第4話 どのジャンル?
「博士、それで僕は何を書けば良いんですか?」
「そんなのは自分で決めなさい。ほら、カクヨムにいろいろジャンルがあるじゃろ? さつきちゃんは決めたか?」
「私はホラーを書くわ」
「ほ、ホラー?」
「ええ。好きだから。駄目?」
フォグ博士は、さつきちゃんの眼力に少し押されていた。慌ててマウスを動かしながら博士がモニターを眺める。しばらくすると突然博士が満面の笑みで顔を上げた。
「い、いや。良いと思うぞ。ワシはホラーは詳しくないが、……ランキングを見れば、あの伝説の『涼宮ハルヒの憂鬱』がホラージャンルにあるじゃないか。うんうん。ワンちゃんあるんじゃないかな?」
「涼宮……?」
「おや、知らんかね? まあ。さつきちゃんとは世代が違うからね。だけど名作だからカクヨムネクストでチェックしてみなさい。あれは良い……」
「え~~~」
「ど、どうしたんじゃ?」
「私は小林泰三先生みたいに、汁っぽいのが書きたいわ」
「え、えっと……。こ、ここはライトノベル研究所じゃから、それはちょっと……」
「うーん……」
どうもフォグ博士はさつきちゃんにあまり強く言えないようです。大家さんのお嬢さんだし色々と大人の事情がありそうですね。
「決めました。僕はエルフを書く!」
その時、手を上げながら勇太くんが叫びます。
「お、勇太くんはファンタジーかね?」
「ファンタジー? 僕が書くのはエルフですよ?」
「エルフとは何か知ってるのかね?」
「エルフは耳の長い、貧乳の女性で……あ! 痛いっ! やめて! 痛い!」
勇太くんがしゃべっていると突然リバース・フェニックスが羽ばたき、勇太くんを嘴でつつきます。とても痛いようで、たまったもんじゃありません。
「な、なんだよぉ。まったく……」
「それはワシのセリフじゃ」
「え?」
「エルフというのはキャラクターじゃぞ?」
「葬送のフリーレンとかエルフジャンルじゃないんですか?」
「むっ……。確かにあれはエルフの長命種としての特徴を利用した新しいジャンルともいえるかもしれんが……。あれは異世界ファンタジーじゃ」
「違うんですね?」
「そうじゃ、小説というのは様々なジャンルがある。そしてウェブ小説というのは、ジャンル毎にランキングも別れている、どのジャンルに書くかというのも大事じゃ」
「なんで分かれているんですか? ライトノベルで良いじゃないですか」
「ライトノベルの中でも、人気不人気のジャンルは分かれるんじゃ。そんないろんなジャンルをごちゃまぜにしたら、ニッチなじゃんるは沈んだままじゃろ?」
「沈んじゃうんですか?」
「ああ。その通りじゃ」
勇太くんは、ようやく納得してカクヨムのトップページからジャンルを調べています。
「わかりました。僕は異世界ファンタジーにします」
「そうじゃな。数多なジャンルがあるが、異世界ファンタジーは王道中の王道といえよう」
「僕にふさわしいジャンルというわけですね」
「ん? まあ。どうじゃろうな」
そう言うと博士は再びホワイトボードにナニかを書き始めた。
「異世界ファンタジーの中にも様々な様式の作品がある、その様式をこの界隈ではテンプレと呼ぶんじゃ」
「あ、なろうテンプッ……あっ」
勇太くんは何かを言おうとして慌ててその口を閉じ、恐る恐るリバースを見ます。
しかしリバースはじっと博士の頭にとまっていました。
「ふぉっふぉっふぉ。なろうテンプレ。じゃな。あれは一つの言葉として成り立っておるからな。気にするでない」
「そ、そうなんだ……」
「ただ、なろうテンプレは割と古い言葉で、今はきっちりとしたテンプレを示すかと言われると少し難しいな。ホワイトボードを見なさい」
勇太くんがホワイトボードを見ると、こう書いてありました。
・チートハーレム
・無自覚無双
・追放ザマア
・悪役転生
・人外転生
・ゲーム転生
・ダンジョン配信系
・スローライフ
・美少女に巻き込まれ系
「別にこれが全てじゃないがな、異世界ファンタジーによくあるタイプじゃ」
「い、色々あるんですね」
「これの一つ一つに意味があり、ファンがいて、魅力があると言ってもいい」
「チートハーレムってなんですか?」
「そうじゃな、それは次回話すことにしようか」
「はーい」
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