第12話 ユニークスキルは華

【前回までの『女神さま』(仮題)のあらすじ】

 女神(俗名ラム・ウ)は、エテア・サキユと命名した青年を英雄に仕立てて伝説を打ち立て、女神の地位を確保しようとしていた。ラムは2年以内に伝説が打ち立てられないと女神の地位を失う。

 ラムはエテアと話しているうちに、エテアに協力してもらって自力で伝説を作ることになる。彼女はエテアの前世の世界の情報を頻繁に得ているようである。

 エテアはラムから爆発力のチートを授かる。ラム自身は索敵や探知や分析などを担当するチートを取得する。

 まだ場所はエテアを転生させる前の世界の狭間の亜空間である。

 ふたりだけで相談していたが一旦は魔王もまじえて今後どうするか話す。

 追加パーティメンバー、戦士のノーク・ヤマケと白魔法使いリヌル・ヲワカも参加し、議題はノークのキャラ付けとなっていた。



「一旦登場人物整理しようと思う」

 俺はコロニスにノートパソコンの画面を見せながら説明する。


ノーク・ヤマケ

 主人公。戦士。

 気さくでいい人らしい。

 あらすじにあるように彼のキャラ設定を話し合っている途中である。


エテア・サキユ

 女神によって主人公予定で召喚された青年。大阪人。

 流れで主人公と一人称「俺」をノークに譲ることになる。

 案外気は使えるが急にメンタルが不安定なところがある。

 船場言葉に近い大阪弁を話す。


ラム・ウヰ

 女神。現状は女神だが、冒険が開始するときには受肉され一旦女神の地位と能力は失う。

 ラム・ウヰは地上に降りたときの彼女の仮の名前であるが、便宜上まだ地上に降りる前の現時点でもラムと呼ばれる。

 ボケたがりで下ネタもたまに挟んでくる。


リヌル・ヲワカ

 白魔法使い。

 頭悪げな喋りをするが聡明な女性。

 黒魔法使いに対しては変な敵意と偏見を持っている。

 青銅色の髪というのは忘れそうなのでここにメモしておく。


魔王ウジェシカ

 たぶんしばらく出番がない魔王。現状の予定としてはラスボス。

 彼とは根回しができてるので「魔王を倒す」ことはそんなに困難ではないはずだが。あんまり困難でないと伝説にならない問題がある。



「なるほど。あらすじとキャラ紹介があればだいたいの流れがつかめますね」

 コロニスがノートパソコンのモニターを眺めながら言う。

「まあ流れも何もずっとコントか雑談を続けてるだけのような気がするけど。そういうのでいいと思ってる。ちゃんと小説としての物語は期待せずに掛け合いを楽しんでもらえる人に読んでもらえたらなぁと」

「そういうジャンルってあんまりないから、需要を掘り起こせたら人気出るかもしれませんよ」

「出るかなぁ。こういうのは水物なんで期待せずに地味にがんばる」

「無理ない程度にやってください」

「そう。毎日更新したほうがPV伸びるんはずなんやけど、毎日更新するとなると多分毎日3時間くらいはキーボードに向かってないといけない。まあいっぺん一週間くらい毎日更新してみようかとは思う」

「根詰めて急に我に返ってやる気なくさないようにしましょうね」


「あと。スマホの読者が少ないので、もうちょっとスマホで読みやすいレイアウトとかどうしたらいいんかなと。今回ここで空白行入れてみたけど」

「改行とか空白行増やすとかですかね。あんまり多いと逆に読みにくくなることもありますしね」

「そのへんどこかで説明してないかな」




     ▼



「そんなわけで。ノークのキャラ付けの続きですわな」

 船場言葉イントネーションでエテアが進行をする。

「スキルは大事だよな。主人公だったらなんか独特なユニークスキルとかあるといいと思うんだ」

 ノークはちょっと目を輝かせている。異世界ファンタジーでのユニークスキルは物語の華といえる。

「ユニークスキルってぇことはぁ独特で当たり前なんじゃあないんですかぁ?」

 リヌルが疑問を挟む。

「はい。ユニークスキルというもんは、その世界ではひとり持ってるか持ってへんかくらいなんですが、数多あまたのフィクション作品の中でもあまり見かけないユニークスキルとなると、そうそうあるもんやないんですよ」

 エテアが解説する。ちなみにこの話はエテアが元の世界で読んだ小説などから得ているユニークスキルに対する見解である。

 この見解をラムがしれっとこちらの世界設定に組み込むのである。


「他のみんなはどんなスキルとか能力を持っているんだ?」

 ノークがあとの三人に訊く。

「10ギガトンの爆発力」

とエテア。

「白魔法でぇす」

とリヌル。

「賢者です」

とラム。


「賢者ってなんですか」

 ノークがラムに訊く。ノークはラムが女神だから敬語になるのである。信仰心はある。


 賢者。

 辞書的には「賢い人」のような意味である。

 異世界ファンタジー系では、魔法使い系の上位職とされることが多いが、作品によって扱いが違う。

 ラムの持っているスキルは賢者セージ盗賊シーフを合わせたようなスキルである。

「索敵、検索、罠解除、鑑定、観測手スポッターなどですね。盗賊シーフの能力になる部分もありますがあくまで魔法力的なもので処理しますから盗賊シーフ的なフィジカルは期待しないでください」

「賢賊って名乗りますぅ?」

 リヌルが『賢者』と『盗賊』を合体させた名称を言う。

「わかりにくいですよ。それって賢い略奪者みたいに解釈されそうなのです」


「フィジカルが優れてるんはこの四人の中ではノークだけになりますな」

 エテアがノークを見る。

「おう。腕っぷし担当だな」

 右拳を軽く上げるノーク。

「なんとなくぅ、だまされやすいお人好しキャラのようなぁ雰囲気しますぅ。ノークさん」

「そう、かな?」

 ノークは意外そうな顔でリヌルを見る。

 本人の意識してないところの客観的な見方でもキャラクターというものはできていく。


「そろそろノークのスキル、決めていこと思てます」

「持ってる剣が聖剣とかぁ魔剣とかですかねぇ」

 リヌルが言う。

「持ってる武器がキャラクター性に影響あるっちゅうのはありますけども。ひとまず本人の肉体か精神に紐付いたスキルがええと思いますわ」

「うーん。腕に仕込み銃とか」

 ノークは左腕を前に突き出して右手を添える。左腕を銃に見立てたジェスチャーである。

「えーと。わてが左手から爆発力を発射できるんで。あと右耳の穴からも出せるんですわ」

 若干言いにくそうな口調のエテア。

「あー。割とありがちな上にかぶったらまずいよなぁ。しかも耳からも出るっていうのに勝てる気がしない」

 肩を落とすノーク。それから少し考える。


 1分くらい経った。

「左手の薬指がだ」

 ノークが左手を挙げる。

「左手薬指とはぁ、割とオーソドックスですねぇ」

 結構指輪を左手薬指にはめるのは、そこが心臓と強くつながる血管があるという説からである。左手薬指にスキルが備わるのは右耳の穴よりは説得力がある。

「左手の薬指だけ黒いんだ」

 ノークが続けて言う。

 言った直後、その薬指が黒く変色した。

「お。黒なった。会議するだけで変化するんやね」

「そういう会議ということです」

 ラムがボケもせずに言った。

 ちなみに背景にはこれまで話しているログが空間投影モニタに流れている。『そういう会議ということです』って文字列が最新になっている。


「この薬指については謎の人物が俺に与えたもので、その理由はまだわかってない」

 短時間で考えたのでまだ深掘りはできていないのであった。

「おーだいぶキャラ立ってきたんやないですか」

「薬指からぁ何か発射するとかですかぁ?」

 だとするとエテアの爆発力発動とカブる。

ここ薬指から武器に謎のエネルギーが注入されるとかどうかな」

 手元のビール瓶を剣に見立てて構えるノーク。

 忘れているかもしれないが、彼らは焼き肉テーブルを囲んで話し合っているのである。

「ええね。そのエネルギーを注入するための専用の剣がいるんかな? その前に武器は剣でええんかな?」

「うーん。だいたい主役は剣なんだが、いっそ、突撃系必殺技がメイン必殺技でいいんじゃないか」

「となると変形?」

「そうそう。エネルギーで体を包んで突撃する」

「その核がこの薬指」

「まとめると。ノークの左手小指は黒い。そこには謎の力が宿ってて、手にする武器を強化する。短時間ならその能力を最大限に発揮して全身を包んで敵に突撃するなどの攻撃もできる、と」

 エテアがまとめる。

「まあもうちょっと詳しく設定していく必要はあるが、初期段階ではそんなものでいいか」

 ノークはほっとしたようにビール瓶を置いた。

「本人突撃する必要はないんじゃあないですかぁ? エテアさんが爆発力飛ばせるんでしょぉ?」

「……あ、そうか」

 ノークはうつむく。

「それでもまあユニークスキルとしては成立しそうなんで突撃以外の運用方法考えていきまひょ」

 会議は続く。



     ▲



「ほら。一応ノークが主役になるように展開してる」

「してますけど。まあだんだんキャラが成立していく流れとして面白いのかも」

「うん。書いてる本人はどこが面白いのかあんまりわからなくて。とりあえず書き続けていくことが一番大事だと思ってる」

「そうですね。書き続けてください。わたしは緩く応援してます」

「読者がどういうものを求めてるかとか考えたりもするけど、それだとベタを書ける必要があって」

「ベタって、テンプレとか王道展開とか言われるやつですね」

「そう。それが書けんからこんなことになってる。女神も『ベタでいいのです』って言ってるのに。ベタだから書けるってことはないんよ。ベタをちゃんと書ける人はそれはひとつの才能なんよ」

「どこに向かって主張してるんですか」

「読者。

 俺がベタを書けない理由もこうして書き続けていたら解明していくかもしれないとちょっとだけ期待してる」

「じゃあなおさら立ち止まらずに書き続けてください。その答えは出なくても別の何かが見えてくることはきっとありますよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コロニスといっしょ 第二部 長編制作紆余曲折篇 鐘辺完 @belphe506

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る