トリ。

桃福 もも

800字のSF超大作(笑)

かごめかごめ、かごのなかのトリは、いついつでやる。

よあけのばんに、つるとかめがすべった。

うしろのしょうめんだあれ。


籠の目をご存じだろうか。五芒星のような形に編みこまれている、あの籠の目だ。

時は平安、941年 安倍晴明あべのはるあきら二十歳。

彼は、ある日、空を走る流星を見た。


「いかがされましたか?晴明様はるあきらさま。」

そのように声を掛けたのは、式神しきがみのまこらである。

「戦乱を予兆する星だ。」

「戦乱?」

「ゆこう。」


晴明とまこらは、上空へ飛んだ。

そこには、黒い羽の生えた人の姿があった。

鼻の高い白人であるが、髪が漆黒である。


「晴明か!邪魔立てするな!」

「平安京を滅ぼすつもりか。」

「諦めよ。この先では、更に犠牲が増える。平安を差し出すがよい。」

「そうはいかぬ。」


急急如律きゅうきゅうにょりつ!」

突然、無数の五芒星がその者を取り囲む。


「かごめかごめ」と言うのは、つまりこれ、晴明による結界である。

トリ、とは高く飛翔する者。獲物をついばむため、飛来する者を意味する。

これ、別の名を「天狗」と言った。

天狗とは、「流星」「戦乱を予兆する星」とも呼ばれ、星をよむ晴明は、いち早くこれに気付いたのだ。


五芒星によって、安倍晴明はこのトリを閉じ込めた。

地上に下ろすと、籠の周りに石を置き、更に結界を強化する。

この場では、ことなきを得た。平安の時代は、無事であったのだ。


千年と万年を統べたは、世界中で陛下ただおひとり。

2024年の御代となっても、トリはいまだ出ていない。

晴明の神通力、恐るべし。死後もなおその力は残る。


令和六年、第二八代陰陽師 阿部柾和羅あべのまさかずらと、式神のまこらがそれを護っていた。


だが来る。それはまもなく。

新しい時代の終焉が近づいた時、その流星の背後にある者が、とうとう下された。


五芒星の一端が切れたのだ。トリが動く。

天狗はとうとう、魔物から神に昇格した。


今は来る。


かごめかごめ、かごのなかのトリは、いついつでやる。


それは,今。


ですが今宵はここまでに。

トリあえず。

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