第10話 武器を買いま商。

 今日は出発の時だ。

 勇者を探す旅の出発の時だ。


「いや、一回帰ろうかな………………」


 私は気づかないうちに呟いた。


「帰るとはリリーナの家のこと?」

「あれ?聞かれてた?」


 私は思わず、驚いてしまった。まぁ、その分には別に良いのだが。


「いや、昨日、転送魔法のこと言ったじゃない?」

「うん」


 ちなみに、転送魔法の詳細な情報についてはしっかり彼には伝えてある。


「あの時使った転送魔法の魔法陣は家に魔法陣跡が残っているのよ」

「ほう、とすると?」

「それを使えばまた、その転送魔法が使えるのよ」


 彼はまた、頷いた。


「だから、転送魔法が使えるようになれば、旅がすごく楽になる」

「よし、帰ろう」


 彼は即答した。

 乗り気のようだ。


*****


 というわけで、一応の目標地点はリリーナ宅になった。アーシャには何かと理由をつけて、納得させた。


「では、行こう!新たなる旅へ!」

「あれ……。俺の装備、これでいいのか?」


 そうだ、ユウト、武器すら持っていなかった。


「……。とりあえず、これ使う?」


 私は彼に勇者の剣を手渡した。


「いいよ、それ重いもん。リリーナが持ってて」

「お前……。重いもん女に持たすってどんな神経してんの?」

「あと、勇者様が勇者の剣持ってなかったら、世間的にどうよ?」

「む……。確かに」


 納得させられてしまった。

 仕方なく、私は勇者の剣を背負う。


「じゃあ、武器防具屋行くか」


*****


「こんにちは~」

「おっ!勇者様じゃないか!どうした?なんかいるんか?」


 元気でマッチョな武器屋の店主が話しかけてきた。

 正直、暑苦しくて、うぜぇなと思うこともあるが気さくで話しやすい人物だ。


「お仲間の装備を見たいのかい?」

「うん、そだよ」


 あ、ちなみになぜ私がこんなに彼に対してこんな風に話せるかというと、この町にいる間に何かと話す機会があって、いつの間にか仲良くなっていたからだ。


「そろそろ旅立ちかぁ?」

「うん」

「寂しくなんじゃねぇか」

「まぁ、親父おやっさんなら友達いっぱいいるし、大丈夫でしょ」



 私と店主が笑いながら雑談してると、アーシャに「あの……。あと何分くらい続きます?」と言われてしまった。


「ああ、ごめんごめん、じゃあ、彼の装備が欲しいんだけど」

「分かった!……。しかし、何やら変な防具をつけてんな……。何だこれ?」


 ユウトは焦った様子を見せた。そして、彼は口パクで私にある言葉を伝えた。


「こ・れ・ご・ま・か・し・た・ほ・う・が・い・い・?」


 これ、誤魔化したほうがいい?

 私はその問いに対して首を縦に振った。


「ああ、これは父が譲ってくれたもので……」

「へぇ……。ちょっと見させてもらうな」


 店主は虫眼鏡のようなものを取り出して、その服を見た。


「防御力12500……。すげえなこれ、『伝説の鎧』くらいの防御力じゃねぇか!うちにはこれ以上の防具はねぇな」

「マジっすか」


 この布、そんなに強かったのか……。


*****


「武器はオススメがあるぜ」


 店主は我々を武器コーナーに案内した。


「色々あるけど何にする?」

「剣がいい、あと魔法を使いたい」


 彼は無邪気に答えた。


「そんなお前にはこれかな?その名も『ハイブリッドソード』」


 ハイブリッドソード

 剣士兼魔術師のやつがよく使う剣。

 剣としても使えるし、杖としても使うことが可能なのである。


「何それすごい」


 私は普通に感心した。私も欲しい。


「これが良いかな?」

「おっ、やっぱり気に入ったか、別に十分な魔力がなくても普通に剣としても強いから、やはりおすすめな一品だな」


 結果、このハイブリッドソードを買った。

 値段は結構した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る