第31話吸血鬼の血筋
あと1週間で、死人狩りという残り少ない中
訓練に付き合ってくれる天明や玲のおかげで、今のところ、楽しく訓練ができている。
初耳だが、猿田は王蓮が経営するホテルに勤めているらしく、今日は昼から出勤との事で10時に私と天明をネストへ送ると、そのままホテルへと出勤した。
今日も、いつもの様に3人で運動をして、剣や銃の稽古をしていたのだが、丁度昼になった頃、天明はボスに呼ばれ退出。
残った私達は、ソファーへ座り持参したお弁当を食べていた。
「てことは昨日、先輩達に会ったんだ?良かったじゃん!」
「うん!優しい先輩だった〜」
「確かに2人とも優しいからね、じゃあ残るは、もち先輩だけだね」
「もち先輩?」
「うん、餅月透。女の先輩なんだけど俺ら混血とはちょっと違ってて、んー…何て説明したら良いのかな〜…クォーターって、言ったら分かる?」
「あぁ〜外国人とのハーフ、とかそういうの?」
「そうそう!それの吸血鬼版で、混血の親と純血との間に生まれた吸血鬼、だいたい4分の1が人間で後は吸血鬼の血が強いから、混血よりも長生きなんだよ」
「へぇ〜?!そんな人もいるんだ?」
「うん、結構多いよ?まともな純血統の人って、少ないんだってさ、だからボスとか天明さんはレアなんだよね」
「ボスと師匠って、そんな貴重な存在なんだ?!凄…あれ?風太郎さんは?」
「風太郎さんは、曽祖母は混血らしくて真っ当な純血じゃないよ?でも、昔と違って混血の血が混じった吸血鬼って結構多いから、全然普通なんだけどね」
「へぇ?そうなんだぁ…」
吸血鬼にも、混血と純血がいる事は学んだけれど、細かく血筋については考えた事なかったから新鮮だ
しかし、先祖から辿って調べるとなると、かなり大変そう
実際、純血の真っ当な血筋と一度でも混血が混じった血筋では、なにか違いとかあるのだろうか?
「それってさ、違いとかあるの?」
「んー、特にないよ?人の血が薄くなっていく分、段々吸血鬼よりになるだけで、普通に長生きな人も多いし、強いていうなら…血統にこだわる純血から嫌われるくらいじゃない?」
ややこしいが、そこら辺は特に問題はないらしい
ただ、中にはプライドの高い純血の人もいるようで、そう言った人達からは結構嫌がられるそうだ
それに比べると、ボスや天明は混血だからと気にしないらしく、実力重視なのだとか。
ただ、玲曰く狼という組織の人達は、全員が純血で混血に対しては、かなり毛嫌いしている人が多いのだとか…
この話を聞いた後だからか、そんな人達にもしも、私の存在が知られたらと思うと、正直恐ろしい
混血に対して、毛嫌いしているのなら、元人間の私には特に厳しいだろう
さすがに彼らとは会わない事を祈っておくしかない
「ろ、狼って、怖いね…」
「んー…怖いというか、頭が硬い人が多いんだよね〜、いちいち混血だからーとか突っかかって来るから正直言って面倒くさい人達が多いよ。海も会ったら分かると思う」
「…そんな人に会ったら私の存在って余計嫌われない?お前何?ってなりそう」
「どうだろ?最初は海の匂いって眷属ぽい匂いしてたけど、最近は俺らとあんまり変わんないし人間の匂いがしないから分かんないんじゃない?」
士郎さんの血を毎日飲んでるからより、吸血鬼化しちゃってるのかな?
「それって、良い事なのかな?」
「まぁ、血の匂いさえ嗅がせなきゃ分らないよ」
「血の匂いを嗅いだら分かるの?!」
「うん、大体分かるよ?人間か吸血鬼の血かはね」
血の匂いで、相手の情報が分かるなんて凄い能力だ。
流石に私は分らないけれど、吸血鬼の人達はそれで情報を得るのだそうだ
やっと、剣や銃に慣れてきたかと思っていたが、まだまだ、学ぶ事は多いみたい
「もしかしたら、私がこんな状態なのって先祖が吸血鬼だった!とかもあり得るのかな?」
「うーん、どうだろうね〜?気になるなら一度、師匠に調べてもらったらいいじゃん?」
「ん?なんで師匠?」
「師匠は、白兎製薬の社長だからね」
知らなかった?と楽しそうに言う玲に、目を開いて驚いた。
あの大手製薬会社、白兎の社長が天明?
そんな、まさかと玲を見るけれど彼は平然な顔してミートボールを、頬張っている
「え、冗談言ってる?」
「ううん、本当の話、え…まじで知らなかった?」
「し、知らないよ?!…だって師匠も何も言わないし、強ちゃんも教えてくれなかったもん!」
「ありゃりゃ…俺も学んだんだけどさぁ、もう長年生きてる人達は殆ど金持ちって認識してた方が良いよ。大体、何か経営してたりしてるからね〜!」
「そうなんだ…凄い人が多いんだね」
「やっぱり長年生きてれば、発明とか何かしらやってるから、お金を得ないとって思うんじゃないかな?長生きでニートとか聞いた事ないし」
「確かに、長生きでニートはちょっと…」
「でしょ?逆にいたらおもろいけどね」
流石に200年ずっとニートも考えものだ、働かなくてもお金が入るのならいいけれど、人の金で食っていくスタイルのニートなら…あまり好ましくない
でも流石に、聞いたことないらしいので居ないだろうけど
「強ちゃんでも仕事してるんだもんね」
「わかる、士郎さんニートぽいよね〜、けどあの人結構お金持ってるんだよな」
「あ、確かにいい車乗ってるもんね…あ!そう言えば強ちゃん、初対面の時にお金くれるって言ってたのに貰ってない!」
そう、あの時猿田は、お金をくれると言っておきながら、結局あれからずっと会っているにも関わらず一銭も貰っていない
私も忘れていたから、しょうがないけれど帰りに私が覚えていたら、猿田に聞いてみよう
「えっ?!士郎さんとうとう女子高生に手を…!」
「でも、血をもらう代わりにやるって言ってたよ」
「へぇ?…それにしても、凄い口説き文句だね?おもしろ」
たしかに、血の代わりにお金をくれるのも結構危ない。
あれが口説き文句なのかは、正直分からないが案外猿田も、鳥居に負けないのかも知れない
「まぁとりあえずさ〜、気になるなら師匠に海の血を調べてもらったら?大体眷属じゃなくて人間から吸血鬼化してるのは珍しいし、喜んで調べてくれるよ」
「そんなに私の状態って珍しいの?」
「うーん、あんまり聞いた事ないね〜。人間から吸血鬼化したのって、俺は大体2種類しか知らないからなぁ」
「眷属か、死人?」
「そうそう!血の誓いしてるのに士郎先輩の命令に反応しないんだよね?」
「うーん、たぶん?…あと、本当今更なんだけどひとつ質問して良い?」
「うん、いいよ」
「血の誓いってどうやってするの?」
「え、知らないの?」
「う、うん、相手の血を飲むー…みたいな感じ?」
「あはは、違う違う!それだと皆、眷属になっちゃうよ。血の誓いって言うのはね、自分の血と相手の血を混ぜて飲ませるんだよ」
覚えることが多すぎて、肝心な血の誓いをする経緯を全く知らなかった。
折角だからと、聞いてみれば血の誓いは私の想像するやり方とは全く違っており、単純にお互いの血を混ぜて、飲ませるという簡単な方法だった
「したことあるの?」
「俺は、ないかな〜」
「眷属ってあんまり作らないの?」
「いや、単純に俺は、面倒くさがりだから眷族いないだけ!眷族にしたらさぁ、相手に毎回血をあげないといけないじゃん?…面倒くさいんだよね」
毎回あげないといけないから正直、面倒だし俺には向いてないんだと語る玲に、なるほどと頷いた
眷族とは彼らから見れば、動物に餌をあげる感覚に近いのだろうか?
今の話を聞く限りでは玲は、何かを育てるのは苦手そうだ。
「あと知ってた?眷属は契約相手が死んだら死ぬんだよ」
「えぇぇ?!そうなの?!な、なんで???」
「眷属は、契約者の血しか飲めないから、その相手がいなくなれば、枯渇しちゃうじゃん?他の吸血鬼の血は、拒否反応がでて飲めないらしいよ」
「え、そうなの?!それ結構きついなぁ…」
と言うことは、もしも猿田が死ねば、私も死ぬという事だろう。
流石にまだ、16歳のぴちぴちな高校生なのに猿田が死んで、あの苦しい枯渇状態になりそのまま死ぬなんて辛すぎる…絶対に嫌だ
「でも、流石に士郎さんは、簡単には死なないから大丈夫だよ」
「で、でもさ…強ちゃんと出会った時って…枯渇なりかけて、死にそうだったよ?」
猿田に初めて出会った時、彼は瀕死の状態だった。
そう思うと、いつまた同じ状況に合うか分らない
私の命も背負っているのだから、また同じ様な事にならない様、是非とも気をつけてもらいたい。
「あはは…士郎さんは運がいいから大丈夫でしょ!」
う、運は…まぁ確かに良い、のか?
でも、確かに私と出会ったのも、彼の運のおかげと言えばそうかもしれない
けれど、毎回運だけで乗り越えるのも正直不安でいっぱいだ。
あの時の様な危機が訪れないためにも、日頃から気を付けてもらわなくては
「早く強くなって、強ちゃんを守れるぐらいにならないと…」
「あはは!いいじゃん!守られてる士郎さん、俺見てみたいかも」
楽しそうに笑う玲に、頑張るよと真顔で返せば、俺も練習でもなんでも付き合うよと心強い言葉が帰ってきた
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