は最後穢れの攻撃を頭に叩き込まれた。その後すぐに来たお母さんがお父さんと口和おじさんを抱えたまま風香と私もおぶって逃げれた。病院に運ばれた風香はそのまま意識不明でその間に口和おじさんは死んで、名鏡おばさんは独断行動で責められてた。確かにおばさんの行動は絶対にやっちゃダメな行為だけど、、、私は責められない、私はその状況になったら、、、風香が同じ状況なったら同じことをやる)

壇上から降りる風香 その表情はどこ晴れやかだった

(晴れやかな顔、、、でも、あの子は血のバレンタイン以前の記憶の何割かを失っている。他のバレンタインの日の記憶は全て失っなっている。そしてそのほか忘れているのは全部じゃなくて何割かだから何もどれくらい忘れているのか本人は認識できないから記憶が戻る可能性は薄いらしい。だから)

「失った記憶よりも何十倍も楽しい記憶を、、、私の婚約者フィアンセ

焔は狂愛の目を風香に向けるのであった

「本来は卒業証書授与が終わった後は私からの話ですがその前に今回は特別な方がきてくださいました」

そんな焔の耳を白の声が揺らす

「特別な方?」

焔が壇上を見る

他の生徒達からもざわめきが起こる

そして壇上に現れたのは

「っ!」

「皆さん、数週間振りですね。月詠零です」

零であった

「とんでもない人が来たわね」

一人を除いて生徒達全員は零の登壇に驚愕する

「さて、まずは皆さんおめでとうございます。まー、長ったるい話はこの後の学園長にお任せして私は簡潔に一つだけ。この先皆さんには様々な苦労があるとおもいます。しかしそれは本当にいきなりひっくり返ることがあります。皆さんもご存知私の秘書でる百花姫はいい例でしょう。あの子は私と出会うまでは中々に辛いな人生を歩んでいましたから」

(百花姫、、、ちょうど一週間前に東京の中華街で五級の穢れを単独で討伐した巫女。零さんは自身に護衛や側付きを付けることを心底嫌がっていた。そんな零さんが認めた巫女でありその強さは月詠家次期当主候補の秘書として恥ずかしかない実力であることは間違いない)

焔は百花姫の情報を思い出す

「誰かとの突然な出会いで絶望が希望に変わるんです。ですから皆さんも絶望に囚われた時には何かしてみましょう。それで何か変わるかもしれません」

「何か、、、」

(風香には何もさせずにただ幸せになってもらう、、、私の側付きなんかで済ませないわよ。私の嫁として)

「しかし同時に希望も何かの拍子に絶望に変わるかもしれません。ですから慢心はやめましょう。わかりやすく言えば学園最強の焔さんが学園最弱の風香さんに危うく負けかけたようなことがありますからね」

「っ!!」

焔の顔が歪む

(確かに私は油断していた、、、でももう二度としない。風香を幸せにするためなら一切の妥協もしない)

「、、、まー、その顔を見るに大丈夫そうだな。妹も希蘭と百花姫以外で張り合いのあるライバルが出来そうだな」

そんな風香の顔を見て零はそう呟いた

「さて、これで私の話はおしまいです。絶望に打ち勝ち油断慢心しないでこれからも頑張ってください」

そう言うと零は壇上から降りるのであった







「ではこれで第169回福岡巫女養成学園中等部の卒業式を終わります。卒業生は退場してください」

(やっと終わった。お母さんの話長い)

退場しながら焔はそう心の中で愚痴る

「でも」

(ついに風香を私のものにできる、、、やっと、やっと)

風香は笑みを浮かべる

そして卒業式が行われた体育館から出た瞬間

「風香ー」

呼びながら風香に近づく

「、、、焔ちゃん」

風香は気まずそうな顔でそう言う

「卒業おめでとうとかそう言うのはもういいから、、、はい、これ書いて」

焔は笑顔で一枚の紙をを渡した

それは

「雇用契約書」

「条件はそんなかんじ。一応見てね」

「、、、うわぁ、凄まじい好条件」

風香は引いた目でそう言葉を漏らす

「それぐらいの信頼を風香ちゃんは焔から得てるのよ」

そんな風香と焔の下に白と

「そうみたいだな。焔さんの目の色が全然違う」

零が現れた

「あ、零さん。今日はわざわざ挨拶に来ていただいてありがとうございました。次期学園生徒会長として深く感謝を」

「いいんだよ。元々用事があったからそれのついでだ。挨拶の時はごめんな。焔ちゃんを侮辱するようなこと言ってしまって」

「いえいえ。あれは完全に私の落ち度ですから。2度とそんなミスはしませんよ。風香を幸せにするために」

焔は意識の困った目でそう言う

「そうか。頑張れよ」

「あ、そうだ!零さんこないだも話しましたがこの子が立花風花。今日から私の側付きになる幼馴染です」

焔は零にそう風香を紹介する

「ああ。こないだの進級試験の日にお姫様抱っこして家まで運んでいたのは見てるこっちが恥ずかしかったぐらいだったからな。普通に覚えてる」

「え゛?!焔ちゃん?!」

風香は顔を真っ赤にしてそう言う

「ふふ。見せつけたくてね」

「はー、防人風香になる日も近そうね」

白は呆れた様子でそう言うのであった

「ふふ。それじゃー、風香サインしてちょうだい」

焔がそう周りにも聞こえる声量でそう言うと

「え?マジで側付きになるの?」

「なんなのが?」

「嘘でしょ」

周囲の生徒やその親がざわめく

「こんなざわめきからももう守ってあげるからね」

「、、、焔ちゃん」

ビリビリビリ

「「え?」」

紙が破られた

「私は焔と巫女として隣に居たいから」

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