第18話鴉の拾い物


いつもの様にカチカチと音を立て、ライターを鳴らす人物に声をかければ、タバコを咥えたままこちらを見据える鋭い赤眼



「あの子を入れる事、許可してくれてありがとう」


「別に…猿が面倒見るなら良いんじゃない?」



海を鴉へ入れる事を了承してくれた王蓮はタバコを吹かすと足を組んでソファーへと背中を預けた


どうでもいいよと言わんばかりの態度に彼らしいとついつい頬が緩んでしまう


けれど、海を鴉へと入れた理由は彼女の身の安全を守るため、それから彼女が一体何者なのか調べるためでもある。



「あのさ…海は、変わった匂いがすると思わない?」



「…あぁ、確かに。不思議な匂いがするね、何?結局あれは猿の眷属?」



「うん、誓いは立ててる。ただ海の場合は士郎の命令が全く効かない」

 

「へぇ、ならただの吸血鬼と同じじゃん」



そうなのだ、誓いを立てているにも関わらず全く士郎の呼びかけには反応しない。


そんな眷属はこれまで見たことがなかった



「そう、なるよね。…特異体質なのかも」



稀に、人間の中でも変わった体質の持ち主がいると聞く、もしかしたら海もその体質なのかもしれない


王蓮はただ、軽く相槌を打つとタバコの灰を灰皿に落としながら、そう言えば気になることがあってさと、不思議そうに口を開いた



「…眷属って誓いを立てたやつの血しか飲まないじゃん、でもあいつ俺の血吸おうとしたんだよね」



「王蓮の血を?」



「ん、死人なら理解できるけど眷属ならおかしくね?」



たしかに、眷属であれば主人の血しか求めないはずだ。


しかし、王蓮の血を求めたとなれば死人の様に誰の血でも飲めるのかもしれない


今はまだ、士郎の血しか飲んでいないけれど、一度きちんと調べた方が良さそうだ



「そう、だね…一度調べてみた方がいいかも」


「…はぁ、めんどくせぇやつ拾ったか…」



タバコを吸い終わった王蓮はソファーに寝そべり海を拾った事を後悔している様子


いちいち調べなきゃならないのがめんどくさいのか


あーだるいと子供の様に駄々をこねる王蓮は面白い


普段のツンケンした態度からは想像できないだろう



「はは、でも拾ったのが王蓮でよかったと思うけどな」



「俺、毎回変なの拾ってる気がするわ」



たしかに、王蓮は大体変わった人材を拾ってくる事がある


士郎の時もそうだ、面白そうだから連れてきたと、いつもその時の気分で連れて来る


今回も、王蓮の気まぐれだろうけれどたまたま拾ったのが海というのもまた、面白い話だ



拾った後に、変なの拾った!とこうやって後悔するのも毎回同じ。


けれど、王蓮の拾い物には毎回ハズレがない


鴉という名前の通り、王蓮は目が肥えている


今回もきっと、宝を拾ったのだと俺は信じている



「いいんじゃない?鴉なんだし」






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