第3話 検証
午前5時、俺はベットから起き上がった。
何のためかって?勿論、俺の職業つまりは《傀儡師》の検証のためさ。
昨日のレイナさんとの会話で、無許可で教会の外に出るのはダメだと再認識したので、人目につかない早朝に抜け出すことにしたのだ。バレなければいいんですよ、バレなければ。
ベットを出た俺は、窓を開けて屋舎を飛び出した。教会の敷地の外に出るだけでもダメなのに、魔物の蔓延る、街の外に出てるなんて知られたらド叱られるだろうなぁ、なんて考えながら街の出入り口を目指す。
出入り口である門には傭兵が控えていたが、アイツらは大抵、門の隣にある建物でカードゲームをしているので抜けるのは容易い。無防備すぎるとは思うが、それで俺が助かっている以上、良しとしておこう。
「はい。突破成功!」
案の定、余裕で街を抜け出した俺は、近くの森林に向かう。流石にこんな早朝には、魔物の討伐を生業とする冒険者も見られないので、森はかなり静かだ。というか、この世界の住民は起きるのが遅いのだ。朝8時くらいに起きて昼前に開店する、なんて事もザラだ。勿論、全員がそうという訳では無いのだが日本で生きていた俺からするとどうも違和感が拭えなくて困ってしまう。
今日は、検証兼練習としてやっていこうと思っている。検証内容は《人形作成》の効果が及ぶ物質の区別だ。昨晩の検証でそこら辺に落ちている様な木の枝は《人形作成》の対象だとわかったのだが、残念ながら昨日は検証後の練習で魔力を使い果たしてしまったので、《人形作成》の本質を推し量れずにいたのだ。
念のため人目のつかない場所に移動した俺は、早速、《人形作成》を行使する。対象は………あの岩にしておこう。
「さて、木材は大丈夫だったけど石はどうだ?《人形作成》!」
すると岩がメキメキと音を立てて形を変えていく。
どうやら、石はスキルの範囲内らしい。
「次は、葉っぱでやってみよう」
俺が葉っぱにスキルを行使すると、葉っぱも形を変えた。葉っぱも範囲内だ。
それから俺は、目につく物全てに《人形作成》を行使していった。
魔力が半分程に減ったところで行使をやめた俺は、結果を整理してみる。
結果からいうと、実験から、『生物以外の物質はおそらくスキルの範囲内』という仮説が立てられた。岩や動物の毛、土などは対象だったとに対し、ネズミにはスキルは発動しなかった。この事から、生物はスキルの対象外であり、その生物の生理現象から生まれ、生物に密着している毛や糞なども同様に対象外だと思われる。
ただ一つ、懸念点として、土に行使した時に土の中の微生物も一緒に『土』として処理されたのだ。これを踏まえると微生物は生物としてカウントされないという事になるのだが、どうもその生物非生物の境界線が分からない。単細胞生物か多細胞生物かの違いか?と思ったりするが、ここら辺は要検証である。
それと、これは検証ついでにわかった事なのだが、魔力の消費は、スキルを行使する対象の硬度、及び魔力伝導率に依存しているようだ。例えば、葉っぱは硬度が低いので魔力消費が小さく、対する岩は硬度が高いので魔力消費が大きいという様な感じだ。
また、木の種類によって魔力伝導率は若干異なる事が判明し、同じ硬度、同じ体積でも伝導率が低い樹種に比べ、伝導率が高い樹種はスキル行使がスムーズにいく事が分かった。これはかなりの収穫だ。
―――ガサリ
「………ん?なんだ?」
俺が思考に浸っていると、すぐ側の茂みが揺れた。
すると、そこから姿を現したのは緑の肌をした小鬼のような生物だった。尖った鼻先に、羊のように横長の瞳孔、俺はその生物に見覚えがあった。
「……ゴブリンか?」
「ゴギャギャッ!」
正解だと言わんばかりに小鬼は襲いかかってくる。
「うん。やっぱりゴブリンっぽいな。……まあいい。ちょうど魔物の持つ魔石とやらがスキルの範囲内なのか、気になっていたところだ。」
ゴブリンは何やら叫びながらこちらに向かってきて、俺を捉えようとするが、それを交わした俺はあらかじめ拾っておいた2本の木の枝をゴブリンの両目に突き刺さした。汚い色をした血液が周囲に飛び散る。
「ギャギャ――‼︎」
「うっるさっ‼︎」
ゴブリンは、しばらく俺の耳元で金切り声をあげていたが、やがて動かなくなった。
「死んだか?」
人型の生物を殺すのになんの抵抗感も感じないのは、レヴィという少年の世界観が影響しているのだろうか。少なくとも生前の俺じゃあ出来なかったことだな。
そんな事を考えていると、頭の中で音がなった。
「これは……レベルが上がった音か。ステータス!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
《レヴィ•マドラ》 Lv.1→3
年齢:7
職業:傀儡師
スキル:人形作成
HP :35/35→/46
MP :7500/14570→/15681
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「レベルが2つあがったようだな。HPもMPもレベルと共に上がるのか…。」
ゴブリンの1匹程度なら俺でも倒せると分かったところで俺は、ゴブリンの胸の中にあるであろう魔石を取り出すべく、尖った石先でゴブリンの腹を掻っ切った。勿論、血まみれになる事が予想されたので服は着ていない。遠くから見ると蛮族みたいなので急いで魔石を取り出す。
「おっ?これっぽいな!」
見つけたのは3センチほどの小石。赤黒く光るそれは日光に当ててみると、光の通し具合にむらがあり、決して高品質とは言えない。が、魔石である事には変わりないので俺は早速スキルを行使してみる事にした。
すると、歪な形をしていた魔石は綺麗な球体へと変わった。
「魔石もスキルの範囲内という事か」
魔石の場合も、恐らく品質に完成型が左右されるのだろうが、見た感じ、強度が段違いに高そうなので普通の素材に比べて使用用途は幅広そうだ。まあ、その分入手も困難なのだが。
太陽がのぼり始めたので、その日はゴブリンの魔石を手に帰る事にした。今日で、ある程度の《人形作成》についての見解は得られた。
「明日からは人形の作成に移ろうか。」
作者「誤字の量がやべぇぇぇ!」
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