詐欺

「余命一年?」

あまりに唐突で重い言葉に風香は絶句する

「いくら無理な特訓で体を保てていたとしても限界来る、、、それが俺の見立てで長くて一年だ」

「そ、そんな」

自分が一年以内に死ぬと言われ風香は今にも泣きだしそうだ

「ただ!一個だけそれを解決できる方法がある!」

しかしその前に零がはっきりとそう言った

「え?そうなんですか?!」

「ああ。ただ、、、二つ問題がある」

「問題?」

「ああ。一つ目は本来ならその方法は現状のところ100%成功する。ただ今の風香ちゃんは死に体の状態だ。つまり、、、何が起こるかが全く分からない。もはや実験の域だ」

「、、、はい」

何が起こるかわからない実験じみた方法 それを風香は静かに理解する

「そして二つ目だがこれはそこまでの問題じゃない。ただ一応な」

「はい」

「普通にバリバリ違法」

「、、、え?」

「普通にバリバリ完全に違法」

「、、、は?え?」

「いや、、、バレたら俺、母さんと師匠に表舞台から消される。そのレベルでやばい方法なんだよ。まー、命には代えられないだろ?」

零がそう言うと

「ま、まぁ、、、はい」

風香は一応頷いた

「ってな感じの話をお母様達に先にご説明していてな。それで俺の正体と病気関連の話でこうなったんだ」

「な、なるほど」

(それでみんな)

風香は部屋の空気がおかしかった理由を理解し納得する

「さて、、、ここまでの話を聞いてもらったうえで提案なんだが、、、風香ちゃん、俺の下でバイトしないか?」

すると零が口を開く

「バイト?」

「俺の実験体になってくれ。ついでに俺の護衛兼秘書も頼む」

「「は?」」

その言葉に全員が唖然とした

「過去類を見ない進行した魔力不適合症患者への治療実験、、、うまくいけば今後の医療において大きな一歩を進むことができる。それに、、、風香ちゃんとお母さまの命も救えるかもしれない」

そんな中、零はそう続ける

「私と、、、お母さんの?」

「実は元々俺が福岡に来た理由は福岡支局の内偵と防人白から頼まれていた立花名境の治療方法の確立のためにこの目で名鏡さんに会うことだったんだ」

「そうなんですか?!」

風香は驚く

「ああ。風香ちゃんが寝ている間に検査したが、、、今の技術じゃ無理だ。知り合いのハッカーにも頼んだが無理だ」

「は、ハッカー?」

「こっちの話だ気にするな。それでだ、風香ちゃんの治療からヒントが得れるかもしれないしそもそも風香ちゃんの命も救えるってわけだ、、、どうだ?」

零は風香にそう聞く

「、、、バイトって言いますけど俺の実験体になってくれって言うの方はバイトの報酬では?」

それに風香はそう返す

「いや?バイトだ。それで受けるか?」

「、、、」レヴィ・アスモ・ベリアル

(私はもうすぐ死ぬ、、、そしたら風香ちゃんとお別れ、、、そんなの嫌だ)

「受けます」

風香ははっきり零の目を見てそう答えた

「よし雇用成立!」

零は嬉しそうにそう声を上げるとカバンから

「はい!雇用契約書。ここにサインお願い!」

雇用契約書を取り出し風香に手渡した

「は、はい」

風香ははそれを受け取ると机にあったペンで署名する

「できました」

「よし!じゃー、ちょっと持ってくるものあるから待っててね。暇だったら待遇の欄でも見ときな」

零はそう言うと家の外へ出て行った

「、、、とんでもない人を助けちゃったんだなー、私」

「話は零さんから聞いたけど、、、まさか魔力不適合症と先天性無痛無汗症の併発だなんて、、、そんなことが」

名鏡は信じられないと言った様子でそう言う

「「お姉ちゃん、、、大丈夫なの?」」

弟妹は心配そうにそう聞くと

「月詠零、、、恐らく世界であの人の顔と名前を知らない人はかなり珍しいわね。血筋もそうだけどその才覚は素晴らしいものだと言われていて、、、月詠家の次期当主になることもあり得る話だって噂よ。そんな人だからきっと大丈夫よ」

名鏡がそう言った

「え?零さんそんな有名な人なの」

風香がそう聞くと

「貴方は座学もしっかり勉強しなさい、、、女性じゃないのに名家の当主、、、それも月詠家の当主候補に名前が挙がった時は世界中で阿鼻叫喚だったわよ。そしてその後彼の実績が公表されて、、、私も絶句したわ。あの子は正真正銘の化け物よ」

名鏡はそう返した

「そ、そうなんだ、、、」

(そんなすごい人だったんだ)

「そういえば見てみたら。報酬」

「あ、そうだった」

風香は雇用契約書の給料の欄を見る

「えっと」


給金

・日給 25000円

・特別給金 ※これが出るということは相当な問題が発生してそれの解決に力を借りたということなので出ないことを願え

福利厚生

・衣食住の手当

・医療面の支援

・浄化ノ巫女になるための知識及び武力の指導

・各種保険の加入

・その他様々


「、、、え?」

「日給25000、、、土日休みだとしても50万は軽く超えるわね」

名鏡がそう戦々恐々とした様子で言う

「しかも福利厚生がとんでもないことになってるわね。浄化ノ巫女になるための指導って、、、とんでもない好待遇ね」

「え?私試験落ちてるからもう巫女になれないんじゃ」

風香がそう言うと

「零さんならその辺特例でどうにかするんじゃないかしら?」

名鏡はそう答えた

「なるほど」

(零さん偉いんだもんね、、、)

それに風香も納得する

そして

ガチャ

「遅れてすまない」

零が戻ってきた

「ん?そのかばんは?」

右手にジュラルミンケースを持って

「気にするな。それよりも待遇はそれでいいか?なんか不満点があれば今から追加はするぞ?」

「い、いえ。十分すぎて逆に心配になります、、、これに見合う仕事が出来るのか」

「安心してくれ。出来なかったら俺の見る目が無かっただけだ」

風香の心配に零は毅然とそう返した

「あとこれな」

そして零はジュラルミンケースを机に置く

「結局これは何なんですか?」

名鏡がそう聞くと

「え?」

パカッ

「1億円です」

ジュラルミンケースを開いて中に詰まった札束を見せた

「「は?」」

風香と名鏡は唖然とした

「1億円?」

「万じゃなくて?」

「億って何の単位?」

まだ小学生の弟妹は1億という単位にピント来ていない

「、、、1億円はこの家の月の食費の2000回分つまりこの家のの食費83年分ってことよ」

そんな3人に名鏡がそう答えた

「、、、え?なにこれ」

「ん?ここに書いてるだろ?」

零は雇用契約書の待遇が掛かれた欄の一番下を指さす そこには本当に小さく

・人体実験の給料として1億円を先払いする

と書いてあった

「「、、、え?」」

「サインしちゃったからね。しっかり受け取ってもらいますよ」

零はいたずらが成功した子供のような笑みを浮かべてそう言う

「防人の次期当主から前払いで風香の弟妹の学費ぐらい渡すと言われてるんだろ?悪いがこんな可能性の塊をみすみす逃すなんて嫌なんでな。金の力で強引にな。この1億は正当な報酬だ。決して哀れみとかの不純な金じゃない」

そしてそうはっきりと言った

「、、、さ、流石に」

(こんな大金貰えないよ!!でもサインしちゃったし、、、普通に詐欺でしょ!!)

風香はあまりの大金に焦る

「そ、そうだ!さっき待遇は書き換えても良いと!」

そして天明が閃く

「ん?不満点があれば今から追加はするとは言ったが消すとは言ってないぞ?」

しかし零は先手を打っていた

「っ!!」

「これは負けたわね」

そして名鏡はそう呟くのであった

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