第3話 オマエの戦場はどこだ?

「では、ライトノベル作家になるにはどうしたら良いか、わかるかな?」


 まずは基本です。今日のために予習をしてきた勇太くんは勢いよく手を上げます。


「はい! なろうコンで受賞することです!」

「うーん。……それは、少しだけ正解じゃな」

「少しだけ。ですか?」

「そうじゃ、コンテストはなろうコンだけじゃない。様々な小説投稿サイトや、様々なライトノベルレーベルがやってるコンテストなどもあるからな」

「なるほど!」

「それとここはカクヨムじゃ。なろうコンの名は出すな」

「はーい」


 そう言うと、フォグ博士はホワイトボードにキュッキュとナニかを書きます。


「いいか? ライトノベル作家になるには、まず4つのルートが有るんじゃ。よし、さつきちゃん、読んでみなさい」

「私、ですか?」

「そうじゃ、……勇太くんが見てるぞ」

「ゆ、勇太くんは関係ないわよ……。えっと、コンテスト、拾い上げ、公募、持ち込み。ですか?」

「そう、じゃ」


 さつきちゃんが読んだ通り、ホワイトボードには「コンテスト」「拾い上げ」「公募」「持ち込み」の四つの文字が書いてあります。

 すると、フォグ博士は「拾い上げ」と、「公募」の間に赤い線を引く。


「このコンテストと、拾い上げ。はウェブ小説の話で、公募と持ち込みはそれ以外と思ってくれ。公募もコンテストのひとつなのじゃがな、一応分けておく」

「はい」

「それと、持ち込みは最近はあまり考えないほうが良いかな。ウェブという媒体が出来た現在では色々とな。嫌がれることも多いようじゃ」

「なるほど……」

「でだ、ここはカクヨムじゃからな。基本ウェブ小説の話で進めていく」

「公募は良いんですか?」

「良いわけじゃないがな、ワシは言ったじゃろ? ウェブの話を勧めていくと」

「は、はい……」


 少しめんどくさそうにフォグ博士は勇太を睨みつける。そのとたんに勇太はビクッとして大人しくなった。大人に逆らうことの危険さを、勇太くんは体に刻み込まれていたのです。


「それでじゃ、ウェブ小説は知っておるな?」

「はい、小説家になろう、ですね」

「オマエハ バカカ」


 突然リバース・フェニックスが、博士の頭から飛び立ち勇太くんをつつき始めます。勇太くんは、「痛い痛い」と逃げ回ります。


「博士! このトリ。危険です!」

「勇太くん……ワシはさっきなんて言ったかな?」

「え?」

「ここはどこじゃ?」

「……あ! カクヨムです」

「そうじゃ、カクヨムじゃな。リバースはカクヨムのトリぐるみの地位を狙っとるんじゃ、気をつけなさい」

「すいません……」

「あとは色々あるが、まあ、世の中の小説投稿サイトはカクヨムと、その他。と覚えておけば良い」

「よ、良いのですか?」

「さっきも言ったようにここはカクヨムじゃ、他のサイト名を出したら名前を言ってはいけないあの人が来る」

「名前を言ってはいけないあの人?」

「◯◯ね!」

「さつきちゃん! 駄目だって!」

「てへっ」

「……ま、まあ、いいじゃろう。それじゃあ、カクヨムを開くのじゃ」


 フォグ博士が言うと、勇太はキョトンとする。


「えっと、どうやって開くんですか?」

「ん? なんじゃ、勇太くんスマホとか無いのか?」

「だって、僕たち小学生ですよ。無理ですよ」

「私はノートパソコンがあるわ!」


 一方のさつきちゃんは、カバンからノートパソコンを取り出しました。

 さすがビルのオーナーの娘さんです。いろいろ恵まれて居そうです。


「ううむ、致し方ない。ちょっと待っておれ」


 そう言うと、博士は部屋から出ていく。しばらくして1台のノートパソコンを手に部屋に戻ってきました。


「それでは勇太くんにはこれを貸し出そう」

「パソコンですか? すごい!」

「使い方はわかるな?」

「なんとなくは……。でも無料で?」

「そんなわけ無いじゃろ。レンタル代はいただく」

「でも、僕お金が……」

「ふぉっふぉっふぉ。カクヨムではリワードというのがもらえる。リワードが貰えるようになったらワシにそれを回せば良いだけじゃ、出世払いじゃな」

「あ、ありがとうございます!」


 ようやく壁を乗り越えた勇太くんは、パソコンでカクヨムに接続することが出来ました。


「博士! アカウントを作りました!」

「うんうん。ペンネームは良いのを付けなさい。変な名前をつけるとデビュー後、後悔することになるぞ」

「わ、わかりました……。博士はなんて名前で小説を書いているのですか?」

「ワシか? ワシはのう。筑波の数学講師。じゃ」

「え? それ、名前なんですか?」

「そうじゃ、一度聞いたら忘れんペンネームじゃと思わんか?」

「は、はぁ……」


(僕はちゃんと名前を考えよう)


 勇太くんは、心に決めました。

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