4月8日「初めまして、」

6話

 ピピピピとうるさく鳴るアラームで目を覚ました。


 軽く伸びをすると頭がスッキリしたのか、今日が入学式だということを思い出して少し憂鬱な気分になる。


 あれから何回か外には出てみたけど、みみには一度も会えていなかった。

 当たり前といえば当たり前だけど、それでも見つからなかったという事実が残念でならなかった。


 普段予定がなければ外に出ようとしない私が積極的に外に出ていたことを思い出すと、みみに固執しているんだなと思う。


 階段を降りて洗面所に向かう。


 相変わらず広すぎる家で、ここに私1人しかいないと考えるとそれだけで気分が落ち込む。

 だけど今日は入学式で、しかも私は新入生代表。気合を入れなければならない。


 冷たい水を顔に当てると、まだ頭がふわふわしていたことに気が付く。


 顔を洗ったあとは足早にキッチンに行き朝ご飯のために冷蔵庫から卵とベーコンを取り出してフライパンに乗せる。


 少しすると食欲をそそられる香りがしてきて無意識に空いた手でお腹をさする。

 そこで食パンを焼いていなかったことに気づいて急いでトースターに入れた。


 しばらくして、出来上がった朝ご飯を持ってリビングに行きテレビの電源をつける。


 いつもどおりの面白くもないニュースが頭に入ることなく耳を通り抜けていく。


 テレビに表示された時間を見ると7時15分を過ぎた辺りで、時間がなくなっていることに気づく。

 急いで残っているパンにかじりつき、自室に戻って制服に袖を通す。


 私が今日から通うことになる聖怜悧女学園せいれいりじょがくえん、通称聖女の制服はロングスカートになっていて、足が見えないデザインになっている。


 なぜかと聞かれてもよくわからないけれど、清楚っぽく見せたいのかなと勝手に思っている。

 まぁ、私個人の意見として言わせてもらえるなら別に少しくらい短くてもいいのではと思うわけだけど。


 いつか生徒会長にでもなったら制服を変えようと心に決めて靴を履き、玄関のドアを開けて外に出る。


 空を見上げると入学式であることを歓迎しているかのような雲一つない青空とでも言えそうな空が広がっていた。

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