理由
「当機はまもなく羽田空港へ着陸します」
「東京、、、初めて行くわね」
風香は眼下に広がる東京の街並みを見てそう呟く
「風香ちゃんが福岡に戻るのは十日後。用件は五日もあれば終わるからそれ以外で観光でも行けばいい。そもそも今日は一日観光してもらって明日手術、、、そしたら二日入院してその間に服とかの準備をする感じだ」
そんな風香に
「、、、女装うまいですね」
女装した零がそう言う
「流石に素顔歩いたら大騒ぎになる」
「そうですね」
「空港を下りたら、東京観光するぞ。一杯面白いものがあるからな。帰った時のお土産にでもしなよ」
「はい!」
そうして飛行機は空港に降り立つのであった
「東京!!」
空港を出た風香嬉しそうにそう言う
「ひとまず東京電波大塔へ行こうか」
「あの600m越えの?!」
「そうそう。有名な観光名所の一つだからな。見晴らしも良いしな、、、今車取ってくる」
そう言うと零はその場から離れた
「、、、」
(3日前まではこんなことになるなんて思ってなかったのに、、、未来ってわからないものだなー)
待っている間に風香はそう考える
「頑張らないと!」
そう風香は意気込む
「でも、、、私なんかが零さんの秘書になんかなれるの?」
しかし今まで一度も称賛を浴びるような経歴のなかった風香は心配そうに俯く
(病気が治れば私、、、魔力操作使えるようになるよね。そしたら変われるのかな?)
「そういえば風香ちゃん」
車を運転する零はふと風香に声を掛ける
「はい」
「俺は別に気にしないけど一応、公の場ではその、、、様付け頼む。俺は言われる資格のある奴以外からは嫌いなんだが、、、めんどくせぇしきたりの問題で風香ちゃんに負担をかけかねない。もちろん様付けしても良いと思えるほどの人間であるように俺も頑張る」
そしてそう言った
「、、、零様ってその辺すごく律儀ですよね。月詠家の次期当主候補というだけでも普通は様付けしないといけないのに。しかも雇用主」
風香がそう言うと
「血で判断されたくないんだよ。俺は結果で慕われたい。そして俺を信じてくれた人に報いたいんだよ、、、様付けは相手を上の存在と言葉にする行為だ。俺はそんな上辺より心から慕ってほしい」
零は自信の考えを吐露した
「俺は結果で人を支配するのはいいが仕方なく支配されるって言うのが嫌いなんだよ。大人から様付けされるのは吐き気がする、、、というか何回か裏で吐いた。でも結局は血に縛られる」
「なるほど」
(焔ちゃんで分かっていたけど名家って言うのも大変なんだなー)
風香は零の言葉からそう感じるのであった
「だから悪いが公の場では頼むよ。その代わりそれ以外の時は女たらし、サイコパス野郎、ロリコンでも好きに呼べ、、、あ、童貞だけは絶対やめろ。それは殺す」
「え、、、は、はい」
(どんな呼び方よ?!というか童貞だけはダメなんだ)
「そ、それじゃー、私のことも公の場では立花って呼んでください」
「え?立花って、、、風香ちゃんはお母さんと顔が似てるから確実に名鏡さんの娘だってバレるぞ」
零は顔を顰めそう言う
「良いんですよ。母の汚名を娘の私が挽回します」
それに風香はそうはっきりと返した
「、、、{私なんかが零さんの秘書になんかなれるの?}なんて言ってたのに随分な自信だな。俺はその方が好きだけど」
「え?!聞いてたんですか?」
風香は自身の弱音を聞かれていたのかと顔を赤くする
「え?!あ、、、ああ。ごめんな聞こえちまった」
「弱気ですいません」
「ホントだよ。あんな才能を見せつけておいてそんな弱気じゃ失礼だ」
「え?才能って、、、私に才能なんて」
零の言葉に風香は驚く
「まず痛覚が無いことは痛みを無視できるという利点がある。本当ならリスクも大きいが意識すれば痛覚を感じれるならそのリスクを大きく減らせる。それに痛みや熱さを創り出すことのできるほど想像力も使い方を工夫すれば爆発的な力を生む。そして恐らくだが魔力不適合症による長年で付いた損傷によって逆に不適合症を治せればとんでもない魔力適合が見込める」
零はそう告げる
「、、、」
それを風香は静かに聞く
「そして発想力と動体視力がとても高い」
「え?」
しかし思わぬ言葉に驚愕の声を上げる
「防人の次期当主の剣速はかなりのものだ。そして他の分野でも隙が無く防人流の巫女らしい絶対防御と荒々しい業火の如き剣技の二面性を持った天才だ。正直言って同世代であの子に勝てるのは日本じゃ鳳凰家の長女達か俺のかわいい妹しかいないだろう。そんな風香を完全に手玉に取った策の発想力とそれを実現するために刀の動きを読んだ動体視力はすさまじいものだ」
「、、、」
「ゲーム風に言うなら{痛覚無効}{肉体支配}{魔力超適合}{超閃}{思考加速}{超絶想像}って感じだな」
零はそう風香の才能について話した
「、、、あの」
「ん?どうした?」
「私は焔ちゃんの隣に浄化ノ巫女として立てますか?」
そして風香はそう零に問う
「隣に立つ?そんなんで済むと思ってるのか?」
「え?」
「風香ちゃんの方がはるか先の高みに行けるよ、、、あの東京電波大塔のようにな」
そして零はそう言うのであった
「っ!はい!!」
そしてその言葉に風香は笑みを浮かべるのであった
「やっぱり女の子は笑顔が一番だな」
「、、、なるほど、女たらしという呼び方は合ってるみたいですね」
「はは。師匠に鍛えられたからな、、、あ、そうだ。それで思い出した、、、俺が最も風香ちゃんを自分の秘書にしようと考えた理由を話していなかったな」
零は忘れてたと言った様子でそう言う
「え?ちっぽけなうどんの恩と私の少しの才能が理由じゃないんですか?」
「大きなうどんの恩と風香ちゃんの莫大な才能以外の理由だよ、、、これだ」
零は一枚の紙を見せる
それは
「進級テストの座学の解答用紙?」
風香が進級テストの座学で書いた解答用紙であった
「最終問題、{三原神問題について自分がどの御神のお考えに同意するかを明記したうえでその理由を示せ}、、、これの答えが一番の理由だ」
そこには
同意するお考え
・どれも同意しない
理由
そもそも人間の生き方に神様が出張ってきているのがおかしいと思う。名家の人間 は神様に触れることがあるかもしれないが私のような最底辺の人間は会ったことも無い神様に自分の運命を決められることになる。そんなこと私は嫌だ。というか、酒吞童子様の自由な統治・玉藻前様の支配する統治・大蛇様の挑戦の統治、、、形は違えで結局は全て巫女中心の世界になる。それはつまりただでさえ問題となっている巫女関連の問題をより広く深く広げることとなる。それは人の世界ではなく神の世界になることだと思う。だから私はどれにも同意しない。
そんな
と書いてあった
「俺も同意見だ。三原神問題って言うのは結局は神の押しつけだ。それ以前に今の巫女管理局には巫女関連の問題を解決する手段がない。そんなんだからウェスタやZGHが暴れてるんだ。知ってるか?ウェスタの信念である{人による統治}に世界の何%が賛同しているか」
「、、、2%?」
(世界人口が55億だから1億ちょい、、、流石に盛りすぎたか?)
風香がそう答えると
「表向きは1.5%。本当の統計結果は4%だ」
「4%?!2億人以上が?!」
風香は唖然とする
「計算が早いな、、、ただ。これはあくまで巫女管理局や世界保健機関の把握している人口だ。裏社会に居る人数を含めたら8%、、、つまり4億人がウェスタの信念に同意している」
「、、、やばくないですか?」
風香がそう聞くと
「ヤバいなんてもんじゃない、、、母さんもそれの爆発をどう抑えるか頭を悩ませてるんだよ。それにウェスタはまだ良い。あれは団長のジャンヌのカリスマを筆頭に民衆に選択肢を提示して自らに選ばせたうえで民衆を扇動して世界を変えようとしている、、、本当にやばいのはZGHだ。グランドマスターのレインは残虐非道で武力で世界を変えようとしている。ヤバい組織だよ本当に」
零は笑みを浮かべてそう言う
「、、、もしかして私そう言う問題にこれから巻き込まれます?」
「うん」
「、、、生命保険は入っておこ」
「安心しろ。風香ちゃんが死んだら2億振り込まれる」
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