第27話期間限定のグミ

葉山玲 side



期間限定いちじくグミと書かれたグミの袋を開封し、ひとつ口へ含めば甘酸っぱくてクセになる味が口の中に広がっていく


噛めば噛むほど甘くなり、口の中で無くなる度にまたひとつグミを頬張った




先ほど、猿田と共にコンビニへと向かった理由はコレだ。


昨日から販売した念願の期間限定商品


大のグミ好きからすれば期間限定と言う言葉には弱く、聞いてしまえば絶対に欲しくてたまらない


しかも、鉄分豊富ないちじくとのコラボなら買うしかないだろう



期間限定とCMやSNSで宣伝してるのを見かけた日から、ずっと食べたくて仕方がなかった。



本当ならば、昨日のバイト帰りに買って食べるはずだった予定が、うっかり買うのを忘れてしまっていた。


しかも、今日の朝もバタバタと急いでいたせいかまた買い忘れ。



そんな時、ちょうどお腹も空き暇そうな猿田に頼んでコンビニへと連れて来てもらえば、やっと念願のいちじくグミを見つけ、購入する事ができた。


また、買いに行くのが面倒で籠の中へ多めに20袋入れれば、猿田は買いすぎじゃね?と籠の中を白い目で見ていた。



猿田の一言に屈することなく、レジへ向かえば店員さんもなぜか困惑している様子。


お金を払うのはこっちだというのに、驚くのはおかしな話だ。


隣で猿田も買い過ぎたろ…とまたぶつぶつと言っているが、そんなの聞こえないふりをした




車の中に戻れば、美味しいのそれ?と袋を見ながら指差す猿田、少し興味があるのだろうか。



「美味しいよー?俺昨日からこれ食べたくてさぁ、期間限定なんだよね」


「へぇ?おこちゃまだなー」


「お子ちゃまだからいいんですぅー!」


甘そうで無理だわーと食べもしないのに言われるのはとても心外だ



まぁ…確かに、甘いのは事実だけどグミはこんなにも美味しいお菓子だ。

甘いから、食べないとはなんて損な男なんだろう



とりあえず、開封し早速一袋開けるとグミを取り出しパクリと口に頬張れば、初めこそ酸味はあるけれど、甘くてクセになる味が口の中に広がっていく






そして今、射撃の練習がひと段落した所で射撃部屋から出れば、ソファーが置いてある廊下へと向かった。


どさりと、柔らかいソファーへと腰を下ろし持ってきていた鞄の中から先ほどのグミを取り出し新しく封を開けグミを取り口に放り込む。



舌にのせた途端、グミのまわりに付いている粉が酸っぱいけれど、噛めば中から果汁の甘味が溢れていく。



黙々とグミを食べながら射撃場をガラスの壁から眺めれば、イヤーマフを付けた海が必死にハンドガンを構えているのが見える


水色の長い髪を揺らしながら的を狙う姿は、中々様になっている様に見えた




猿田も、何やら天明と見守っているのを見ると先輩らしいなと、後輩の自分が思うのも可笑しいが、ふと微笑ましくなった。



2人に教えてもらう海を見ていると、自分もあんな微笑ましい時期があったなと昔を思い出すが

自分の時は、天明とボス直々に教わったからかあんなに優しいフォローはなかった気がする



…まぁ過去の事は気にしないでおこう


単純に猿田の様にフォローする2人ではなかっただけの話だ。






暫く黙々と食べ過ぎてしまい、気づけば20袋もあった袋は現在12袋、8袋も食べてしまい若干後悔したが、また、帰りに買って帰ればいい。


そう、自分の中で決めれば躊躇する事なく再度グミを口へと頬張る





「んぅ〜…うまい」



「…おはよ、何食ってんの?」




グミに集中していたせいで、誰もいないと思っていた廊下から急に声が聞こえ、ポロリとグミをひとつ落とすというミスをしてしまい、小さい悲鳴をあげた。



咄嗟に落としたグミを拾い、3秒ルールですぐさま口へと放り込めば、なんとかセーフ…




ホッとして、相変わらず甘く魅惑的なムスクの香りを漂わせる声の主を見上げれば、寝起きなのだろう


いつもよりも、幾度か眠たげな表情をした王蓮が立っていた。




「何してんの?」


「期間限定グミを食べてます」


「…なにそれ?」



意外と興味があるのか、やけに何味?と聞いてくる王蓮へとグミの袋を見せれば、うまいの?と袋をまじまじと見つめている



しょうがない、とひとつ差し出せば無言で受け取り王蓮は口へとグミを放り込んだ



しかし、一瞬だけ眉間を寄せる王蓮


その原因はよく分かる、きっとあの粉が酸っぱかったんだろう。


王蓮の表情が面白く、思わず笑いそうになるが、流石に笑うのはまずいと思い、コホンと、咳払いをして誤魔化し、どうですか?と問えば、あからさまに渋い顔をした




「んー…微妙」


「酸っぱいけど、甘くて美味しくないですか?」




俺はこれ好きで沢山買ったんですよと、グミの袋でいっぱいのコンビニ袋を見せれば、一瞬黙りになり、王蓮は更に眉間を寄せた




「やばいってお前…虫歯じゃん」



「え、ちゃんと歯磨いてます!検診も行ってまーす!」



流石に、酷い言われ様にちゃんと検診には行ってると訴えるが、はいはいとあしらわれた。


猿田もそうだが、大人組はグミの良さを全く分かっていない様だ。



流石に納得がいかずに、美味しいのにと訴えるが無視され、王蓮の興味はすぐにいちじくグミから射撃場の方へと変わり静かに3人を眺めている


 

「…なにあれ、天明が教えてんの?」



「そうですよ、俺が呼びました」



双剣習いたいみたいだったからと、付け足して言えば、興味なさげにふーんと返事を返すと階段へと引き返していく




「あれ?覗いて行かないんですか?」



「あー…俺は上に戻って寝る。じゃあね」



射撃しに来たんじゃないの?と不思議に思ったが、まぁ気にするとめんどくさいので、はーいと返事を返して、また甘くて美味しいグミを口に放り込んだ。

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