第5話 ぼっきんきんになってる?
「なんでこんな事になるんだよ」
女王陛下との謁見を終えた後、しばらくの間、俺は王都に滞在することになった。
その理由は、俺のレベル上限が999であるにもかかわらず、現在のレベルが1ということにあった。
つまり、あまりにも弱すぎるというわけだ。
そんなことを言われても、俺の金玉に魔力が宿ったのはほんの一月前のことなんだ。
しかし、母によれば、アイリスのレベルは既に2に達しているという。
俺が
というのも、今から4年半後には、アイリスには聖騎士学校の受験が控えている。
貴族の令嬢であれば、聖騎士学校に通うことを目標に掲げるのは当然である。
聖騎士学校の卒業生というだけで、社交界では一目置かれる存在となる。しかし、聖騎士学校に通えなかった令嬢には、過酷な現実が待ち受けている。
この世界では、力のない令嬢には居場所がない。
次女であろうが三女であろうが、強い者が家督を継ぐ。弱者は家を追い出されるだけなのだ。
しかし、強ければ聖騎士団に入団することができる。
例え家督を継げなくても、聖騎士の称号を得れば平民落ちすることはない。さらに、聖騎士団で活躍すれば、陞爵することも可能なのだ。
過去には聖騎士として活躍し、伯爵にまで上り詰めた猛者もいる。
アイリスはひとりっ子なので、家督を継ぐことがすでに決まっているが、向上心に満ちた巻き貝婦人が、男爵の位で満足するはずもない。
アイバーン家は元々商家の出身だったらしいが、あの巻き貝婦人が一代で爵位を得て、小さながらも領地を手に入れたのだ。
そう考えると、たった一か月足らずでアイリスのレベルが2になったというのも納得できる。
恐るべきは巻き貝婦人だ。
「もう音を上げるんですか? そんなことではせっかくの大きな金玉が泣いていますよ」
「金玉がっ……泣くかッ!」
我が家はアイバーン家のように指南役を雇う金銭的余裕はない。
しかし、それではせっかくのレベル上限999も宝の持ち腐れ。
そこで、マキュレイが俺の指南役を買って出たのだ。
もちろん俺は断った。
すると、マキュレイは俺に、一人でレベルを上げられるのかと聞いてきた。
当然、俺はレベルを上げるつもりはないことを伝えた。
エロゲの主人公はレベルを上げれば上げるほど、たくさんの女の子と肉体関係が持てるので、率先してレベル上げを行っていたが、俺は女の子に興味がない。
そんなくだらないことをする暇があるなら、無防備なトーマと水浴びをしていたい。
しかし、俺の願いはすぐに却下された。
その理由は明らかだ。
なぜなら、今より5年後、この世界に魔王が復活するからだ。
ゲーム内でのアレン・マイヤーの主な役割は、聖騎士学校に通う聖騎士候補生たちのレベル上限を突破させること。
そして、いずれ軍やパーティを率いて魔王軍と戦わなければならない。
そのためには、俺自身がレベルアップする必要があるのだ。
レベルが低すぎると、金玉に溜まる魔力の量は少なく、質が悪くなってしまう。
それでは小さい金玉の連中と大差ない。
ベケス王国の国民として、持てる力を最大限活かすのが国民の責務だ。
女王陛下にそう言われてしまえば、断ることは不可能だった。
「よし、今日の修行はここまでにしましょう。泥だらけになってしまいましたねよし一緒にお風呂に入りましょうそうしましょう」
「ちょっ、ちょっと!?」
赤ら顔のマキュレイに腕を引かれ、あっという間に脱衣所まで連れてこられてしまった。
「何をするんだ!」
「何って……服を着ていてはお風呂に入れないでしょ?」
「だ、だからってどうしてマキュレイまで服を脱いでいるんだよ!」
「わたしも汗をかいてしまいましたから」
「別々に入ればいいだろ!」
「嫌ですね。子供なのに照れているのですか? それとも……」
ぐっと顔を近づけてきたマキュレイが、いやらしく微笑みながら、
「ぼっきんきんになっちゃいますか?」
小声で信じられない言葉を口にした。
それが10歳の子供に向かっていう言葉か!?
信じられないセクハラ女である。
「そんなわけないだろ!」
お前の裸なんか見たところでこれっぽっちも反応するもんかと、俺は堂々とパンツを脱ぎ捨て、浴室に入っていく。
「あら……残念。ま、まだ10歳ですからね。もうしばらく我慢ですね」
言ってろ。
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