第2話
正直「メイドの入れ替わり」というのはそれなりにある。
それはもちろん「メイドの家庭事情」とか今回の様に「盗みなどの主人に対する態度」など色々あり、実際のところ「五年働けば一人前」我が家ではなっていたらしく、そのボーダーラインを越えられれば給金も跳ね上がるそうだ。
しかし、今回はなぜかメイドに限らず他の使用人たちもどことなくイリーナに遠慮……というか、恐れる様になった。
それはまるで「イリーナの機嫌を損ねたら辞めさせられる」と言っているかの様である。
――きっと辞めさせられる前にメイドの誰かが言いふらしたのね。
一応、両親が使用人たちの「主人」となっているものの、娘であるイリーナも彼らにとっては一人の主人だ。
正直そういった「言いふらす」という行動も「主人に対する態度」としては落第点モノなのだけど、それを言いふらした張本人は既にいない。
――せいぜい「こういう事をする人だ」と周囲の貴族たちに注意喚起するくらいしか手はないわね。
まぁ、そこまでする義理もないのだが。
しかし、どうやらそのメイドはイリーナが思っていた以上に使用人の中では評判が良く、また仲も良かった様だ。それこそ主人であるはずのイリーナ以上の信用を得るくらいに。
「はぁ」
――私はただ、泥棒をする様な人をそばに置いてはおけないと思っただけなのに。
それがいつの間にやら大きくなってしまっていたらしい。
今まで優しく話しかけてくれていた使用人たちは怯えた様な表情になり、どこか戦々恐々とし、イリーナを避ける様になっていった――。
――これって、私の言葉よりもあのメイドの話を信じたって事よね。
その事実にイリーナは心を痛めたけど、まだ小さいイリーナにはどうしようも出来ない。
「……」
――また、一人ぼっちって事ね。
周りの人たちからは「イリーナ様は他の同じくらいの年の子と比べると大人ですね」と言われる事があったけど、いくら考え方が大人っぽいとは言え、イリーナは正真正銘「子供」だ。
ただ、使用人たちはいてもこうした事で「結局頼れるのは自分自身」となった事により「大人にならないといけない」という考えに行きついた……ただの小さな子供だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……ふぅ」
――ここは……ここだけは何も変わらない。
いつもの様に家庭教師が来る時前に書物庫にいたイリーナは周りを見渡して小さく息を吐いた。
「ううん」
変わった事はあった。それはここ最近、やたらと両親がイリーナを外に連れ出す様になっていた……という事である。
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