第2話夏が似合わないのは
幼少期、父と母がいたが不慮の事故に遭い、幼い私は両親を両方失った。
まだ幼い私を、可哀想に思った母の妹が、私を引き取り、今は2人で暮らしている。
良く、周りに可哀想だと同情の眼差しを向けられがちだが、正直幼かった私は、父と母の記憶があまりない。
今でこそ、記憶がなくてよかったと思うのは、これまで生きて来た16年間、寂しい思いをさせなかった叔母のお陰だろう。
母の妹である叔母には感謝しかない。
ただ一つだけ、叔母に申し訳ないのは、よく体調を崩しがちな事。
そのせいで、結構な金額を病院に使わせている。
女で一つで、私を育ててくれているのに、医療費にお金を使わせる事が申し訳なく、正直胸が痛い
特に病です、とお医者さんに宣言されたわけではないけれど、何度も高熱を出し寝込んだ時は、流石に覚悟をしていた。
一年中、季節関係なく風邪で寝込んでしまうし、調子に乗った翌日は、すぐに高熱をだす始末。
あまりにもその回数が多すぎて、叔母に連れられ何度か精密検査をしに行ったこともある。
しかし、結果は全て原因不明といわれた。
結局、体調に気をつけ無理をしない様に過ごすしかないらしい。
そう言われ、自分なりにも叔母に迷惑をかけない様にと、気を付けていた。
けれど、そう簡単に私の体はいう事を聞いてくれる筈もなく、こうして真夏の暑い時期に分厚い毛布に包まれ、寒気と戦っているのだ。
「ほんと、最悪すぎる」
今日は高校のイベント、体育祭
今年16歳の、弱木 海は前日に浮かれすぎて体育祭当日に、高熱を出し布団の中でどこからか来る寒気と、戦っている。
少しだけ空いた、窓の隙間から緩い風がふわりと入ってくるが、今はその風さえも、寒く感じるほど、私の体は夏風邪という病に蝕まれている。
朝から熱が出た私に、お弁当を作ってくれていた叔母は、慌てて布団へと寝かせると、優しく看病してくれた。
いつものことなので、手慣れた様子の叔母だったけれど、せっかくお弁当を作ってくれていたのにと、やけに申し訳なくなった。
ごめんね、と言えば叔母は謝らなくていいと、優しく笑ってくれたが、どうしても私は自分が許せなかった
それから仕事も休むと言い出した叔母に、自分のせいで、仕事まで休ませるわけには行かないと思い、寝てるから大丈夫だと言い、納得しない叔母を説得し、無理やり仕事に行ってもらった。
せっかくのお弁当も無駄にして、叔母の仕事も休ませるなんて、余計自分が惨めになるだけだ
最後まで、心配そうにしていた叔母に、精一杯の笑顔を向ければ渋々だったが、納得してくれた様で安堵した。
とりあえず、熱で気だるい体をそっと動かし、頭から掛け布団を羽織ると、そっと目を閉じた。
早く、良くなりますように
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