第12話黒き鴉が拾うは宝石
龍 王連 side
今日はやけにつまらない、鴉の縄張りに攻め込む馬鹿な死屍、あいつらは弱すぎて遊びにもならない
何のためにわざわざ死人を吸血鬼化させるのか
派閥は違えど、同族なのに考える事がしょうもない
どうせなら強いやつを集めろよ
死人を戦力にするほどつまらないものはない
人員が少なくて焦っているのかもしれないが
そこまでして同盟を拒むのはなんなんだ
俺の傘下に入れば済む話が、拒み続ける白蛇と狼、争うのはむしろ好きではあるがここまで抵抗されると、余計に欲しくなる
いずれはどちらも手に入れるけれど、今日の様につまらないのは面白くない
相手にもならない奴らの相手はもう飽きた
こいつらの相手は他の奴らに任せ、今日は風太郎の家へと乗り込もうと黒塗りのベンツを走らせた
今日はもう、酒でも飲んで明日白蛇の縄張りに攻め込むのもありだと、明日の楽しみに胸を躍らせる
夜だと言うのに、昼間の名残りでサングラスをかけたまま夜の街を駆け巡る、車の窓を開け風を入れればふと、先程雑魚の相手を任せたはずの猿の匂いがした
「あいつ、サボってんの?」
西の守りを任せたはずだが、なぜこんな所からあいつの香りが漂ってくる?
ただの、興味本位でこの香りの元まで車で向かう
もしも、サボってたら給料は無しだな
そう、心に決め猿が居るであろう場所へと勢いよくアクセルを踏むとスピードを上げた
ぶぉぉぉんと音を鳴らし、匂いの元へと到着すれば、道端に座り込む何かの姿が目に入る
近くに車を止め、ゆっくりと車から降りればやはり匂いはあそこからだ。
「猿の匂いがすると思えば…眷属?何だ、お前」
近づくにつれて猿の匂いは濃くなるが、どう見ても目の前に映る人物は猿ではない
淡い水色の髪を垂らし、夏だと言うのにコートを着て、いかにも冬の装いに身を包む少女
一瞬、死人かと思い近くまで行き観察すれば少女は溢れんばかりに涙を流し、苦しそうに息を吐いている、この状態はきっと枯渇しているのだろう
匂いからして猿の眷属か、それとも女か
見た感じ、死人ではない事を確認すると彼女の目線と同じくしゃがみこむ
先ほどよりも猿の匂いは薄くなりかけているがあいつの匂いで間違いはない
けれど、目の前の得体の知れない少女の香りがやけに気になり不思議に思う
ついつい不思議な香りを放つ少女に興味がでる
眷属とはすこし違うこの匂い
人間でもなく、純血でも混血とも違う匂いは、一体…何だ?
今だに溢れる涙でぼんやりとしている少女を眺めていれば、不意にこちらへ小さく尖った歯を向けて来た。
まさか、自分に牙を向けるなんて思わず咄嗟に手袋の手で少女の頬を不意に掴んだ。
突然掴まれた事にびくりと反応していたが、そろそろ、彼女の意識が限界だろう事が分かる
「お前、俺の血が飲みたいの?…生意気だね」
猿の匂いを漂わせながら、他の男の血を求めるとは、かなり図太い性格をしている
ついつい、鼻で笑いそう言えば聞こえているのかいないのか、少女はふっと意識を飛ばし俺の方へと、もたれかかって来る。
一瞬避けようかとも考えたが、とりあえず仕方がないので受け止め、気絶した様に倒れる少女を抱き抱えると車へと運んだ。
後ろの席に寝かせれば、彼女のポケットの中でスマホが音を鳴らし震えていた
煩く耳障りな音を消そうとスマホを取り出せば
画面に映し出される見知った名前
だだの気まぐれで、その電話に出ればやけに焦った様子の男。
気絶した様に眠る少女に視線を落とし電話口の男へと声をかける
「…もしもし、お前落とし物してない?」
一言そう言えば、電話口で固まる猿が浮かぶ
わかりやすい反応に鼻で笑い、風太郎んちに来いよと言えば、はい!と大きな声で返事が返ってくる
すぐに電話を終了させ、運転席に乗り込むと
次は自身のスマホから風太郎へと電話をかけた
「なんか、面白いの拾ったから今から行く」
チラリと後部座席で眠る少女をミラー越しに確認し車をゆっくりと走らせた
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