第26話円の中心



「両手でグリップを握って…そう、ちゃんと構えて持たないとトリガーを引いた瞬間、反動で吹っ飛ぶかも」



まずはリボルバーから使ってみる?と天明からハンドガンを渡された。


初めて握るハンドガンは、結構重さがあり先程小さいから余裕だ〜!なんて喜んでいた自分が憎い。



「ふ、吹っ飛ぶ…?え、結構重たい!」



「まぁ、慣れだなー。オートマチックはそれより軽いから、先にこの重さに慣れれば後は楽だぞ」



「うん、慣れたら片手で持てる」



「片手…な、なるほど」




まじまじと握ったハンドガンを見れば、先程見せてもらったオートマチックとは形が違う


こっちはレバーの様なものがついており、このハンマーを後ろに倒し、引き金を引かなければならない


天明に言われるがままにハンマーを後ろへ倒すと、グリップを隙間なく両手で握った




「次、イヤーマフ付けたらあそこ狙って」


「んじゃ、つけるぞー。頑張れよ」



ハンドガンを持っている為、両手が塞がっている私の耳に、猿田がイヤーマフをつけてくれ、彼にお礼を言い、天明が指差す的へと視線を向けた。



前に描かれた丸い円の中心、真ん中を狙い銃口を向け、一度小さく息を吐き呼吸を整える


気持ちを落ち着かせれば、中心へと狙いを定め、ゆっくりと引き金を引いた


カチッと、音がしたと同時にイヤーマフをしていても微かにバァンッと激しい爆発音が聞こえた


その瞬間、反動でハンドガンを持つ手が跳ね上がっり、ついつい声を出して驚いてしまう



「うわっ!」



未だに、振動で腕が痺れた様にジンジンと違和感がが残るが、気にせず先程当てた場所を確認しようと見れば、中心を狙ったはずの弾は、見事に外れていた。


けれど、弾は円の外ではなく一応ギリギリ的の中には入っており、悔しさは残るが初めてにしてはまずまずである


イヤーカフを外してこんな感じでいいのかな?と聞けば、隣で見ていた猿田は円をまじまじと見つめて驚いていた。





「…え?円の中入ってね?!」


「おぉ〜…中心じゃないけど、結構センスあるんじゃない?」


「え?!本当ですか??…うーんでも、ちゃんと真ん中狙ってたのにー…」




撃つ前に、確かに中心を狙って撃ったはず、しかし結果は見事に外れていた。


この結果には流石に悔しさが残り、できるならもう一度やり直したい




「でも、これ練習したらいけんじゃね?1発目で円の中入ってるのはすげーよ!」


「…そうなの?」


「うん、だって初めてだろ?普通なら円よりも外に外すやつが多いぞ?それに比べたらお前は練習して感覚掴めばいけそう」



中心を指差しながら、いけると言ってくれる猿田に、正直撃つのは面白いかもと言えば、だろ?と嬉しそうに笑う



「海、次はこっちで撃って」



次はこれと、天明に渡されたのはオートマチック


さっきのリボルバーと違い形もすっきりしていて重さも断然こちらの方が軽い


ただ、リボルバーにはあったハンマーが見当たらず、このまま撃つのか聞けば、上の部分をスライドさせて引っ張ると教えてもらい、やってみればカチリと音が鳴った




「おぉ!!」


「それは引き金引き続けたら連射出来るよ、やってみて」




天明に言われ、イヤーカフを付け直しさっきと同じ様に、両手でグリップをしっかりと握る



先ほどの再チャレンジをしようと、真っ直ぐ中心を狙い引き金を引けば、反動と共に、激しい音が鳴り響いた。


そのまま引き金を引き続けていればバンバンバンッと連続で的へと弾が打ち込まれる


最初に握ったリボルバーと違い、大きな反動はなく気にせず、連続で銃弾を打ち込むが、撃つたびに上へと反動で手が上がるために的から段々と外れていく。


調子に乗り連続で撃ち続けると、流石に手も痺れ結局6発ほど撃ったところで一旦止めると、すかさずイヤーカフを外した。



「…あの、手すんごい痺れてます…」


「連続で撃つと反動がきついんだよなぁ」



未だにじんじんと痺れる手でハンドガンを握ってはいるが、気を抜いたら落としそうだ


けれど、さっきのリボルバーと比べると軽いのでまだ、こっちのほうが断然楽ではある。




「…6発中3発は円入ってる。中心を狙って撃ってる?」


「はい、真ん中を狙ってます」


「反動で上に上がるから、少し下を狙ったらいい」



貸してみて、と言われ天明へとハンドガンを渡せばカチリと音を鳴らし上部をスライドさせた。


イヤーカフ無しでそのまま、中心を狙い引き金を引けば、バァン!と大きな音が室内に響いた。



咄嗟に装着したイヤーカフのおかげで、耳が痛くなる事はなかったけれど、猿田は隣でこの音にも慣れろよと一言。



流石に鼓膜が破れるのは嫌だと首を振れば、このぐらい俺らは大丈夫だと鼻で笑われた



「おい、あれ見てみ?ど真ん中」


「え、すごい…」




猿田の言う様に、天明の撃った銃弾は、見事に円の中心へと撃ち込まれており、ど真ん中に綺麗に命中していた。


天明は片手で、軽々と撃っていたのに全くぶれていない。




「海も、感覚さえ掴めばいける、頑張って」



「…感覚、も、もう一回撃ってもいいですか?」


「うん、何回も練習していいヨ、この弾は鉛だから」


「なまり?」


「鉛は金属、銀じゃねぇからどんだけ撃ちっぱなしてもいいんだよ」


「…へぇ!なるほど」


「こればっかりは、センスと練習だなぁ。頑張れよ」


「うん、がんばる」


「海は、先にリボルバーで練習して…慣れたらオートマチックに変えたらいい」



2つとも重さが違うから、最初は慣れるまでが難しいけどネ、天明はそう言ってリボルバーを手渡した


彼の言う様に、両方に慣れれば後は簡単らしく一応、最初はリボルバーを扱う事に。



「ほら、撃って?」




早速、未だ痺れる両手でハンドガンを握りしめ、天明の教え通り、中心の下を狙い引き金を引いた。



激しい音と共に銃弾を放てば弾は中心近くの真下へと辺り、先ほどよりもたしかに弾が近くなっている。


どうですか?!と隣にいる天明を見れば、まぁいいんじゃない?惜しいけど、と。



手は未だに痺れているけれど、自分の成長が見えると急に嬉しくなるもの、段々の面白くなりもう一度!とまた銃を構えた



その後も何度も、中心を狙って撃ち続けてみるがなかなか当たらない。


しかし、回数を重ねる事に確実にコツは掴んできた。


数発撃ち込んだ所でやっと、1発だけ中心へと命中し、流石に命中した事が嬉しくなり後ろで見守る2人に当たったー!と満面の笑みで報告すると天明は、いいじゃんと私の頭を撫で、猿田は素質あるんじゃね?と私を天狗にする



褒められると、さらに伸びるタイプなのでやる気も増し、まだまだとハンドガンを再度握りしめた



正直、手はさっきよりも痺れているが、何度も練習を繰り返していけば、この震えにも慣れるだろう



弾の入れ方も詳しく教わり、弾切れになる度に弾の補充を繰り返しながら、また練習を続けた



「はは、楽しくなってきてんじゃん!その調子で腕上げろよー」



イヤーカフを付け直す時、微かに聞こえた猿田の声は、どこか嬉しそうに聞こえ、自然と口角が上がっていくのが分かった。

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