四十 熾火こそ熱く その二

「ふきゅっ!」



「驚かせちまったか、ゆき」

「く……は…い、今のは、その」


 自分の喉から漏れた声に羞じて、胸の奥から耳の後ろまで、熱感が走る。十兵衛は、篤実が子供のような声を上げたことを笑わなかった。

 それが、嬉しくて、恥ずかしくて、愛おしくて。いっそ苦しい様にも感じてしまう。


 は、は、と胸が弾んで呼吸が速くなった。


 十兵衛の指が太腿をじわじわと上がって、尻と足の付け根を揉む。目の前に聳え立つ、赤黒く太い剛直に釘付けになりながら、篤実はこの先の快楽を反芻していた。


「……儂も、これいじょうは」


 堪えるような十兵衛の言葉を聞いた途端、篤実は口を開けて眼の前の熱を口に含んだ。


「んぶっ」

「くっ、あ……!」


 十兵衛が呻き、尻を揉む指の力が強くなる。張りのある筋肉の上に柔らかな肉が乗ったまろく柔らかな肉は、太い指が食い込んでむちぃ、とゆがむ。双丘のあわいに有る後孔も、内側から溢れ出す熱に疼いていた。


「ん、う… んううぅ じゅうべえひゅうええ


 篤実の視界では、膝を立てた十兵衛の太く固い腿がびくびくと戦慄いていた。膝頭に突き出す骨の尖りを包み込むような、大きな腿の筋肉。それがぎゅうっと縮こまり更に太くなる度、口の中の雄もビクリと揺れて蜜を出す。


「ん……はぅ……は…おいひぃおいしいもっひょもっと


 音を立ててものを啜るほど頭が熱くなって、口の中だけでなく背筋まで痺れるように悦くなっていく。


「ゆきっ……ッ…くあ…!」


 篤実は手も使い、十兵衛の急所を撫でる。しっとりとした皮の下に、ずっしりと詰まった子種の固さを感じながら、口の中で上顎を擦る、きっさきの存在感に恍惚としていた。


 十兵衛が、喜んでいる。


 尻を揉む指の強ばりも、頭の芯に染み込む十兵衛のにおいも、篤実の齎す刺激に彼が反応している証と思う。


「ふぅっ、んっ」


 臍の裏の辺りが、キュウと疼く。


 口の中には、水っぽい唾液が溢れ出す。


 篤実は掴まれた尻を獣のように揺らめかせると、十兵衛の剛直を深く頬張った。


「ゆき…無理をッ――するんじゃ…ッ」

「んあっ」


 このままでは、己のものが喉まで突いてしまうのではないかと怖れた十兵衛が、腰を逃がした。

 固く弾む砲身の先端が、ぶるんっと音を立てる勢いで篤実の唇に引っ掛かりながら引き出される。


「はっ、あ……じゅうべえ じゅうべえ♡」


 あまりにも執着する篤実に、十兵衛は眉根を寄せた。しかし股座の獣慾が今更収まるはずもない。篤実の唾液と、体液に濡れた昂ぶりは外気に晒されて尚、熱く、根元にどろりとした欲を溜めて疼いていた。


「……ゆき、落ち着け」


 しかし十兵衛も十兵衛で、篤実の尻を握り締めた手を緩める気配は無い。親指が尻双丘のあわいをなぞり、やがてふっくりと温まった菊座を撫でる。


「んっ、く……ふっ ぅ」


 ぶるっと篤実が大きく身体を震わせた。篤実の足の間から揺れる陽物から、先走りが糸を引いて、十兵衞の胸へと垂れた。篤実からすれば座布団のように大きな十兵衛の胸板を跨ぐ太腿が、ビクビクと震え出す。


「じゅ、うべ……また…出て、しまう…こんな、ところで……止められたらぁ」

「ッ――――!」


 その言葉を聞いて、十兵衛はガッ!と乱暴に細腰を顔の前へと抱き寄せた。大きな、獣の口吻を開き、小振りな篤実の陽物を迷うことなく口に含む。



「ひうっ ン あ、あ゙ッ♡」



 十兵衛の腕から篤実が抜け出せるわけもない。熱い口中に主君の陽物を迎え、長い舌を巻き付かせ、吸い上げる。


「は あ、や―― ぁ!」


 熱い口腔に含まれ力が抜けてしまったのか、十兵衛の身体の上に篤実がへたり込む。さらに緩んだ瞬間を待っていたかのように、十兵衛の指が篤実の肉壺に、にゅく、と潜り込んだ。


「ひっ あっ♡ へあ、へうぅ!」


 脊髄から額まで火が点いたように熱く、篤実の目尻には涙が滲んだ。快楽に、足の裏まで勝手にピクピクと震え、後孔ははくはくと蠢いて十兵衛の指に吸い付く。

 一方で十兵衛は牙の並ぶ狼めいた口腔にて、口吸いの時と同じように、傷一つ付けぬ柔らかな動きと、柔軟な舌を執拗に纏わり付かせて、篤実を味わう。


「ふ、う――」

「はへ、えっ……ひっ ぉっ♡」


 十兵衛の僅かな呻き声も、指の存在感も、篤実を煽り立てた。普段は白い肌が火照り、桃色を帯びる。

 火造り最中の真っ赤な鋼が如き、十兵衛の雄槍が篤実の前にそそり立つ。猫のように尻を揺らし、腹を十兵衛の身体に擦り付けながら首を伸ばすと、再び鋒を口に含んだ。


「んぅ、ふ♡ う」


 ぞくぞくぞく――――ビクッ! びくんっ!


 背筋を走り抜ける、甘く、焼けるような快楽の火花。


「ふうぅ むぅ ふううぅ〰〰〰〰!」

「ッ――! うぐ」


 腹の奥から尾てい骨が、きゅんきゅん疼き、下半身が溶けてしまうかの様。太腿に力が入らなくなり、快楽、そして脳が融ける多幸感が脳に刻み込まれ、篤実は涙すら溢しながら頬を窄め、しゃぶり上げた。



「ッは あッ――――〰〰〰〰‼」



 十兵衛の肉槍から噴き出した熱い物が篤実の口腔を粘つきながら広がり、白く染める。十兵衛から篤実がどのような表情で熱を啜っているのか知る術は無い。が、頬裏肉と舌にぴったりと密着されて、唇の輪はキツく窄まっている。


「ゆ、き……ッ」


 たまらず、篤実の陽物から十兵衛が口を離して呻いた。記憶の中の若武者が、今、どんな表情でいるのか。罪悪感を抱きながら、水鉄砲のような勢いで衝動の飛沫を噴き上げる。


「ん、くっ…――はぁッ……♡」



 ご――くんっ。



 そう、篤実が喉を鳴らす音も、十兵衛の耳が聞き逃す筈無かった。

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