第3話夏のイベントはまだ終わらない


結局、学校に登校したのはあれから5日後だった

思っていたより熱が下がらずに3日は高熱で魘される日々を過ごした



その後もなんだか気だるさが続いて、結局は土日も加わり1週間休むことになった。


余計学校に行き辛くなったのはしょうがない



今日から新しい1週間が始まると言うのに、朝から気分はブルー


体調は万全だが、どこか重たい体を動かしローファーを履き終えるとそっと玄関の扉を開いた




「行って来ます」



正直全く乗り気じゃないが、いつもの様に学校への道のりを静かに歩いていく


ここ数日家の中で過ごしていたからか、やけに外の空気は澄んでいて、頬にあたる風はなんだかやけにくすぐったい



自慢の長い髪を揺らす風に、少しだけ鬱陶しさはあるものの、風が吹くたびにシャンプーの良い香りがしてほんの少しだけ気分が穏やかになっていく



不意に、空を見上げれば今日も空は雲ひとつない


綺麗な青空が、どうだと誇らしげに私を見下ろしていた。









重たい足を動かして学校へ向かえば、朝イチだというのに、もう既に何人か生徒達が楽しそうに登校している


友達と笑い合う声が廊下まで聞こえてきて、なんだかやけに緊張してしまう


久々に学校に行くからなのか、教室まで歩く足は段々と重くなる。


変に緊張しすぎて心臓の音が速くなるのを感じ、小さく深呼吸をすれば、ほんの少しだけだが気持ちが楽になった気がした。



そっと教室の扉から中を見渡せば、数人の徒達が既に席についていた



いざ、中に入ろううと足を踏み出せば、後ろから自分の名前を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえてくる


海!と嬉しそうに名前を呼ばれ振り向けば、友人が笑顔で駆け寄って来てくる




「ハルちゃんー!」

 



なんだかその姿がやけに嬉しくて甘えたように彼女の名前を呼べば、ハルは嬉しそうに答える




「海、大丈夫だったかー??」



「体調は大丈夫なんだけど、気持ちが大丈夫じゃない〜!体育祭、休んでごめん!!ハル、私の代打してたって聞いた…ほんとごめん!!」



「海、めっちゃ楽しみにしてたもんね。私は大丈夫だけどさ、海が泣いてんじゃないかって心配してたよ。メールも返事は復活の一言だったから気になってたのよ」



「うん、あはは…しんぱいかけてごめん」



彼女は中学の頃から仲良くしている風見 ハルちゃん


体調のことも理解してくれているし、今回の体育祭を誰よりも楽しみにしていたことも知っている人物だ



とにかく教室に入ろうと彼女が言うので、2人で教室に入る事にした。



案外思っていたより、クラスメイト達も優しく出迎えてくれて、なんだか先ほどまで変に緊張していた自分がバカらしく思えてくる。



けれど、こうして今を穏やかに過ごせるのはハルのおかげなので心の中で再度彼女にお礼を言っておいた。





結局、学校に行ったはいいけれどあと1週間学校に行ったら次は夏休みという長期休みがやって来る


無駄に1週間休んでしまった為に、後1週間しか学校に通えない現実を今日の朝礼の時に知った私は、それはもう1日中落ち込んでいた。



ハルにその事を話せば、逆に学校に来たがる私はおかしい様だ。


他の友人達にも珍しい子だと言われたけれど、家のベットで大半を過ごしてきた私にとっては、こうしてみんなが集まる場所に居て過ごせることが幸せなのだから結構重大な悩みである



その事を話せば、夏休みも海が無理のない範囲で会おうよと言ってくれた。


学校のイベント、体育祭を過ごせなかった代わりにと友人達から夏祭りにいくことを提案され、即OKと返事を返した。




「行く、絶対行く」



前のめりになりながら、ハルと共に数人の子達と夏祭りにいく事を了承すれば、隣のハルは冷静に前日無理しすぎて倒れない様にと。


あり得そうなことを言われ、流石にもう繰り返さない為にも、安静に過ごすことを宣言した





夏はまだまだこれから、青春はそう簡単には終わらない

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