口癖
星之瞳
第1話
「はあ、はあ、遅くなっちゃった。全くこんな時に事故が起きるなんて」
俺は今日彼女とデート。なのに電車が事故で遅れてしまった。ラインで知らせたから待っていてくれると思うけど。俺は急いで待ち合わせ場所に向かっているところだ。
「あ!やっと来た。お疲れ、事故大変だったね」待ち合わせ場所に彼女が待っていた。
「とりあえず、あのベンチに座りましょうよ。息整えないと」
俺はありがたくベンチに座った。
「とりあえずこれ飲んで」彼女は俺にスポーツ飲料を差し出した。
「ありがとう。喉乾いてたんだ」俺は栓を開けごくごくと飲み干した。
「事故の事ネットニュースに載っていたし、あなたからラインも来たからとりあえずここで待っていればいいかと思って」
「これからどうする?」
「う~ん、時間がずれちゃったから、あまり遠くには行けないね。事故の影響も残っているし、とりあえず、ご飯にしない。待っていたらおなかすいちゃった」
「解った、そうしようか。どこで食べようか?」
「ネットで調べてみるから、ちょっと待っててね」
彼女はスマホで検索を始めた。その間俺はスポーツドリンクを飲みほした。
「う~ん。イタリアンに、お寿司、中華、いろいろお店はあるのよね。何食べたい?」
「変わったところで中華なんかどう?」
「いいね、とりあえずこの店にしようかな。シェフが台湾の人だって」
「そうか、それならそのお店にしよう。俺も落ち着いたし行こうか」
「うん」
俺たちは連れ立って中華のお店に向かった。
「中華金華。ここよ。入りましょう」
「いらっしゃいませ、2名様でよろしいでしょうか?」
「はい」
「ご案内しますこちらにどうぞ」
俺たちは店員の案内でテーブルに着いた。メニューを見て何を頼むか考えた。
「注文はお決まりですか?」店員が水とおしぼりを運んできた。
「わたしは、とりあえず、フカひれスープとチャーハン」
「俺は、フカひれのスープと、エビチリ。ごはん」
「承知いたしました。しばらくお待ちください」
「ねえ、とりあえずって、あとで何か頼むつもりなの?」
「え!そんなことないよ。おなか一杯になるだろうし」
「そしたらさ、『とりあえず』っていちいち言うの止めない。なんか聞き苦しいっていうか、店員さんも又注文するって誤解すると思うよ」
「私そんなにとりあえずって言ってる?」
「ああ、口癖みたいになってるな。居酒屋に行って『とりあえず生』ぐらいならいいけど、あまり使わない方がいいと思うよ」
「解った。気を付けるね。とりあえず」
「ほら、又言ってる」
「やだ、本当。これは気を付けないと」
料理が運ばれてきて、俺たちは食事を楽しんだ。彼女の口癖は・・・。治らなかった。
口癖 星之瞳 @tan1kuchan
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