第12話 馬鹿は三次元的には考えられない。
爆発痕は大きく残った。
「そういえば、先陣突っ込んでいったあいつは大丈夫か?」
私たちは爆発痕で彼を探し回った。
しかし、ゴブリンの死体が多過ぎて、探しても、探しても、見つかる気配がしない。
「これ、死んだ?」
「いえ、ユウトさんの
「あ、そうなの」
正直、あの大爆発に耐えられるわけないと思っていたのだが。
彼女の言葉を半信半疑でとりあえず置いておいて、ユウトの捜索を続けた。
すると、微かに「おーい」という声が聞こえた。
「なんか聞こえたぞ」
「へー。リリーナさん、耳がいいんですね」
とにかく、私たちはその声の方向に向かうと、丸焦げになった男がいた。
「あ、あそこにいますね、手、振ってますよ!」
「あ、うんうん。分かっているよ」
彼の姿は見るからに滑稽であった。
肌は灰で真っ黒。髪はちりちり。正直、よく生きていたと思う。
まぁ、そのギリ生きていた感に私たちは思わず、吹き出した。
「おい、無責任に俺に大爆発浴びせたくせに失礼な奴だな」
彼はご立腹だ。プンプンと剣を振り回している。物騒だ。
「危ないって………………」
私たちは彼の半径十メートルには近づかなかった。こうして、とにかくこの状況を切り抜いた。
*****
「でも、思えば、まだ迷子の状態ね」
「確かにそうですね」
何とか、この事態、打開できないものか。
「高いところから見ればわかりやすいかも」
ユウトの何気ないその呟きで私はあることを思い出した。
「あ、浮遊魔法」
「あー、浮遊魔法ですか!」
私とアーシャは目を見合わせた。
「じゃあ、リリーナさん!やっちゃってください!」
「ん?私、使えないよ?」
「え?魔法使いですよね?」
「うん、でも使えない」
浮遊魔法。一般の魔法使いであれば、誰でも使える初級魔法。しかし、私は使えない。
「アーシャは使えないの?」
魔法使いは使えるのは一般常識である。(私は使えないが)
しかし、僧侶が使えるとはあまり聞かないがどうだろうか。
「多分、使えると思いますよ。父上が魔法使いだったので」
うう……。まじかぁ……。後ろから、ユウトが笑っている気配がする。
魔法使いが浮遊魔法を使えなくて、僧侶が使えるとは、うう……。屈辱だ。
私は少しだけ泣いた。
*****
「では、空から見てきます……。久しぶりにするからほんとにできるか分かんないけど」
彼女が詠唱を唱えると、体がふわっと浮いた。
「じゃあ、行ってきます!」
「うん、行ってらっしゃい」
彼女は空のかなたに飛んで行った。
「リリーナ、お前も本気出せば、あれできるの?」
「どうだろう……。魔力は足りると思うんだけど……。あれは、子供の時に覚える魔法だから、子供と同じくらいの期間ではできないかな」
「子供の吸収力は侮れないからな」
この会話を空を見上げながらやっていた。
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