第9話 パーティに必要な人材

【前回までの『女神さま』(仮題)のあらすじ】

 女神(俗名ラム・ウヰ)は、エテア・サキユと命名した青年を英雄に仕立てて伝説を打ち立て、女神の地位を確保しようとしていた。ラムは2年以内に伝説が打ち立てられないと女神の地位を失う。

 ラムはエテアと話しているうちに、エテアに協力してもらって自力で伝説を作ることになる。

 ラムはエテアの前世の世界の情報を頻繁に得ているようである。

 エテアはラムから爆発力のチートを授かる。ラム自身は索敵や探知や分析などを担当するチートを取得する。

 まだ場所はエテアを転生させる前の世界の狭間の亜空間である。

 ふたりだけで相談していたが倒すべき魔王もまじえて会議は続く。

 これからパーティメンバーをどうしていくかの話をするらしい。

 ラムはトイレに行った。



「チュートリアルでスライムやっつけたのはあんまり重要な部分ではなかったと」

「そう。なんかその場のノリだけで進んでるからね」

「面白かったらいいんですよ」

「面白い?」

「うん。まあ」

「いや、俺もそろそろなんかこれ面白いのかどうかわからなくなってきててね」

「本人が楽しめるのが一番ですよ。書きたいもの書けばいいんですよ。このシステムなんだし」

「そうなんよねぇ。書き切るか、更新してもPVがつかなくなるか、どっちかで終了すると思う」

「PVは正直、わたしではどうしようもないですよ。複数アカウント取って応援するとかまでは」

「いやそこまでしてもらおうとは思ってない」

「実はわたしはここで読んでるんでPVに反映されてませんよ」

「そうかぁ。まあそうやね。わざわざここで本人前にして読んで、あとで復習でもう一回読めとか言えんよなぁ」

「本編いきましょう」

「あ。うん」



     ▼



「ふと思ったんですけど。なんでわざわざ世界を生み出してまで不幸になる人たちをつくるんですか」

 エテアは魔王ウジェシカに問う。

 ラムがお花摘みに行ってから話は進んでいた。トイレに行くことを女だと『お花摘み』、男だと『雉撃ち』という。

「『なんのために生きるか』みたいな質問ですね」

「そうかもしれません」


 今、なんかメンタルがおかしくなって、わざわざ被害者を出す物語を展開させてもしょうがないんじゃないか。この物語が生まれなければひどい目に遇う人も存在しなかったんじゃないか。

 それってフィクションの冒険譚とか全部否定することになる。

 そうエテアは思ったが、なんかそういう思考の流れになってしまったんだからしょうがない。

「女神の出世のためにいたずらにつくられた世界で苦しむ者が現れることに疑問だと」

「苦しむために生まれてくるなんて」

「そうですね。ではあなたも苦しみを避けて苦痛なく消えることができたら消えますか」

「いきなり言われてすぐ覚悟できませんけど」

「例えばなんの苦痛もなく一瞬で命がなくなればいいですか。ちゃんとあなたの心の準備ができるまで待ってくれるとして」

「そうですね。人はどうせ死ぬんだし。俺は一回死んでるんでしょ?」

「いや、そのへんの事情は聞いてません」

「転生らしいんですよ。けど俺、苦しんで死んだ記憶はないんですよ」


「そのへん覚えてるとPTSDとかに悩まされるので封印してます」後ろから声がした。ラムが戻ってきたのだ。「なんか話のノリ変わっていませんか?」

 ラムは濡れた手を拭いた手ぬぐいをポケットに戻す。

「変わってます。書いてる人間が悩むと作品に影響します」

「ラムが書いてる人なんでは?」

「違いますよ。うちが五十台無職のおっさんだと本気で思っているのですか」


「じゃあ勇者に生まれ変わるのやめまるのですか?」

「やめたほうがいいのかも」

「何か心に闇というか、通常の精神状態じゃなくなってますね」

「その自覚はあります」

「すぐ結論を出さないでいられますか?」

「そうですね。ここで消えてしまったら後悔するかも。いや、消えてしまうのなら後悔する自分がいませんね。ちなみに生まれ変わるとか本当にあるんですか。俺という個体の心とか魂とかは死後残るんですか」

「女神の管理下の世界ではほとんどの人は本当の魂とかないのです」

「俺はあるんですか」

「さあ、女神になったばかりのうちにはわかりません。魂とか心とか本当にあるのかとか。あ。死だけは確実にあります」

「ああ辛気くさい話に」

 魔王が顔をしかめている。

「エテアがそういう流れにしたのです」

 ラムはエテアを指さす。

「本当の勇者は勇気があるんです」

と魔王ウジェシカ。

「魔王は被害を出すんでしょ」

「そういう立場ですから。害悪が存在してそれを排除することがカタルシスになるのです。当たり前のことです。人間が物語を発明した原初からあるものです」

 あたりまえの話である。

「そういえば女神ってトイレ行く必要ありますか?」

「『そういえば』って話の流れと関係ないでしょう。何をきっかけに不安定になったんですか」ラムのほうがつっこむ立場になっている。「食べるんだから出すでしょう。食の快楽もあれば出す快楽もあります。健康な排泄は気持ちいいんです。快食快眠快便っていいますから。実はどれも女神には必要ないんですが新米女神には娯楽として必要なんです」

「『女神はトイレなんかいかないのです』とか言わないんですね」

「欲望には忠実ですよ。あなたもせっかくだから一休みして動画配信サービスでスッキリしてきますか?」

「うん」


 ――30分後。

「とりあえずパーティは組まないといけないですね。ベタに」

 何かつきものが取れたような顔で帰ってきたエテアが言った。

「パーティ。焼き肉パーティ」

 ちなみにまだ焼き肉テーブルはある。

「宴会じゃなくてグループ」

「そういう話なら私は席外しますね」

 魔王ウジェシカは立ち上がる。

「あ。お疲れ様です」

 なんとなくエテアが挨拶する。

 魔王は会釈して姿を消した。立ち去ったのではなく吸う~っと消えた。

「パーティの人数は五人ですね」

とエテア。

「四人でいいんじゃないのですか」

「四人は縁起が悪いんですよ」

「四は死につながるってやつですか」

「いやそれじゃなくて、戦隊で四人組で始まったやつだけ1年続かなかったんですよ」

「それですか」

「まあでも四人がいいバランスなんですよね。五人もいらないというか」

 小説の場合、必要以上に人数が増えるとわかりにくいし。

「まあ今はうちとエテアでふたりいますから、あとふたり。シーフと魔法使いですかね」

「けどラムはシーフ的なスキルありますね」

「あーそうでしたね。索敵とか罠解除とかできますね。あらゆる危険を察知してエテアに爆破してもらう感じで」

「やっぱり戦士は必要でしょう。ある程度の防御力と斬撃による攻撃力。俺のスキルで肉弾戦すると絵的になんかわかりにくいかなと」

「じゃあ、戦士と魔法使いですね。回復役は魔法使い?」

「そうですね。魔法使いというかヒーラー寄り、白魔法使いかな。あんまり火力はいらないですね。俺が10ギガトンあるんで」

「そうですね。エテアは火力特化魔法使いみたいなもんですから。敵の魔力攻撃に対するカウンターとして白魔法使いですね」

「となると後は前衛できる戦士とか剣士とかが欲しいですよ。魔法の打ち合いだけだと絵がもたない」

「じゃあ、そういう感じで」


●パーティメンバー設定

・高火力爆発スキル。「反爆発」スキルもあり、敵の攻撃力を相殺できる。

・探知・分析スキル。賢者? 

・白魔法使い。呪い、ネクロマンサー系にカウンターできる。まだいない。

・戦士か剣士。とにかく直接戦闘できる者がひとり欲しい。いなくてもなんとでもなる気はするがいないと絵的にしんどい気がする。エンチャント・バフをかければ前衛タンクも可能。


「パーティメンバー追加はどうします? 一発生成します?」

「一発生成って、最初からパーティが完成してる状態から物語が始まるっていう?」

「そうです。ちゃんと出会いから描きますか?」

「パーティメンバーが集まるエピソードってベタですけどね」

「面倒なので最初からいるのでいきましょう」

「うん。楽なほうがいいですね」

「じゃあ、とりあえず重要な白魔法使いの名前どうします?」

「『いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねなラムウイのおくやまけふこえてあさきゆエテアサキユめみしえひもせす』の使ってないところ切り取ります」

「リヌル・ヲワカ」

「そうしましょう」

『いろはにほへとちリヌルヲワカよたれそつねなラムウイのおくやまけふこエテアサキユめみしえひもせす』

「次は戦士ですね。ノーク・ヤマケで」

「はい決定」

『いろはにほへとちリヌルヲワカよたれそつねなラムウイノークヤマケふこエテアサキユめみしえひもせす』

「もうこれ以上キャラをいろはから作るのは打ち切りですね」



     ▲



「ほら。主人公になる人の名前出た」

「どれですか」

「それは次回の講釈で」

「なんか大昔にそういうヒキで終わる番組あったような……」

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