第二章


小さな部屋にランタンの灯りがともっています。

少女はベッドに腰かけて、旅人はテーブルのそばにある椅子に座って、それぞれシチューを食べていました。

お互い器の中が半分くらいになった頃、旅人が少女にたずねます。

「……君は、どうしてここで暮らしているんだい?」

少女はしばらく遠くを見るような目をしてから、少し目を伏せてひと言呟きました。

「森の外は、怖いところよ」

旅人が返事をしないでいると、少女はひとりでに話し始めます。

「蔦が生えている人と生えていない人、多いのは生えていない人でしょう? あたしは少ないほうとして生まれた。味方が少ないの。それに、剣の使いかたも下手だから、味方なんて一人もいなかった。あたしが何かを言ったって、何かを感じたって、仲間はいない。どうせ負けるの」

旅人が自分のことを見ているのを確かめてから、少女は話を続けます。

「苦しい気持ちになったら、悲しい気持ちになったら、蔦が自分を縛るみたいに生えてくる。こんな呪いにかかってしまって……だから、あたしはずっと神様に祈ってたの、消えてしまいたいって」

少しのあいだ、部屋がしんと静まり返ります。

先に口を開いたのは、旅人でした。

「……それは、今も同じかい?」

「……ええ、まあね」

そう答えた少女の声は、なるべく自分の気持ちを乗せないように無理をしたような調子でした。

「そうか……」

旅人は考え事をするように黙り込みました。

「いいものを見せてあげよう」

旅人がそう言って少女の目の前に取り出したのは、自分が旅をしてきた中で見つけたものを、なるべく綺麗に整えて、大切に大切に持ち歩いてきたものたちでした。

「わあ……綺麗……」

「同じことを感じてくれて嬉しいよ」

旅人は目を細めてから、ゆっくりと少女に語りかけました。

「世界には、いろいろ面白いものがある。これ以上に美しいものもきっとたくさんあるだろう。

――でも、それは全て、生きていなければ見られないものばかりだ。

今、僕は君に、こじつけでもいいから、死んじゃいけない理由を見つけだしてほしいと思っている。

弱くていい、泣いてもいい、怒ったってかまわない。

きっと、死んでも面白いことはひとつもないから」

優しく静かな夜の空気が、部屋をそっと包みました。

「ねえ」

少女は我に返ったように、旅人を見つめて問いかけました。

「あなたは、神様なの?」

「神様には遠く及ばないさ。ただふらふら彷徨っているだけの、ちっぽけな生き物だよ」

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