第3話 秘められた絆、露わになる心
朝日が渚王国の静かな村を照らし出す中、ピットは教室の前で深く息を吸い込んだ。夜の活動が終わり、再び教師としての彼の日が始まる。しかし、この朝は少し違っていた。今日は、国王である彼の兄、渚大治郎が学舎を訪れる日だった。
学舎には緊張が走る。王国の国王が訪れるというのは、この小さな村にとって非日常の出来事だった。しかし、ピットにとって、この訪問は兄としての大治郎との珍しい再会でもあった。
大治郎の到着と同時に、学舎は厳かな雰囲気に包まれた。しかし、ピットと大治郎が対面すると、そこには王国の重責を担う兄弟の深い絆が感じられた。公の場ではありながら、二人の間には言葉以上のものが流れていた。
授業が始まり、大治郎は後ろの席で静かに様子を見守る。ピットが生徒たちに向けて語る言葉一つ一つに、大治郎は優しい笑みを浮かべた。彼は、ピットがどれだけ教師として、また人として成長したかを感じ取っていた。
授業後、二人は学舎の裏庭で少しの間だけ私的な時間を持った。そこで、大治郎はピットに深刻な表情で話し始めた。「君の夜の活動が、王国内で少しずつ噂になっている。気をつけてくれ。君がどれほど強くても、一人で背負い込む必要はない。」
ピットは黙って聞いていた。彼は、自分の力が周りを危険にさらすかもしれないという恐れと、国王の弟としての役割に対する責任感の間で揺れていた。しかし、兄の言葉に、彼は深い安堵を覚えた。自分は一人じゃない。家族が、そしてこの国が、彼を支えてくれている。
大治郎が去った後、ピットはひとり学舎の裏庭を見つめる。夜の討伐人としての彼、教師としての彼、そして国王の弟としての彼。これらすべてが彼を形作る一部であり、それぞれが彼の重要な使命であることを再確認した。そして、どんなに運命が彼を試そうとも、彼はそのすべてを受け入れ、前に進む決意を新たにした。
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