立花

うどん屋

「ご馳走様でした!!!」

少年はひまわりのような笑みを浮かべてそう言った

「まさかうどん一杯で治るなんて、、、」

少年の顔色は正常そのものに戻った

「いやー、横浜からここまでの飲まず食わずで走ってきたからな」

「え?走ってきた?!」

(え?横浜から福岡って1000km超えてるわよ?)

あまりに異次元な言葉に風香は理解ができない

「いや、本当は飛行機で来る予定だったんだが、、、明日の予定を1週間後だと勘違いしていてな。それに昨日の夜に気が付いたんだが飛行機取ろうにも取れなくてしかなく走って来たんだ」

「半日でここまで来たんですか?!」

(な、何者なんだこの人?)

文字通り人間離れした行為に風香は目の前の少年に困惑の目を向ける

「よ、予定って何ですか?」

話を変えるように風香はそう聞く

「あー、ごめん。言えない、、、まー、そういう内容だ」

それに少年はそう申し訳なさそうにそう返した

「いえ。初対面の相手に話す内容では無いですから、、、ところで財布落としたと言っていましたけど大丈夫なんですか?」

「ええ。まー、、、母の知り合いに会いに行く予定なので。一応は母も相手もお金持ちなので借りる」

風香の問いに少年はそう答えた

「そういえば命の恩人に名前を名乗ってなかったな。俺の名前は零だ」

「命の恩人って大げさな。私は風香です」

「全然大げさじゃないよ。結構真面目にやばかったから」

零は乾いた笑いを漏らす

「あ、住所教えてもらっても良いか。このうどんのお礼をしたい」

そして思い出した様子でそう言う

「だ、大丈夫ですよ!!たかが250円のうどんなんかで!」

風香はそう言うが

「命の価値は∞だよ。あまりよくないけどお金とかでどうだ?」

零は引き下がろうとしない

「、、、さようなら!!」

ビュン

風香は逃走した

「えー?!」

「お礼は大丈夫ですからー!!」

(零さんうどん1杯で重すぎるでしょ!!メンヘラ?!)

走りながら風香はそんなことを考えるのであった




「、、、」

(風香さん、浄化刀持っていたな、、、福岡巫女学園に居るかもな)

うどん屋に1人残された零がそう考えていると

「兄ちゃん、あの子に恩を返したいっていうなら間違ってもお金を渡すなよ」

「店主さん」

うどん屋の店主がそう声を掛けてきた

「兄ちゃんは悪い奴じゃ無さそうだから話しておくがあの子は母親の影響もあって物を貰うこと、、、特にお金は絶対にもらわないだろうな。そういうことは悪い関係が生まれるからって。何かの対価にもらう分にはいいらしいが、、、家も貧しいのに」

そしてそう助言を言った

「そうですか」

(かなりの侍気質なんだな、、、となると)

「、、、家が貧しいのは何でか教えていただけますか?」

零が頼むようにそう聞くと

「立花風香」

店主はそれだけ言った

「っ!!そういうことか」

そして零はその一言で理解した

(血のバレンタイン、、、一級穢れの菓子ノ竜を中心に北九州と西中国地方で死者5万人を出した一級穢災。ただこの穢災はただの一級穢災ではなかった。当時の巫女教会九州支部のエース部隊副隊長の立花名鏡が自身の旦那の命を優先した自己的行動によって部隊が崩壊。10人いた隊で生き残ったのは隊長の防人白と隊を離れた立花名鏡の2人だけ。エース部隊が崩壊した結果九州支部の請け負っていた場所が壊滅しそのまま他の巫女も死亡。市街地まで侵入を許し結果2万人が死亡した。ここ50年で最悪の人災と言われている最悪の穢災だな。結果立花名鏡の旦那は死亡し、立花名鏡本人は日本中どころか世界中から非難された。本来ならそのまま市民に殺されかねなかったが防人白がそれを防いだ結果その問題は解決した、、、ただ、立花名鏡は精神を病んだことから体調を崩し今も寝たきり、、、)

「両親が働けないんだそりゃー、貧困にもなるな。支援とかも受けれないだろうし、、、立花名鏡本人も支援を受けることを拒否しているだろうし。どうするか」

零は考え込む

「難しいだろうな。まー、普通にあの子にうどん一杯奢ればいいと思うぞ」

そんな零に店主はそう言うのであった

「う~ん。それでいいのかー」

しかし零は納得がいっていない様子だ

「福島学園の生徒なら会いに行ってみるか?」

「それだけはやめとけ」

零のつぶやきに店主はそうはっきりと言った

「え?どうしてですか?」

「、、、巫女としての才能があの子は無いんだよ。高等部への進級テストもほぼ無理そうでな。そんな状況で来られたら気まずいだろ。それにそもそも学園であの子は焔ちゃん、、、防人の次期当主が守ってるから実害はほぼ出て無いがいじめられてるんだ」

「あー、なるほど」

零は強い憤りを覚えて

「ん?」

一つおかしな点に気が付く

「高等部への進級テストもほぼ無理そう?あれって即日発表ですよね?もう進級テストは終わってるはずでは?」

(進級テストが終わった2日後にって話だったんだからもう終わってるはずじゃ?)

エレボスが不思議そう聞くと

「え?進級テストは6日後だぞ?」

店主はそう返した

「、、、」

零はスマホで母親から貰った書類を見る

(日時は明日であってるよな?)

「電話してみるか」

そして母親に電話を掛ける

プルプルプル ガチャ

{電話が来たということは予定が1週間ズレていることに気が付いたようね}

開口一番電話の向こうからそんな言葉が告げられた

「、、、ああ。おかげで無理して急いで行って体調崩しかけたんだがな?あの立花家の娘に助けてもらえなかったらヤバかったよ」

{それはごめんなさいね。最近働きづめで自分が止めても聞いてくれないって希麟君から相談されてね。1週間そっちで休みなさい}

「なるほど、、、あの医者本当に過保護だよな。妹の件があるから理解はできるけど」

零は呆れた様子でそう言う

{にしても立花家、、、随分と厄介な名前が出てきたわね。下手に首を突っ込むんじゃないわよ。立花家はあの件で色々とヤバいんだから}

「わかってるよ。俺の立場を使うような真似はしないよ」

母親の言葉に零はそう返した

{ならいいわ。一先ず1週間は休みなさい。それじゃーね}

ピッ

「なるほどな。働き詰めだったからって医者から強制ストップが入ったか」

零の話していた内容からを理解した店主はそう言う

「ええ。その医者、妹が大病を患ってなお且つ両親が妹見捨てたせいで過保護になったんですよ。すごくいい人なんですけどね、、、たまに重い」

零はお手上げといった様子でそう返す

「はは。恩返しが重い兄ちゃんと似た者だな。それにしても働きづめって兄ちゃんまだ高校生ぐらいだろ?バイトかい?」

店主が不思議そうにそう聞くと

「いえ、自分でも言うのなんですが俺は俗にいう天才なので中学の時点でもう大学数学とかその辺も習得したんですよ。大学も卒業済みですしね。今は、、、店主さんなら良いか。俺の職場です」

零はそう言って名刺を差し出した

「、、、嘘だろ」

それをみた店主は唖然とした

「本当ですよ」

「おいおい。風香ちゃんとんでもない人間に手を出したもんだな、、、よく見たら見たことある顔だったな兄ちゃん」

店主は風香が助けた人物の正体をしり思わずそう呟くのであった

「いろんな意味で俺はモテモテですからね。俺からしたら煩わしいだけですけどね、、、もっと伸び伸びしたいですよ」

「はは!お坊ちゃんはやっぱり外へ出たいよな」

「ええ。それではご馳走様でした、、、また来ます」

「おう。兄ちゃんはただの客だ。いつでも来てくれ」

「、、、ええ」

店主の言葉に零は心からの笑みを浮かべてそう返した

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