いつもの。

もちっぱち

居酒屋

真っ暗な夜空に輝く星が見える。


毎日の都会の喧噪の中に吸い込まれながら

週末のストレス発散に2人のスーツを着た男が青い暖簾をくぐった。


ひょっとこのイラストと筆文字で

書かれた文字が白で描かれている。


ここは大衆居酒屋。奥には個室もある。

カウンターには筆文字で

お酒とつまみメニューの札が

垂れ下がっている。


壁には今流行りの

メロンクリームソーダのチューハイと

いちごクリームソーダのチューハイの

イラストが可愛く描かれている。


今の若い女子には人気なのだろう。


「先輩、個室にしましょう。」


「空いてるのか?」


奥から店員が小走りでやってきた。


「いらっしゃいませ〜。

 お客様は2名様でよろしいでしょうか?」


「はい。そうです。

 すいません、個室空いてますか?」


「大変申し訳ありません。

 ただいま個室は満室です。

 カウンター席なら空いておりますが

 よろしいでしょうか?」


「まぁ、仕方ないですね。

 カウンターでお願いします。」


「ご案内いたします。」


店員は威勢のいい声で

「お客様ご来店です!」


「「「いらっしゃいませ」」」


ホールやキッチンの店員たちが続けて、

声を上げた。

活気のあるお店は、

たくさんのお客で賑わっている。


カウンター席に着くと目の前でステーキを焼く店員が見えた。お肉のいい匂いがする。


「メニューが決まりましたら、

 お手元にありますタブレットにて

 ご注文くださいませ。

 おしぼり等はこちらに置きますね。

 ごゆっくりどうぞー。」


 店員は、近くにおしぼり、

 カントラリーを

 置いた。別な店員が続けて、

 お通しを2つ置いていく。


「本日のお通しは、

 もつ煮込みとなります。」


「お、うまそ。

 森坂、早く注文するぞ。」


「ですね。

 このタブレットからだから。

 先輩、とりあえずビールでいいですか?」


「森坂、若いのにビールでいいのか?」


「いやいや、よく言いますよね。

 とりあえずビールって。」


「もうそれは古い。

 コンプライアンス的にアウト。

 強制的だろ。パワハラになるって。

 なんでも好きなもので良いんだよ。

 俺、ビール好きじゃないし。」


「マジっすか。

 この間、職場の飲み会で

 注文してませんでしたっけ?」


「あー、あれはお堅い社長様には

 逆らえないからねー。」


「先輩、社長に言いたいことたくさん

 ありそうですね。」


「……えっと、ハイボールと

 フライドポテトと焼き鳥かなぁ。

 あと、マルゲリータもいいな。」


 先輩は、タブレットのメニューを

 ポチッとタップした。

 だが、焼き鳥メニューは売り切れという

 灰色の文字で注文ができなかった。


「ちぇ…今日は焼き鳥品切れかあー。

 週末だもんな。

 にあえずってか…。」


「先輩、それどういう意味ですか?」


「さっき言っただろ。

 ビールって。」


「あー、そういうことっすね。」


 森坂は苦笑する。先輩はおどけて見せた。

 好みのお酒やメニューの注文を

 終えた2人は、すぐに運ばれてきたお酒で

 乾杯をした。


「今日もお疲れ!!」


【 完 】


 

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いつもの。 もちっぱち @mochippachi

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