しあわせのかたち
ケロ王
KAC20246 しあわせのかたち
しかし、いまだに出会うどころか姿すらも見ることのできないことに焦りを感じていた。
「やはり、今の私では幸せの青い鳥に会えないのだろうか……」
元々難しいと思っていた。
だが、幸せの青い鳥を見つければ、こんな自分でも幸せになれると思うと、簡単には諦めることができなかった。
しかし、さすがに1週間も経つと、食料も尽き疲労も限界となってしまい、それを諦めるしかなかった。
全てを諦めて帰ってきた蒼は、恋人である
「はは、結局、幸せの青い鳥には会えなかったよ。僕が幸せになるのは、まだまだ先のようだ……」
自分で言って落ち込んでいると、紅が彼に話しかけてきた。
「幸せの青い鳥って、具体的にどういうものなの?」
「うーん、青い色で、鳥?」
「それだけ? 他には?」
「いや、それ以上はわからないよ。青い鳥としか聞いていないんだから……」
彼は、そんな細かく聞かれてもわかるはずが無いと、苛立ちながら答えていた。
一方の彼女は、そんな彼の様子に表情一つ変えず、カバンを漁りながら話を続ける。
「ふーん、そんなことだろうと思って、私が用意しておいたわ。ほら、これ。これで青い鳥よ」
そう言って、彼女が出したのは、スーパーで売っている鳥の肉のパックと青いペンキの缶だった。
「何言ってるんだ! これはただの青いペンキと鳥の肉じゃないか!」
「そうよ、この鳥をペンキで塗れば青い鳥じゃない」
バカにされたと怒っている彼に、それでも冷静な様子で彼女は答えていた。
「そんなのが青い鳥なわけないだろう! バカにしているのか?!」
「バカになんてしていないわよ。正真正銘、これが青い鳥よ、蒼くんにとってのね」
「どういうことだ? どっちも、そこらへんで見つかるものだし、それに色を塗るだけじゃないか!」
「そうよ、蒼くんの幸せって、小説で賞を取ることでしょ? あなたに必要なのは、見つけることじゃないわ、作ることよ」
「どういうことだ?!」
わけが分からないという彼に、彼女はため息をつきながら答える。
「だって、賞を取ると息巻いておきながら、全部エタらせちゃってるじゃない。20本も書いておきながら1本も完結していないのよ?」
「そ、それは、ネタが良くなかったんだよ!」
「そんなことを言うけどね、作品を書き上げるなんて、まさに鳥の肉とペンキで青い鳥を作るようなものよ。それくらい当然のことなの。今の蒼くんは、そんな青い鳥すら手に入れられていない状態なのよ」
彼女の当然のような指摘に、彼は大きくうなだれた。
「ま、とりあえずは、規定文字数で一本書き上げるのを目指すことね!」
しあわせのかたち ケロ王 @naonaox1126
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