第10話 パーティメンバー揃った

【前回までの『女神さま』(仮題)のあらすじ】

 女神(俗名ラム・ウヰ)は、エテア・サキユと命名した青年を英雄に仕立てて伝説を打ち立て、女神の地位を確保しようとしていた。ラムは2年以内に伝説が打ち立てられないと女神の地位を失う。

 ラムはエテアと話しているうちに、エテアに協力してもらって自力で伝説を作ることになる。

 ラムはエテアの前世の世界の情報を頻繁に得ているようである。

 エテアはラムから爆発力のチートを授かる。ラム自身は索敵や探知や分析などを担当するチートを取得する。

 まだ場所はエテアを転生させる前の世界の狭間の亜空間である。

 ふたりだけで相談していたが倒すべき魔王もまじえて会議は続く。

 追加パーティメンバーの名前は決まった。魔王は退場した。



「これまでのあらすじも長くなってきましたね」

「まあ必要なことだけ書いてるつもりやねんけども。やっぱりそこまでの文章が増えたら必然的にあらすじの文面も増えるよな」

「これからあとも増えるんですか」

「まあ、必要なくなった情報とかは削っていくと思うけど。ほら、基本的にこれって『紆余曲折篇』って書いてる通り寄り道脱線しまくるので、『前回までのあらすじ』の情報だけ憶えておけばその後を読めるものにしときたいなと」

「一応読者のことも考えてるんですね」

「まあだいたい好き勝手書いてるけど、読みにくくはないようにはしたいから。あと、登場人物紹介とか合間に入れておいたほうがいいかなとか。あらすじは人物をあんまり説明してないから。ときどき『現状での登場人物の紹介』を入れたらわかりやすいかなとか。人数増えてくると忘れるし」

「人数が増えてくれたら、ここで秀さんと私が会話してるのと同じ一対一の会話形式から外れて読みやすくなるんじゃないですかね」

「書きにくいけどね。三人以上おると……」



     ▼



「じゃあ、白魔法使い、リヌル・ヲワカに登場してもらいます」

 ラムがいきなり追加メンバーを登場させようとする。

「いきなり出てくるんですか。旅するうちに合流するとかいう展開はないんですか」

「何言ってるんですか。旅で合流するタイミングとかそのへんも含めて本人と相談するために呼ぶんですよ」

「シナリオ全部完成してから冒険始まる?」

「いや、ぶっつけですよ。魔王とは八百長ですけど、どう戦うかとかはノープランなのです」


「こーんにーちはーぁ。リヌル・ヲワカだよぉ。ヲはひらがなだと『を』ですぅ」

 白魔法使いが現れた。

 白いロングコート姿の少女である。コートの裾はひきずるかと思うほど長いが地にはつかない。ショートの髪。その色は青銅色。

「そういうキャラでいくんですね」

「明るいんですよぉ白はぁ。黒魔法使いは性格暗いんですよぅ」

「偏見ですね」

とラム。

「偏見ですよぉ。黒魔法使いに対してはぁ偏見持ってていいんですよぉ」

「大丈夫ですか。魔法使いってクレバーなポジションじゃないんですか」

「自分からクレバーだって言ったらぁクレバーに見えないないからあえて否定はしませーん」

 誰もいない斜め上向かってしゃべるリヌル。とぼけてるという主張らしい。

「『能ある鷹は爪を隠す』系知的キャラ路線ならアリかも」

 エテアが真顔で言った。


「では続けて戦士ノーク・ヤマケの登場です」

 ラムが次をうながす。

「どうも。ノーク・ヤマケだ。よろしく。ノークは『のおく』じゃないんだ」

 ノークは腰にブロードソードを下げた皮鎧に面頬をつけた姿である。イメージとしては高速肉弾戦が向いていそうだ。 黒目がちな青年である。

「ノークさん、フランクなしゃべりだ」

「よろしくな。エテア・サキユ」

 さわやかな表情で右手をあげて挨拶するノーク。

「登場人物が増えたんで俺大阪弁出していきますわ」

 エテアは実は大阪人だった。イントネーションは実はこれまでもそうだったのである。誰が発言してるかわかりにくくなることへの配慮ができるエテア。

「関西人キャラになると脇役ですね」

とラム。

「ええんですよ。俺、別に主役したいわけやないんで」

「キャラ変わったように見えるな」

とノーク。

「呼び方とかどうしましょ?」

 これがエテアであるとわかるだろうか。

「割と丁寧に話してるようなのがラムなのです。別に『なのです』を乱用するわけではないなのです」

 キャラを口調で分ける話に入っていた。

「私はぁ、わかりやすいようにぃこんな口調ですぅ」

 リヌル・ヲワカ。ひょっとしたらイラつかせる系のしゃべりかたかもしれない。

「俺は特に工夫ないぞ」

 ノークは直球タイプでいいのか。ちょっとフランクな。

「かといって敬語が話せないわけ人ではありません」

 ノークの口調設定に補足を入れるラム。

「小説やと登場人物が四人いて、それぞれに発言する場面って割と避けられるわけやけど、今はキャラ設定の話し合いなんで問題ないですね」

「『問題おまへんな』とか言わないのですね」

とラム。

「そこまでべたべたな関西弁やれ言われたらやりまっけど、そないなると古典上方落語みたいでっせ」

 この口調になると確かにラノベの主人公には向いてない。

「『でんねんまんねん』言わないんですかぁ?」

と白魔法使い。

「そこまでやると丁稚言葉でんねん。わて丁稚とちゃいまんねん」

 丁稚の一人称は『わて』。エテアの認識。

「パーティメンバーはこれで完成でいいと思います」

とラム。

 『ト書き』が増えた。人数が増えたらしょうがない。

「ラム、ボケせんようになったな」

「します。しかし今ボケると話が進まないですから」

「冒頭の話進めへん感じが見る影もないがな」

「いいのです。今はキャラ設定の話なのです。キャラ設定ちゃんとしたら本編でボケます」


「とりあえず、エテアが主人公のつもりでした。途中でうち自身が主人公になるのかと思ったんですけども。パーティの立ち位置からしてノークが主人公だと都合いいんじゃないですか」

「おう。俺が主人公してもいいんだが。あんまりキャラが立ってない問題が」

 ノークは戦士であるという情報くらいしかないし今のところギャグのひとつも言えていない。

「ノークさんは確かにキャラ付けが必要やね」

「例えばぁどんなキャラつけますぅ?」

「ちんこがでかい」

 ラムが名案を言ったような顔をする。

「……下ネタは一端置いとこう」

 ノークは冷静に否定する。

「猫舌とかぁ。どうですかぁ?」

 無難な案がリヌルから出る。

「シンプル。けどまあ、ひとつの要素として入れておこう」

「うむ。ユニークではないよな。もっと突拍子もない……。奥歯に爆薬が仕掛けられててそれを仕掛けた者を探している」

「それはいいけど、性格そのものではなくて置かれた状況やね」

「置かれた状況からぁ人間性が見えてくるということもぉあるからぁ、そういう設定もぉキャラ付けには大事ですぅ」

 リヌルが多少頭良さそうな発言をした。


「まあおいおい考えるさ。落ち着いて茶でも飲もう」

 ノークが茶を要求する。

「何茶にします?」

 ラムが訊く。

 ちなみにここはまだ、ラムがエテアを召喚した亜空間であり、焼き肉テーブルを囲んでみんな座っているのである。

 だからラムの能力で好きな飲み物食べ物を出せるのだ。

「玄米茶」

「玄米茶。はい」

 ラムの「はい」と同時に湯飲みがノークの前に出現した。

「これから行く世界は玄米は生産できるん?」

 エテアが素朴な疑問をはさむ。

「基本的に読者が理解できる食べ物飲み物のほうがよかろう」

 言ってノークは玄米茶をすする。

「米も小麦も胡椒こしょうもジャガイモも蕎麦そばもあります。そのへんに犬や猫もいます。現実世界とまったく同じものではない場合もありますけど、『こちらの世界のタクロァブという食べ物はエビフィレオみたいなものです』とかいちいち説明入れても誰もが面倒なだけなのです」

 面倒を回避することには饒舌になるラムであった。



     ▲



「異世界ファンタジーものに対して『ジャガイモ警察』とかいますね」

とコロニス。

「そうなんよ。ジャガタラ(ジャカルタ)がないのになぜジャガイモなのかとか。それは現代日本人にわかりやすく翻訳してるんであって、別にあっちの世界のすべてのことをあっちの世界の物の名前をあっちの言語での名称で説明されてもわからへんやろうから」

 『ジャガイモ警察』が主に問題としてるのは『中世ヨーロッパにはまだジャガイモはなかった』って話だが。

「まあ、時代劇で『すごいスピードのパンチだ』とかはないですけどね」

「あかんの?」

「いや、そういう前提ならそれはそれでいいですけど。あ。大事なのは前提条件は早いうちに説明しといたほうがいいんですよ。世界観の」

「そうかぁ。けど、これはその世界観も登場人物で相談してつくってる途中やから」

「あらゆる方向に雑に書いていける方式ですねこれ」

 この方式が『コロニスシステム』である。『コロニスシステム』を一言で説明できるようになりたい。

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