第11話 ノークのキャラ設定

【前回までの『女神さま』(仮題)のあらすじ】

 女神(俗名ラム・ウヰ)は、エテア・サキユと命名した青年を英雄に仕立てて伝説を打ち立て、女神の地位を確保しようとしていた。ラムは2年以内に伝説が打ち立てられないと女神の地位を失う。

 ラムはエテアと話しているうちに、エテアに協力してもらって自力で伝説を作ることになる。彼女はエテアの前世の世界の情報を頻繁に得ているようである。

 エテアはラムから爆発力のチートを授かる。ラム自身は索敵や探知や分析などを担当するチートを取得する。

 まだ場所はエテアを転生させる前の世界の狭間の亜空間である。

 ふたりだけで相談していたが一旦は魔王もまじえて今後どうするか話す。

 追加パーティメンバー、戦士のノーク・ヤマケと白魔法使いリヌル・ヲワカも参加し、話し合いが続く。



「主人公はノーク・ヤマケなんですね」

「うん。そのために今回はノークのキャラ付けについてみんなで話し合う内容になってる」

「話し合う。ずっと話し合いしてますよね」

「そういう話なんよこれ。多分冒険に出るのが決まった時点で完結やないかなと思ってる」

「読者には受け入れてもらえるんでしょうか」

「さあ。こういうノリのがあってもいいと思うけど。一応、PVは意外とついてるんで。続けてるうちにPVがつかなくなったらやめどきかなと思ってる」

「やめどきになったら打ち切り的に最終回ですか」

「第二部完にして、仕切り直してまた別作品で第三部開始するよ」



     ▼



「話を戻そ。俺はあんたをノークと呼んでええか」

 エテア・サキユである。

「ああ。気軽に呼んでくれればいい」

 ノーク・ヤマケ。とりあえず気さくなやつという設定にはなっている。

「まだ大阪弁キャラなのが慣れてないというか、普段から大阪弁やったけどこっち来てから仮にも女神を相手にしてたんで丁寧にしゃべってたもんでしゃべりかたが戻らへんで」

「それはともかく俺のキャラ付けは」

 ノークを主人公にしようという話になっているが本人がまだキャラが確定していないのである。


「一人称が『俺』なのはエテアとかぶるし、独自の一人称で自分のこと呼んだほうがええんちゃうかな?」

 エテアがノークに言った。

拙者せっしゃとかそれがしとか吾輩わがはいとかはいやだな」

「じゃあノークって一人称は?」

「自分の名前呼ぶのは可愛いキャラ専用だろう。ノークはちょっといかつい系キャラでいきたい。別に怖い人じゃないけどカッコイイ系がノークはいい思うぞ。ほらなんかキャラおかしくなってきてる」

「あんまり線が細いわけでもないんよな。かといってがっつりマッチョというわけでもない」

 エテアはノークの体型を眺めてつぶやいた。

 ノークは両腕をあげてポーズをつけた。昔の巨大ロボが起動したときにやってた系の。ボディビルでいうダブルバイセップスというやつである。

「そう。ナチュラルに戦士として必要な筋肉をつけてるからな。どこにでも筋肉付けるとかえって邪魔になることもあるから」

「あー、ボディビルダーの人とか脇ちゃんと締まらないっていうし」

「体の可動に邪魔になるビルドアップというのがあるから俺は必要なところに筋肉つけていらないところはむしろそぎ落とすぐらいの気でいる」

「この世界にぃボディビルダーはいるってことですねぇ」

 リヌル・オワカがツッコむ。

「いますよ。プロテインもあります」

とラム。

「話ややこしくしてへん?」

「いいんですよ。プロテインがあるかないかとか本題と関係ないのですよ」


「あのぉ。議長決めてぇ、発言する人は挙手するようにしてはどうですかぁ?」

 リヌルが小さく手を上げて言った。

「えーと。『議長』って言って手を上げた人に『リヌル君』て議長が名指しする形式ですか」

 ラムが訊く。

「そこまで厳密じゃなくてぇいいんですけどぉ。話が横にそれたときに戻しやすいんじゃないかぁとぉ」

「じゃあ議長は俺でええんかな?」

 エテアが言った。これは主張が強いのではなくむしろ消去法で自分がやることになると判断したのである。

 ラムは『女神は女神なのです』な人だし。ノークは主人公前提ならむしろ意見を出す側でないといけない。リヌルはあのしゃべり方は議長に向いていない。

 その『ええんかな?』もリヌルに向かって言っている。彼女は口調こそ議長向きではないが、本人はやる気があるかもしれないので確認しているのである。

「問題ありませぇん」


 ラムは議長とか面倒くさくてやりたくないので何も言わないので議長はエテアにあっさり決まった。


「じゃあ俺が議長で。意見ある人は手を挙げるということで。

 手を挙げへん人にも意見を求めることがあるんで」

 エテアの言葉にリヌルとノークはうなずく。

「はい」

とラムが手を挙げる。

「どうぞ」

 議長エテアがラムの発言を許可する。

「ボケるときも挙手するのですか」

「うん。まあ、ボケるタイミング大事なときあるんでそのへんは柔軟にやろ」


「現状のぉ議題はぁ、ノークさんのぉキャラ付けでしたねぇ」

 リヌルがさりげなく本題に戻そうとする。

「ノークは戦士として最低限の鍛錬はしている、ってぐらいしかまだできてないな」

 ノークがサイドチェストしながら言った。別にマッチョキャラではない。

 ちなみにこれらの発言も挙手してエテアが認めるという流れで行われている。

「ノークは一人称がノークなのはいただけない」

「律儀に一旦自分のことノークって言ってるのです。割と律儀なのです」

 ラムが言う。


「ラムさん議事録自動的につけるシステム用意できますかぁ?」

とのリヌルの提案に

「ああ。そうですね。……はい」

 ラムが『はい』と言った瞬間、焼き肉テーブルの横の空間に横縦比16:9の画面が浮かび、そこにはこれまでの発言が表示されていた。

「ノークさんとリヌルさんが登場したところまでさかのぼれるのです。

 タップとかスワイプとかピンチインとか、こうやって操作できます」

 ラムは自分の左てのひらを仮想タッチパッドとして、右手の指で操作すると画面はその通りスクロールや拡大縮小した。

「自分の手でいいんですね?」

 言いながらリヌルが同じように左掌に右手指を滑らせるとモニターの操作ができた。

「ということはリヌルはスマホの操作方法知ってるってこと?」

 エテアがラムに訊く。

「そうなります」


「で。ノークさんの一人称ですね」

 議長エテアが当面の議題を告げる。

「みども。拙僧。わらわ。わし。あっし。小生。手前。予。余。われ。とかありますね。一人称の種類」

 ラムがいきなり手元の資料を読み上げる。女神の万能性をリヌルに言われて思い出したのである。

「あー。どれもそれっぽくない。じゃあもう俺ゆずるわ」

とエテア。

「ありがとう。俺ことノークはこれから自分を俺と言う」

「ほな、俺は俺じゃなくて……。うーん。一旦わてにする。わたいも候補にして。あんまりしっくりこんけども慣れてきたらええかもしれん。わて言うてたら大阪弁忘れへんし」

「まあ俺をもらったからなんとも言いづらいな」

 というわけでノークは俺、エテアはわて、ということに。

「わてがわて言うてるとだいぶキャラ違うてきますわな。なんかわていうと船場言葉になってしまいますな。船場言葉いうたら、三代目桂米朝さんとかの古典落語でよく聞けますわな」

「確かにぃ落語家さんぽいぃ」

とリヌル。

「そうなんですわ。わてて言い出すとなんやそれにつられて船場言葉っぽくなってまうんですわ。ほんまに正しい船場言葉使いこなせてるわけやおまへんけどな」

「もうなんかぜんぜん違うキャラになってるな」

とノーク。特徴のないしゃべりはノークだと思ってもらえばいい。

「ノークのキャラ立てまだせんとあきまへんのやないか」

と言ってるエテアのほうが口調でキャラが立っている。

「むう。語尾になんかつけるとか」

「主人公前提でぇそれはまずいですよぉ」

 リヌルの発言は語尾に「ぁぃぅぇぉ」(小さい)が付いている。

「そうか。主人公には、語尾になんか付けるキャラ立てはなぜかほとんどされてないな」

「なんでかようわかりまへんけども、そうなってますな」

「本当に同じ人なのかと思うくらいしゃべり方が違うな」

「いやもうちゃんと米朝さんの落語聞いておぼえなあかんなとか思とります」

「そのままいくのか?」

「いやわかりまへんけども。まあひとまずはこんな感じでやっていきたいなと思とります」

 今回決まったこと。主人公のノークの一人称は「俺」、エテアの一人称は「わて」に決まった。

「この調子だとぉ、いつまでかかるんですかねぇ」

 リヌルが軽く嘆息する。



     ▼



「もうちょっと話動いたほうがいいんかもしれんなぁとは思うけど、キャラがまだ確定してないから動かしづらいという」

「まあ、そういう物語だということなんでしょう?」

「なりゆきでそうやね。ちゃんと話つくれんからこんなことやってるんやからこれでええねん」

「いいんですよ。書けないよりは思いつきを書き続けるほうがいいです」

「そんなわけでまた次回」

「また次回~」

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